幸村はゆっくりと目を開けた。
見覚えのない天井で、後頭部に冷たい感覚がある。
しかし眠った覚えがない。

「某…」
「幸村さんやっと気が付いた!!!!」
「!!」

に覗き込まれる。

…?」
「痛いところはない?吹っ飛ばされたんだよ…?」
「そうだ…某…政宗殿と対決をしていて…」

ズキリと痛む頭に手を添える。
どうやら、たんこぶが出来ているらしい。
徐々に気を失う前の事が思い出される。

「某…負けたで…ございましょうか…?」
「ううん、幸村さん、戦いの最中に勢い余って小十郎さんの畑踏み荒らしちゃって、その際小十郎さんが極殺モードで襲ってきて…」
「ああ…」

そういえば小十郎の見たことが無い鬼の形相を見た気がする。
思い出したくないと脳が拒否してそれ以上考えるのはやめた。

「それで……ずっとここに…?」
「びっくりしたよ、顔色悪かったし…。」
「ここは…?」
「離れを借りたの。政宗さん、おら起きろ幸村ァってげしげし蹴るんだもん。」
「いや…折角の対決の場で政宗殿以外の人間に倒されるとは…そうされても当然…」
「小十郎さんのことは政宗さんが叱ってるからそんなの気にしないで。」

特に驚くことでもないのに政宗に叱られる小十郎という構図が上手く想像できなかった。

「申し訳ござらぬ…。」
のそりと起き上がる幸村を心配し、が支える。

「もう少し休んでも…」
「今日は佐助が不在故、そろそろ戻らねば…」
「う、うん…」

引き留めたいが言っても聞かなそうなので、も支度を整える。

?」
「途中まで送ります。」
「しかし…」
「乗馬も上手くなってるんですよ。ぜひ見てください。」

あと、最近出来たお店のお団子がすごく美味しくて…と、幸村に気を使わせないよう努めるに笑顔を浮かべ、お頼み申す、と頭を下げた。











道中、幸村の具合も良くなり、言った通り団子を一緒に食べることにした。
店の軒先で団子を食べながら、幸村の持ってきた竹筒に水を汲みに行ってくれたを待っていた。

は献身的で良き女性であられる…」

そしてなにも考えず空をぼーっと見つめていた。

そんな幸村の隣に、一人の女性が座った。

「こんにちは。」

目をぱちくりさせ、その女性を見つめ、困惑しながら挨拶をする。

「ど、どうも…そなたは…?」
「お兄さんがかっこよくてお声かけちゃいました。」
「某が…?」
「そう、ねえ、この近くにお住まいの方?」

積極的に声をかけてくる女性に戸惑いながらも、の座るべきスペースを取られたことに少し怒りを感じてしまった。

「申し訳ござらぬ。某、人を待っております故…」
「私そこの長屋に住んでるの。ねえ、お兄さんを見た瞬間、私胸が高鳴っちゃったの。これでも緊張してるのよ?」
大胆なことに、女は幸村の手を取り、胸に当ててきた。

「……。」
「好きになってしまったの。待ち人は女性?」
「そうであるが…」
「私の方が、お兄さんを満足させる自信があるわ。」

少しずつ顔を近づけてくるが、幸村は表情を崩さずに口を開いた。

「なんの話をしているのか皆目見当がつかぬ。」
「え?」

手を振り払い、湯飲みを持って一口飲む。

「鼓動が早いのは病かもしれぬ。一度医者にかかられては如何か。某はあまり医の知識がないゆえ、上手い助言が出来ぬ。」
「しらばっくれて…」
「この店より美味い団子を作る自信があるということでございましょうか?ならば店を出していただけると。1度くらいは足を運びましょう。」
「からかわないで頂戴。私は本気で…」

そう言ったところで、幸村は女を睨みつける。

「…その席は、某の大事なお人が座る場故、一刻も早く退いて頂きたいのですが。」

有無を言わせぬような怒りを込めた声で言われ、女は驚いて立ち上がる。
悔しそうに、背を向けて走り出した。

「…ふう…」
「ゆ、幸村さん…」
「!!」

の声は後ろから聞こえてきた。

「おお、…」
「ええっと…大丈夫だった?ナンパされてたねえ…」
「なんぱ?いえ、まあ、何だかよく分からなかったのですが…!!早く座ってくだされ!!」

ポンポンと座布団を叩くので、座ってから竹筒を渡した。

「ほ、本当に分からなかった?」
「何のことで?」

が来た時すでに女が座っていて話し掛けるタイミングを失い、胸に手を当ててきたところぐらいから話を聞いていた。

「さすが、の推す店でござる!!非常に美味ですぞ!!追加注文致したので、も、さあ!!」
「ありがと…?」

幸村は団子を手に取りに渡す素振りを見せたが、串の方をに向けていない。

「…ん?」
「どうぞ!!」
「い、頂きます…」

ぱくりと、差し出された団子を口に含むと、幸村はにこお!!と笑った。
飲み込んだ後、感想を言った。
「うん、おいしい!!」
「うむ!!」

追加の団子が運ばれ、幸村はまた嬉しそうに食べ始めた。

の方が、色っぽいでござる。」
「え?え?何?」
「なんでもござらぬ!!」

ばっちり聞こえていたのだが、幸村からそんな言葉が出るとは思わず聞き返したのだが、誤魔化されてしまった。
やはり分かって言ってたんじゃ…考えてしまう。

「むう…」
腑に落ちない顔をするを横目で見ながら、穏やかな笑みを浮かべる。

「……。」

そっと、の耳元に口を寄せて、囁いた。


に誘惑されるのでしたら、喜んで付いていくのだが」


の顔がみるみる赤くなる。

分かってんじゃないですか!?と慌てるに向かって、さあ?と首を傾げてまた笑った。


















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「カマトト」をググって思案したこんな結果に…
黒幸村ァ!!!!
リクありがとうございましたああああああ!!!!!