「…放火?」 「そ。しかも連続。」 そんな物騒な話を佐助から聞いたのは、幸村と佐助と小太郎とで茶屋で休んでるときだった。 町の雰囲気が暗いような気がして、どうしたのかが聞くと、最近火事が頻発しているという。 「折角遊びに来てくださったのに、このような話、申し訳ない」 「幸村さんが謝ってどうすんのさー。犯人はまだ?」 「なかなか見つかんなくてねー。警戒はしてるんだけどさ。やんなっちゃうよね」 「……」 「…小太郎?何その目。俺様にダメ出し?」 は何かお役に立てないか、考えた。 「うーん…放火魔なら炎に魅入られた者…」 「某ではござらぬよ!!」 「いや、言ってませんよ。そりゃ幸村さんはメラメラだけどね…そうじゃなくて…どっかで炎が上がってるのを見てるんじゃ?」 「ま、そうだよねえ…これ、今んとこの被害状況」 佐助がテーブルに近辺の地図を広げた。 被害があったところは赤くしるしがついている。 「結構ばらばらだね。でもそんなに広くないね」 「放火場所もばらばらなんだよねえ。店の裏とか民家だったり、特に何も無い路地だったり」 「時間帯は?」 「夜中だね。いつってのもばらばら。3日後だったり1週間あいたり。」 「ううーん…」 が腕を組んで考え始めた。 「、その、がそんなに悩まずとも良いぞ?」 「あ、実は一番最初に火事を見つけた人が怪しかったりすんだよね!!」 「手柄が欲しくてってやつ?」 「うん!!」 「…き、聞いておらぬ…佐助まで…」 「……」 まあ元気だせよと、小太郎が幸村の肩をぽんと叩いた。 「でも、通報者も毎度毎度違うしねえ…。一応張り込ませてるけど、これといった報告もないし…」 「うー…そっかあ…ほか…ほか何か…えと…」 「あーあー、ごめんね、いいって、そんな」 頭をぐしゃぐしゃ掻きながら考え始めたを佐助はさすがに止めた。 「火種の入手ルートとか…」 「ボヤで済んだときはフツーの紙だったねえ」 「あああ判んない!!頭使った!!糖分!!団子おかわり!!」 「糖分使い切るの早っっ!!」 「某も団子ー!!!!」 が推理を諦め、店員のお姉さんに向かって挙手した。 幸村も喜んで真似して挙手した。 お姉さんは苦笑いしながら、追加の団子をテーブルに並べてくれた。 「今のところ怪我人もいないから、それが救いかな…本当に火だけが目的みたいね」 「そっか…早く見つかるといいね」 「そだね」 「ーこの餡子美味いでござるよー!!」 「食べる食べるー!!」 ぎゃあぎゃあ騒ぎながら団子を食べる二人を、佐助は呆れながら見つめていた。 「ここは平和だねー…」 「……」 佐助と小太郎はお茶をずずーっとすすった。 日が暮れてきたので、はとっておいてもらった宿に行く事にした。 「明日も遊ぼうねー」 宿の前でと小太郎は、幸村と佐助に手を振った。 「宿などとらずとも、館に来ればよいのに…」 「何よー!!ここの宿の料理が美味しくて有名って言ったの幸村さんじゃないー!!」 「館に料理を運ばせれば良いではないかー」 「…旦那…そんなボンボンな発言止めなさいって。いいじゃん、明日も会えるんだから。」 「む、むう…では…また明日…。」 「うん!!」 ばいばーい ばいばーい …ばいばーい… 「いつまで手を振ってんの!!!旦那!!!!」 「ぎゃああ佐助ぇ!!引っ張るな!!」 名残惜しそうにいつまでも手を振る幸村を、佐助は思い切り引っ張った。 「佐助ぇ…某たちも宿に…」 「そういうわけにはいかないでしょ!!」 「むうー…で、では、!!気をつけて!!」 「うん!!料理堪能させて頂きますー」 今度こそ手を振ってお別れした。 幸村と佐助が見えなくなると、は小太郎の手をとった。 「さて、小太郎ちゃん、入ろう!!」 「……」こくり 「やっと掴み取った政宗さんからの外泊許可…無駄にはしない…!!」 