とたとたと、軽い足音で目が覚めた。

「む…」
日が昇っている。
俺としたことが、寝坊した。

「おはようございます、小十郎さん」

障子が開いて、が顔を出した。

「ああ…しまった…寝過ごした」

のっそりと上半身だけ起こし、手で目を押さえた。

「政宗さんが寝かしとけって言うから起こさなかったんだよ」

「そうなのか…」

気を遣って下さったのだろうか。

謝らなければ。

?」

気がつくと近づいてきて、俺の背後に立った。

「髪、整えましょう」

が櫛を取り出した。

のものは、まいなすいおん…?とやらが関与する代物らしい。
よく判らないが、のものなら悪いものではないだろう。

…ああ、俺はいつからこんなにを信用するようになったのだったか。
疑ってかかっていた頃の感情はもう覚えていない。

「…?」

手が止まっている。

「うーん…」
「どうした?」

まいなすいおんが壊れたのだろうか?
だったら直し方は判らない…

「寝癖のある小十郎さんて、新鮮」

は髪を指に絡めた。

「可愛いなぁ!」

「大人に言う台詞じゃない」

ため息をついた。

こういうところだろう

気を許してしまうのは

「そもそも、は何しに来たんだ?政宗様が俺を呼んだとかではないのか?」

の顔を見上げた。

…いつも見下ろす側だからなかなか新鮮だ…

「政宗さんはお仕事してるよ。私は日なたぼっこしようかと思って、一番日の当たるところ探してたら、ここだったの」

なるほど…

ゆっくり櫛で髪をとかされた。

「ならここにいるといい」
「いいの?」
「あぁ、俺はいなくなるから自由にしていろ」

ぴたっと、の手が止まった。

「何のお仕事?」
「外交に関する書類作成だ」

「政宗さんと一緒に作るの?」
「いや、政宗様には印を貰うだけだが」

「じゃあここでしようよ」
「日なたぼっこしたいのだろ?」

「一緒にいたらだめ?邪魔しないから」

「…」
なぜ、と言いかけて止めた。
特に意味など無いのだろう。
一緒にいたいと、ただそれだけを訴えてくれる。

…悪くない。

「いいだろう」

「よかった」

俺が嫌だと言うと思ったのだろうか?

「…こっ、小十郎さん、ちょっと待ってて」
「?ああ」

どたどたと走っていき

何か器を持ってきた
「それは?」
「ヘアワックス!」
「へあわっくす?」

中身を器用に手で取って俺の髪に擦り込む

?」
「……」




「ぶあははは!可愛いぜ!小十郎!」
「…どうも」
髪が二束、まるで触覚のように飛び出していたそうだ。

はそれを直そうとしてくれたが直らず
の、へあぴんとやらを借りてそれで抑えている

……桃色の。

「ま、誰が見てものいたずらだな。寝癖なんて思わねぇよ」
「えぇ…」

多分、もそれを知っててやったのだろう。

「ほれ、小十郎、OKだぜ」
書類を返される。
「では、この通り進めますので」
「あぁ。ところでは?」
「昼寝しております」
「のんきだなおい…呼んでこい、仕事を与える。」
「はい」


そう言われたものの…

…」

幸せそうに眠っている。
起こすのは気が進まない…


揺すってみる。

起きない

〜…」

・・・ここまで無防備にされると逆に困惑する・・・

「政宗様がお呼びだ」

顔にかかっている髪をかきあげる。

「・・・

ほのかに桜色をした柔らかい頬に触れて


「・・・・・・!!」
気がつくと唇をの頬にあてていた。

急いで離れる。

小太郎は周囲に居なかっただろうか

政宗様に気付かれないだろうか

慌てる

「はっ!?」

が起きた。

「寝てた!」

「う、うむ、、政宗様が呼んでる・・・」

「まじですか!行かないと!」
が飛び上がった。

障子に手をかけると、一度振り返った。

「慌てる小十郎さんも、かーわいいー」

「・・・!!!!」

やられた。

いつから起きていたんだ

が頬を赤らめた。

自分で言ったくせに。

走って去っていく

「・・・まあ」

悪くはないか








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小十郎さん苦労症編(違
たまには小十郎さんとまったり