夏休みにクラスの友人と海水浴に行こうと言う話しで盛り上がり、も参加することになった。

何より嬉しいのは思い人である真田幸村も一緒に行くということだ。
しかし、は体が弱かった。

「…お膳立てをしたつもりが……ことごとく無にしたな…」
「ごめんね…かすが…」

今は貧血の症状が現れ、はパラソルの下で休んでいた。
そこへ、水着の上にパーカーを羽織ったかすがが飲み物を持ってやってきた。
にスポーツドリンクを渡し、かすがも隣に座った。

「移動中もわざわざ真田幸村の隣になるよう上手く誘導してやったというのに酔うとはな…」
「ごめん…」

かすがはクラスで唯一、恋の相談をしあう友達だった。

政宗や佐助、元親達と騒いで遊ぶ幸村を、は静かに見つめていた。

「…病気なんかしたことなさそうな幸村と、私って…釣り合わないよね…迷惑かけるよね…」
「いやに気弱だな。告白もしないうちに諦めるのか?」
「幸村は…優しいけど…」
、私だって謙信さまという高貴な方に恋い焦がれているんだ。ネガティブな発言はしないで頑張ろうと言ったろう。」

かすがの思い人は通う学園の理事長を務める人間だった。
はかすがが、謙信と会うため話すために、かなりの努力を行っていることを知っていたため、それ以上暗い発言をするのを止めた。

「うん、そうだね…」
はゆっくり立ち上がる。
「行くのか?ならば私も。」


力押しで負けた佐助を政宗と元親が埋めて遊んでいるところに近づいていった。

!!体調は回復されたか!!」
幸村は嬉しそうにに声をかけてくれた。

「うん、ごめんなさい、せっかくの海水浴に…」
「仕方ないよ。無理しないでよ?ちょっといい加減出してくれない!?」
佐助も埋められた状態で苦笑いだったが、優しい声を掛けてくれた。

「よっしゃ!!とかすがも揃ったところで泳ぐか!!」

そう提案したのは元親で、勢いよく海に駆け込み、泳ぎ始めた。

「魚いねぇかなー!!」
「ガキか元親!!まぁ俺も楽しむか!!」

それに続き、政宗も海に入っていった。

幸村とはせっせと佐助に乗っかる砂を避けていたが、かすがは知らん顔で海に向かって歩き出した。

「ちょ…かすが!!手伝ってくれないの!?」
「なぜ私が?も手が汚れるからそんなことしなくていいぞ。生き埋めで。」
「かすが!?それは無いんじゃ!?」
のこともう少し見習ったら!?」

佐助の言葉は聞こえないふりで、私も潜ってくると一言残し、行ってしまった。

「はは、佐助、可哀想に。」
「旦那も笑わないでよ…もー。…軽くなった。自力で出れる。ありがとねー、お二人さん。」

抜け出した佐助はパンパンと簡単に体に付いた砂を払った。
「俺様も行くかなあ…。」
「佐助も?じゃあ幸村もだよね…私も…」

幸村の方を向くと、微妙な顔をしていたので首を傾げた。

「旦那はねー」
「俺はあまり海に馴染みがないのだ。…良かったら岩場などでゆっくり過ごさぬか?」
「えっ、あ、いいの…?」
「どうだ?」

幸村はの体調を心配してそのように申し出てくれたのだろうと感じ、嬉しいような申し訳ないような気持ちになったが、こくりと頷いた。

佐助は沖の方を指差した。
「俺様も汚れ落としついでに少し泳いでくるね。」
「何っ…佐助泳げるのか…」

幸村ははっとして口を手で塞いだ。
それを聞いたは幸村に視線を送る。

「幸村…泳げないんだ…」
「ぐぬぬ…」
「ははは!!ばれたねぇ!!旦那、岩場といってもあんまり遠くに行かないでよね!!俺様心配しちゃうから!!」

平泳ぎで沖に向かう佐助を見送った後、幸村とは歩き出した。

「皆がああも沖に出るとは予想外であった…。少々自信がなく…」
「でも幸村って体育の授業でさー跳び箱も体操も、初めてでもすぐこなしてたし、練習したらすぐ出来そうだけど…」
「そうか…?」
「むしろ、ごめんね…気を使わせたね…。でも、本当に元気になったんだよ?」

そう言って苦笑いするに、幸村は勢いよく首を左右に振った。

「いやっ俺が単にゆっくり過ごしたかっただけだ!!あ…あのあたりならば皆のことも見えるし…」

幸村が指差す場は、波の打ち寄せもそれほど強くなかったので、も頷いた。
辿り着いて座ると、遠くで佐助が手を振っているのが見えたので、振り返した。

「佐助ってばどれだけ幸村が心配なの…」
あまりに仲良しで見ていて微笑ましい。

の心配もしてたぞ。佐助は飄々としているが優しい奴なのだ!!」
「うん。そうだね。この前日直の時黒板消し手伝ってくれたりしたもんなあ…」
「そうだったか。知らなかった、佐助と仲が良いのだな。」
「いっぱい喋ったりはしないんだけど…あ、幸村、カニいるよー!!!」