「……」こくこく は政宗の説得に一時間ほどかかったのを思い出し、自分を褒めたくなった。 「さてさて、温泉に懐石料理!!楽しみー!!」 「……」 二人が宿屋に入っていく姿を、じっと見つめる視線があることを、小太郎だけが察していた。 夜中に、ゆさゆさと揺さぶられて、幸村は起き上がった。 「…佐助…何事…?」 「放火だ旦那!!」 「何と…今日はどこで?鎮火したか?」 「いいから!!!連れて行くよ!!」 「は…?」 佐助は寝巻きのままの幸村を抱え、館から飛び出した。 「さ、さささ佐助ぇ!?」 「あれ!!見えるでしょ!?」 「!!」 佐助が指差した方向に、酷く明るい光が見えた。 大きな建物が燃えている。 「…何と…あのような規模、初めてではないか…」 「宿だ…!!の泊まった宿が燃えてるんだ!!」 「な…」 幸村が顔を強張らせた。 「皆…無事なのか!?」 「はもちろん無事だろうけどね!!」 消火活動はすでに行われ、火の勢いも徐々に衰えてきた。 人々が混乱している中で、は必死で叫んでいた。 「服はそのままで!!水で早く冷やして!!!この子はこのままで運んであげて!!!」 「!!」 「幸村さん…!!佐助…!!」 佐助は幸村をの近くに降ろすと、に何かを投げた。 「これ…」 「消毒薬!!使えるとき使って!!」 「あ、うん!!」 そう言うと、すぐに燃える宿の中に入っていった。 「小太郎ちゃんと連絡とってね!!あと数人、中に…!!気をつけて!!」 「はいよっと!!」 佐助はひらひらと手を振って余裕をみせた。 「…某は何をしたら…」 が協力を頼んだであろう、若い男女が火傷した人たちを濡れた布で冷やしたり民家へ運んだりしていた。 自分にも救助活動がきちんとできるか不安だったが、ただ見ているわけにもいかない。 「幸村さんはちょっとこの野次馬どうにかして!!協力してくれないのにわらわら集まって邪魔!!!!!道をあけて!!!」 「りょ、了解した!!」 幸村にはまさに適役だった。 「皆!!ここには怪我人がおるのだ!!道をあけろ!!!手の空いてるものは協力してくだされ!!!!!」 幸村は叫びながら野次馬に突っ込んでいった。 「え!?幸村さん!?そんな突っ込んでいかなくても…」 けれども幸村の大声と迫力に圧され、ただ見ているだけだった人々は徐々に後退していった。 「…幸村さん素敵!!じゃあこの隙に…」 そういって振り向くと 「…え」 さっきまで協力してくれていた一人の女が 「あああああああああああ!!!!!」 「きゃあああああああ!!!!!」 落ちてきたものであろう、煤汚れた木板をに向かって叩きつけた。 は咄嗟に避けたが、体制を崩して転んでしまった。 「…な…」 「幸村様…」 「なに…」 「なんで…なんであんたなのよ…!!!死ね…!!」 「…炎に魅入られた者、ね…、正解だね…」 「!!」 佐助が女の後方に現れ、すぐに消えてしまった。 女ごと。 「…佐助?」 路地裏に女を降ろすと、佐助は女の腕を簡単に縛り上げた。 「あんたでしたか、団子屋のお姉さん」 「……」 「何悔しそうにしてんの?さて、言いたいなら聴くよ?言い訳」 「………」 女は歯を食いしばってるだけだ。 「…火が見れれば、どこでも良かったんでしょ。最初は」 「……」 女がゆっくり口を開いた。 「…幸村様は私の団子、いつも美味しそうに食べてくれるの」 「残念だったね。好きなのは団子だけでしたってね」 「なのに最近は…あんたが買いに来るだけ…わざわざ、二人分って言って…女の子だからそんなに量はいらないっていって…」 「そりゃ俺も悪かったねえ。嫉妬?」 にいっと佐助が笑うと、女も笑った。 「私も、炎を生み出せるのよ。簡単だわ。幸村様と一緒。だから、暇があれば、燃やしてたの。」 「それで?」 「あの女、燃やしてやりたい。そう思ったから、私、攻撃したのよ。