「幸村さん!」
殿!待ってたでござるよ〜!」

お互いに手を振りあって近づく。
今日は幸村さんが甲斐の町を案内してくれる。
白石城まで家臣の方が送ってくれて、そこで幸村さんが待っててくれた。

「佐助さんは?」
「それが、急な任務で来れなくなってしまって」
「幸村さんは大丈夫なの?」
「あぁ、…その、殿は…佐助が居た方が…」
「どした?」
ぼそぼそいうから聞き取れない。
耳を幸村さんの顔に近づけた。
「いっ…いや」
幸村さんの顔が赤い。
本当に女がだめなのか…
少し寂しい。

「早く行こ!日が暮れないうちにお別れしなきゃなんないんだもん」
「うわぁ!?殿!?」
幸村さんの手を握って走り出した。

決めた!
今日で、少なくとも私にくらいは、慣れてもらおう!
あぁ、私、セクシー系じゃなくてよかったよ
…いや、なれるものならなりたいが。

「!」
幸村さんが手をぎゅっと握り返してくれた。
にこりというよりにやりと笑ってしまった。



茶屋にはもちろん行って、他にも色々なお店を見て奥州との物資の違いをお勉強。

「へえ…やっぱり食べ物も違うな…やっぱりナマモノは運搬方法が…」
店先の海産物を眺めながらつぶやいた。
「ねえ、幸村さん、これはどこの海の」
くるりと振り向くと

「…あれ」
いない…
「うそ…さっきまで…」
大変だ…
迷子だ…

「いや、落ち着け」
彼は真田幸村だろ。
道行く人に聞けば判るだろ。
とりあえず優しそうなお姉さんに
「すみません、あの、真田幸村さんを見ませんでした?」
「え…真田幸村様がここに!?あ、し、失礼ですがあなたは…?あの、真田様はどのような方でした!?」

そうだよね…
テレビなんか無いしね
みんながみんな、顔知ってるなんて事無いよね…

「…噂をきいて…」
「み、見かけたら教えて下さいませ!私、ずっとお慕いしておりまして」

顔知らないのにか。
…まぁ、そういうこともあるよね

…大変だ…

町を走る。

幸村さんと叫ぶわけにはいかないから、とにかく目で探す。

…仕事、入って

帰っちゃったのかな

私より、信玄様のが大事なのは当たり前だ。

でも…幸村さんは黙って帰るような人じゃ…

「なぁ!お姉ちゃん!そんな急いでどこ行くんだよ!俺らと」
「しゃらくせぇ!」

ナンパは勢いに任せて跳び蹴りで撃退。

女を一人放置しやがって

叫んでやろうか

幸村のあほって

「さなだ…」
殿!!」

横から人が飛び出した。
もちろん幸村さんだが
「よかったぁ!どこ行ってたの…!?」
「す、すまぬ、殿が、真剣に売り物を見ていたから…少しなら大丈夫だろうと…」
「だからって…」
一言声かけてくれよと言おうとしたが、それ以上に気になることが
「幸村さん、そこから出てきたよね?狭い裏路地…本当にどこ行ってたの?こっそりお仕事の話してたんじゃないの?忙しいなら、私…」
「いや、殿が男に絡まれてるところを発見して…助けようとしたらそのまま突っ走ってしまったから、近道して追いついたでござる」
あれ?
あのまま、やめてください離して下さいってやってたらもれなく幸村さんが助けに来てくれてたの?

なんて惜しいことをした…

殿は、ある意味逞しいでござるが…」
「はい…」
「もう少し、気をつけて下され…判るでござろう?力の差が…」
「…はい…」
幸村さんにお説教をくらった…
「しかし、某にも非がござった…申し訳ない…」
「…どこいってたの?」
「…あ、その」
幸村さんの顔が赤くなった。
「…昼間っからやらしい店に」
「なななななにを言ってるでござるか!これをっ…」
ばっと、袋を出された。
「何?」
殿…に」

受け取って中を見ると

「…お香?」
「はっ…白梅の香りでござる…使い方は…伊達殿に教えて貰って下され」
「何で私に…記念?」

さらに幸村さんの顔が赤くなった。
耳まで真っ赤。

殿は…良い香りがして…その…近くで嗅ぐと何とも言えぬ甘い香で、某は…あの、どうも…調子が狂ってしまい」
「へ」
「だから…その、こういうものをつけていて下さると…知った香であるから…まだましでござって…その」

可愛いんですけど
狂っちまえよ幸村ァ…(Sモードオン

「某だって…殿の近くにいたいでござる…」
「ありがとう!幸村さん!」
かばぁっと抱きついて

頬にキスした

「ぎゃ―!!」
「足りない?」
「足りてるでござっ…殿―!」
赤い耳たぶにもキス。
わざと音を立てて。

ひぃっと少し声を上げた後、幸村さんは思い切り後ずさりして私から離れた。

「今言ったばかりでござろう!?力の差を…」
「幸村さんは大丈夫」
殿は某を男と思ってござらぬか!?」
「幸村さんは大好きだから大丈夫!」
「なぁ…!そんなことを…さらりと…」
「幸村さんは、大好きだし強いから、遠慮なくマジで殴りかかれる!愛の鞭!あはは!かわされそうだし!」

え―!?

「某には何をされても平気という意では…」
「幸村殿!破廉恥でござる―!」
「まっ、真似しないで頂きたい!」

幸村さんがマジで困った顔をした。
からかいすぎたかと思って、ごめんごめんと言いながら近寄ったら

いきなり腕を捕まれて、裏路地に連れていかれて

あ、あれ?
怒ったかな?
どうしよ…


ある程度奥に来ると、幸村さんが振り返った。

「某だって…殿が大好きでござる」

お?

「だから、殴られるような事はしたくない」

「あ、ありがとう」

「でも」

幸村さんが

「わわ!?」

おでこにキスしてくれた・・・

「・・・こ、これで、お相子ということで・・・」
あの幸村さんが!?自分から!?
・・・私の顔絶対赤い・・・

「ゆ、幸村さん・・・」
「な、何でござるか?」
二人して真っ赤っか。

「今度遊ぶときは、この香り付けて来るから」
「う、うむ、」

「次は、離れないで一緒にいようね・・・」
「・・・もちろんでござる」

どちらからともなく手を繋いで

賑やかな町を再び歩き出した。





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幸村は
難しいよ
うん
可愛く書けないです