まあ、普通に歩いていれば誰かには会うだろうと、は校門を出て、ゆっくり歩いていた。
「…ん?」
土手を歩いていると、川原に人影を見つけた。
「元親!!何してるの?」
「お、か」
元親が川原に座っていた。
振り向いた顔にぎょっとした。
「顔、ちょ、口元切れてるよ!?」
「そうなんだよなー。血の味がする。」
「のん気だなあ!!喧嘩!?」
「そうそう。俺ボロ勝ち。見せてやりたかったぜ。」
「あのね…」
は鞄をごそごそ探り、ティッシュを発見したので、それで元親の血を拭いた。
「あー…ちょっとほっぺたも腫れてるよ…」
「女じゃねえんだ。気にしねえよ。」
「元親〜…」
やっぱこの性格じゃ…暴れるのは我慢できないんですね…
「で、喧嘩終わったんでしょ?何してたの?」
「ああ、俺、水があるとこ好きでな。川見てた。」
指を差して、夕日の赤を反射してキラキラして、綺麗じゃね?というので、ははあ〜、とため息をついた。
「隣にいる元親が喧嘩終わりじゃなかったら、もっと綺麗に見えたよ…」
「なんだよー、いいじゃねえか、喧嘩。平和主義だなあ…」
平和なんだと思って制服着ましたからね…
そんな事はいえないので、は黙って川を見つめた。
「ま、一番は海だな!!」
「海…」
「懐かしいなー。俺、瀬戸内海のほうに住んでたからよ。こっちに来てからあんまり海見てねえな…」
「あ、じゃあ今度バイクでも電車でもいいから行こうよ、海」
「お、いいねえ!!クルージング出来たら最高だよな!!俺調べとくから一緒に行こうぜ!!」
「うん、喜んで!!」
「貴様ら!!!!!!」
元親とお出かけだーと喜んでいたのに、後ろから聞こえてきた声が邪魔をした。
「あ?元就?」
「何をしておる!!さっさと帰れ!!」
「わーったから離せ!!」
「さ、佐助え…!!」
「旦那ー、ちょっと自業自得だから我慢ねー」
元就が片手でそれぞれ、政宗と幸村の襟を掴んで引きずっていた。
その後ろを佐助は後頭部で手を組んでついて行っていた。
「あれー?どうしたの?」
「こやつら、ゲームセンターで白熱しおって、店で暴れたのだ…!!」
「申し訳ござらぬ!!」
「幸村が最初にうるさく叫びだしたんだ!!」
「どっちもどっちだ!!」
「おーおー。学級委員長様は大変だねぇ。」
「元就さんは生徒会長でもいい感じだよね…!!」
はあの二人に本気で怒る元就の頑張りに拍手したくなった。
「学校戻るのか?」
「あやうく通報されるところだった!!先生に突き出し、反省文を書かせる!!」
「え!!」
「マジかよ!?」
元就の言葉に、さすがに佐助も幸村の心配をした。
「元就サン、旦那はもう反省してるよ、ね?」
「元就殿!!お願いでござる…!!」
「信用できん!!」
「…あ、俺、もうすぐ小十郎の門限の時間なんだけどー…」
「早いわ!!!もっとマシな嘘をつけ!!」
仕方ねえな、と元親は立ち上がった。
「元親?」
「もーとーなーり。俺さあ、さっき喧嘩しちまってよお」
「な、貴様…あれほど面倒ごとを起こすなと…」
元就は少々驚いたようで、手の力が緩んだ。
「旦那!!今だ!!」
「申し訳ござらぬ元親殿!!元就殿!!」
「反省文なんてごめんだっつーの!!」
「ああ!!貴様ら…!!」
三人は急いで元就の手を払い、逃げていった。
元就は三人は追いかけず、元親をきっと睨み、ずかずかと小走りで寄ってきた。
「おおお元親〜…元就さんが…」
「はは、マジ怒ってるなあー…折角の綺麗な顔が台無しだっての…」
「冗談も大概にしろ!!なんだこの無様な顔は!!」
元就は至近距離で元親の顔を指差し、歯軋りをした。
「ああ…」
遠くからなら黙っていれば気付かれなかったろうに、政宗と幸村を助けようとするとは…
「元就さん…あの…元親…無事だったんだし…」
「無事だろうが死のうが我には関係ない…!!」
「うーわー、ひでえな」
「…貴様に怒りを向けるのは疲れるわ…!!」
元就は大きくため息をついた。
「…、貴様も喧嘩に関与が?」
元就に睨まれ、はびくっとした。
反省文は書きたくない。
「わ、わたしは…さっき元親に会ったばっかりで…」
「ンなわけないだろ?は俺の怪我の心配してくれただけー。んで一緒に川見てデートの約束してたー。」
「ふん…青臭い事をするな…」
はぴりぴりしてるこの雰囲気をどうにかしたくなった。
な、なにか言わなきゃ…!!
「ほら、元親って四国出身じゃないですか…!!海見に行きたいねって…」
「ふん、そうか。勝手に行け。」
「そんな、冷たいなあー…
元親と行ったらすごい楽しいと思うんだ!!
あ、元就さんもそういえばそっちのほう出身でしたっけ?
元就さんも一緒にどうですか?
」