幸村様みたいに、炎を敵にぶつけたの」 「そりゃあ、旦那に相手にされないわけだ」 「な…!!」 佐助は 女の腹を蹴り上げた。 「っ…げ…ァ!!」 「旦那の炎はねえ、そんな汚ェもんじゃないんだよ」 「……」 女は苦しみながらも佐助を睨みつけた。 「人殺しに…綺麗もなにもあるか…!!」 「あららァ、言っちゃったねぇ…」 佐助はもう興味を無くしたかのように女に背を向けた。 「はさあ、旦那の炎が人殺しの道具になんて見えてないんだよね」 女の返事など待たずに、佐助は話し続けた。 「あんたさあ、必死で、苦しむ人を助けたいと思ってるを殺そうとしたんだよねぇ」 「俺も相当だけどさあ、…あんたも相当汚ぇよな」 「…俺が殺す価値も無い」 佐助が去ったあと、佐助の部下によって女は捕らえられた。 「佐助!!さーすーけー!!」 「お呼び?」 「あ、佐助!!」 佐助の名を呼びながらうろうろするのそばに佐助は現れた。 「皆さんどうよ?」 「火傷はそうでもないみたい!!小太郎ちゃんの早期発見のおかげです…。よかった…。やっとひと段落しました…」 「も頑張ったな。こんな顔汚しちゃって」 「わわ」 佐助は汗と煤で汚れてしまったの顔を手ぬぐいで拭いてあげた。 「だた、煙吸っちゃった子が居てね…お医者さんに頼んだけど、その子心配だなあ…」 「そっか…」 「あと、これ、ありがと!!」 は佐助が投げてよこした小瓶を佐助に返した。 「…といっても結構使っちゃったけど…」 「使い道あった?ならお役に立ててなにより」 「あの騒ぎだったから、転んで擦り傷作った人いっぱい居たから、使わせてもらったよ。」 「また作るから大丈夫」 小瓶を懐にしまうが、その後もはまだじいいと佐助を見つめた。 「…何?」 「…あの女の人…」 「………」 佐助は言うか誤魔化すか悩んでいると 「…あ、あのさ、もし痛みが残る人が居たら、軟膏が要るんだよね〜」 「…」 急に話を変えた。 「…作れって?」 「お医者さん、佐助の作る薬はよく効くって…。作り方教えてくれないって文句言ってたよ!!」 「ああ、仕方ないなあー。んじゃあ、に調合手伝ってもらおうかなあ」 「ええ!?」 嬉しいような、プレッシャーを感じるような、複雑な顔をするに笑いかけて 「あ」 ひょいっと抱き上げた。 「軽い」 「ど、どうも…」 佐助との顔の位置が近づいたので、 「佐助の顔も汚れてるよー」 「お、悪いね」 も佐助の顔が拭けるようになった。 「…」 「…何?」 佐助がに言葉をかけようとしたとき 「佐助ええええええええええええ!!!」 幸村の声が近づいてきた。 「佐助どこ行っていた!?」 「あー、ごめんね旦那…」 「…って何をしている!?を抱っこ…」 「「……」」 何もやましい事はないが、幸村の顔がみるみる赤くなった。 佐助はにんまり笑って 「羨ましい?旦那はダメだよ」 「な…?」 「諸事情あって、旦那に罰。今から明日まで丸一日に触っちゃダメの刑」 「ええええ!?」 「…ったく、旦那は団子くれるヒトには誰にでもいい笑顔向けるんだから…」 「うわあああ女子に触るなど破廉恥だがは別…」 「…私は女じゃないって?」 「そうではござらぬそうではござらぬ!!!!」 真っ赤にして慌てる幸村も その幸村を笑顔で見つめるも可愛くて 「…ぜーんぶ、あの女のせいって、思う俺も、馬鹿だよな」 でも俺は これでいいんだと思う。 「俺が信じるのは、あんたらだけだ」 どこかで小太郎がお前らしいと笑ってる気配がした。 ■■■■■■■■ 「ヒロインの医療の知識と佐助の薬の知識でちょっとした事件を解決する」でした… 妊娠立ち会いは無理でしたああああ!!すいませんー!!!! 事件ものって初めて書いてみましたが、難しいですね!! しかも短く収まらないし!!違和感いっぱいですいません!! 遊実様、リクありがとうございました!! |