ぱっと指をさし、立ちあがって一段降りる。

「気を付けて!!」
「このくらいなら平気…ほらーカニ!!」

幸村も続き、差し出された蟹を手の平に乗せた。
「…食べられるので?」
「…食べたいの?」

まじまじと真剣に見つめてそう問いかけるので、吹いてしまった。

「先程も申した通り…海にあまり来ないので…」
「そうだよね!!こっちの岩にいっぱいフジツボいるよ〜」
「ふじつぼ…これが…」
「フジツボには都市伝説があってね…」












顔だけ出して、佐助は二人の様子を見ていた。
幸村が何やら恐れおののいた様子で後退するが、は楽しそうに笑ってまたしゃがみこんで何か採取している。
慌てて幸村が駆け寄り、の腕を取ってビーチの方に誘導しようとしていた。

「…上手くいってるようにはみえない…子供2名遊んでる…」
「なんだ貴様、の恋心を知っていたのか。」
かすがが佐助の横を背泳ぎで通り過ぎる。
豊満な胸が余計に目立っていたが、本人は気にしていないようだった。

「…はあ…良い眺めで…。」
「?なんのことだ。それよりお前も協力者なのだな?」
「違うよー俺様は別に手伝ってないよ。下手に手伝ってややこしいことになったら嫌だし。」
「そんなものか?」
「旦那は初心だしねえ…」

かすがも海岸に目を向ける。

「…手を繋いでいるな。」
「うん、ナチュラルだった。」
「どどどどどっちから繋いだのだ!?」
「旦那から。」
「な…もし私だったら…謙信様から手を握られたら私は…!!」

佐助は飛んできた薔薇を邪魔そうに除けていた。











期待されていた二人だったが、会話は色気のないものだった。

「急に立たせてしまったな…すまない…」
「ご、ごめん…クラクラした…」
「海の家で休もう、日差しも強い。」

が急にふらついたため、幸村は咄嗟に手を取って一緒に歩くことにしたのだった。

「ごめん本当…い、一応、部活で筋トレしてるし有酸素運動もしてるし、貧血だって定期的に検査したりサプリ飲んだりしてるのに…なんで強くならないかなあ…」
「……。」

辿り着くと、幸村はの背中を支えて椅子に座らせる。
店員に飲み物を注文してくれた。

「よいのではないか?」
「え?」

幸村は隣に座り、頬杖をついてに話し掛ける。

「俺は弱いしか知らない。」
「う、うん、そうだけど…」
「気にかかって、目で追ってしまうのだ。」

幸村が言うことが上手く頭に入ってこない。
勘違いしそうで困ってしまう。

「今のままでも良いではないか。俺でよければ支える。どうしても嫌でも大丈夫、努力しているなら、強くなれる。」

にこりと笑顔を見せてくれて、は顔が赤くなるのを感じる。

「そ、そうかな…ありがとう…」
いつも素直に言葉をくれる幸村に、もっと自分の気持ちを伝えたかった。
恥ずかしさで下を向いてしまいそうになるのを必死に耐えて、幸村の目を見る。

「幸村にっ…そう言ってもらうと、本当に、そうなる、気がするの…」
「そうなのか?の役に立っているなら、良かった…」
「役になんて…そういうんじゃなくて…幸村と話してるだけで、私、本当に元気が出て…その…」

顔を真っ赤にするに、幸村もつられて恥ずかしくなってくる。
背を正して、手を宙に浮かせてしまい、挙動不審になってくる。

…その…」
「は、はい、あの…」
「続き…俺が言ってもよいだろうか…?」
「え…!?」

淡い期待が芽生えるが、は首を振った。

「ず、ずっと、幸村に抱いてた気持ちがあるの。言わせて下さい…」
「し、しかし、俺もあるのだ…」

相手に心臓の音が聞こえるのではないかと思うくらい、二人の緊張がピークになる。
などすでに緊張で目に涙が浮かんでいた。

二人が口を開いたのは、ほぼ同時だった。

「「ずっと、す「何だ何だ!?甘ずっぺえ雰囲気だなあ!!これ俺からの特別サービスだ!!コーラジョッキ大だぜ!!!!!!!

ガツーン!!!!と音を立て、頬に傷のある店員がジョッキを二つテーブルにドスンと置いた。

「「………。」」

そして、政宗様の事も、よろしくな…とウインクをして去って行った。

「「…………。」」

完全に店員に視線を向けて、二人は固まってしまった





沖では佐助は頭まで沈んでぶくぶく泡を立て、かすがは構わず謙信と自分の妄想に浸っていた。

ゆっくり浮上し、佐助は呟いた。

「旦那安心して…伊達の旦那を沈めておくから…」
「聞こえたぞ猿飛!?何で!?」

たまたまクロールで通りかかった政宗は突っ込みをするしかなかった。







しかし落ち着いた二人は話の続きを開始する。

「…よし、、先に飲みきった方が、言いたいことを先に言う権利を持つ!!」
幸村はジョッキを片手に、勢いよくコーラを飲み始めた。

「ぜ、絶対負け…うううう!!!!!」
もストローを貰い、思い切り吸い始めた。

幸村・の無邪気コンビは、どのような状況でもあまり気にしない方だった。


















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幸村で現代パロで海水浴というお題頂きました!!ありがとうございます!!
フジツボのいる岩場で転んで膝を少し切ってしまったら、数週間後男の膝にフジツボが繁殖していた…というありえない都市伝説があるそうで…