「…え…」
佐助は目を丸くし、固まって居た。
「、湯浴みをするから背を流せ。」
「うちの風呂場狭いから一人で入って!!お湯張ってないからシャワーだけ!!はい政宗さんタオル!!」
「仕方ねぇなぁ…」
「そこ―!!普通に過ごさない!!俺様に説明してここどこ!?」
「の家でござる!!」
佐助の疑問にはテレビを見ながらくつろぐ幸村が即答した。
「きっと時空の歪みがうんたらかんたら…」
「あんまり憶測と擬音で説明を図るのやめよう!!」
諸事情ありまして
佐助と政宗と幸村が逆トリップしました。
「ウワー展開早い!!」
佐助はとりあえず落ち着こうと思い、天井裏で一息つこうと上を向くが、全く木目がない。
じゃあ床下に潜ろうと思うがすぐ下に人の気配。
「―!!―!!すぐ下に多数忍び込んでるやつがいるよ!?気配隠そうともしてないけどの世界の忍ってこんなに能力低い…」
「あ、このマンションね、下の階に、家族向けの広い部屋もあるんだよ。だからかな。」
「下に人いるんだ!?」
「佐助、ここは城だと思うが良い!!」
「ただ者じゃないと思ってたら城主!?」
佐助は混乱していた。
「佐助、佐助、キャラが!」
「う…そうだいつも飄々としてるのが俺…!!ありがとう!!」
言葉にはっとして、佐助はあぐらをかいた。
「ここの部屋〜?結構きれいにしてるじゃない火事―!!!!!」
マンションから出火する映像を流すテレビ画面に向け、叫んだ。
「ニュースだよ佐助、大丈夫。」
「にゅうす!?」
「遠くで起きた出来事がこれで見れるのよ。」
「あ〜、そうなんだ未来すげぇ〜…」
視線はテレビから外さず、佐助は黙ってしまった。
「ねぇ…」
「ん?」
「もしこいつが俺らの時代にあったら…」
佐助の言わんとしていることを察したは、続きを聞く事なく口を開いた。
「織田信長が戦の準備してるだの、織田信長が死にましただの、全国に流れますわ。」
「忍はこの世界には要らないの!?」
「そんなことないよ!!」
きっと佐助のような人がいたら
お買い物とかきっと便利だろうな〜と、はのんびり考えていた。
「そうだ!!」
は、戦国時代で佐助と接していて、一度でいいからやってみたいことがあった。
「ねぇねぇ佐助!!これ着て!!」
喜びを隠すことなく笑顔でが取り出したのは、エプロンだった。
「いやらしい服…」
「全裸にそれ一枚じゃないよう」
そういうプレイにもってくのも素敵だけどな!と、の頭に一瞬裸エプロンの佐助が過ぎったが、自分で自分の手の甲を捻り痛みで爆笑を抑えた。
「一緒に、ご飯作ろうよ!!」
「ええ?俺様が?」
「いつもと勝手が違って面白いと思うよ!」
佐助が鍋で煮込む姿やフライパンを軽々操る姿、調味料を量る姿をは想像し、胸が高鳴る。
「絶対…似合うと思う…」
そして幸村がナイフとフォークを手に持ち、早く早くお腹すいたと急かせば素敵な家族の出来上がりだ。
想像するとわくわくしてきて、は佐助にエプロンを掛け始めた。
「今日は簡単に豚肉生姜焼きといきましょう…!!」
「え、何々?」
「私、準備するからちょっと待ってて!」
そう良い、冷蔵庫から豚肉を取り出して簡単に下ごしらえをし、フライパンを温め、調味料も混ぜてスタンバイする。
「佐助、お肉焼いて欲しいんだけど!!」
「焼くの?判ったよ」
そう言って、どこからともなく原始的に火打ち石を取り出すので、は無言で手だけつっこみポーズをした。
「現代は大丈夫よそんなことしなくても!!」
「だって火…」
「うちは、これで焼けるの。」
としては、ボッと火のでるガスコンロが好きだった。
しかし立地や家賃で自分好みのアパートは全てIHばかりなので仕方ないと諦めていたし、火事は怖いからこれでいいと思っていた。
しかし簡単に火がつくコンロを飛び越えてこれを見て、さすがに佐助は頭を傾ける。
「…どうなってるの?」
「触っちゃだめだよ、熱いから」
「どこが熱いの?」
「ここね、ここ。熱気感じるでしょ。」
はフライパンの近くに手を近付けてひらひら振った。
佐助も真似をする。
「…本当だ。」
そろそろ油を敷きたい。
「…この下に…ちっちゃいお館様でもいるの?」
「いないいないいない。」
普通にボケる佐助に、は温かい視線を送った。
だが順応性はやはり抜群で、こうやってと言えばすぐにこなし、美味しそうな食事が出来た。
シャワーを浴びた政宗は出て来るなり、美味しそうな匂いだと香りを嗅ぐ。
幸村は空腹でベッドに横になって待ちわびていた。
「ご飯できたよ〜。」
佐助がご飯とおかずを運んで、は箸を皆に渡す。
あああなんて平和でまったりなんだと、の顔は緩んでいた。
食べ終わり、政宗、幸村、佐助はテレビに夢中になった。
が食器を片付け終わり、戻ったときには佐助がベッドに突っ伏していた。
「佐助、大丈夫?」
「うん…なんか…慣れない環境で疲れた…。」
珍しく眠そうだ。
ベッドの横に座り、佐助の状態を伺う。
「…」
「ん?」
「旦那が団子食べたいってせがまない…」
そう言われて幸村を見ると、いれてあげたココアを飲みながら、家にあったお菓子を食べていた。
「馬の世話しなくていい…偵察に行かなくていい…訓練所も無いし…夕食の準備はすぐできるし、お風呂も大丈夫…」
「う、うん?」
「…俺様って…不必要…?」
一体どういうところで自分の存在価値を見つけてるんだ佐助…
は脱力してしまい、ベッドの端に顎を乗せた。
その姿勢のまま腕を伸ばし、佐助の肩にぽんと手をおいた。
そもそも団子の用意も馬の世話も風呂炊きも佐助の仕事じゃないだろ…!!
なんでお手伝いさんにやらせないのかしらこのオカンはっ…!!
「今日ぐらい、気楽にしててよ、佐助。」
「ん〜…」
気遣いの言葉だったが、佐助は不満そうな顔をする。
どうしても何か世話をしたいようだ。
「…そうだ」
「?」
今度は佐助の手が伸びてくる。
なでなでと、小動物を扱うように頭を撫でられる。
「の世話するー」
「へ?」
ここは自分の家だ。
私はホストで彼らがゲストなのだから、逆だろう。
「夜、本読んであげる。」
今日の佐助は、おかしい。
「うーん、私としては佐助にまったりして欲しい」
「まったりしすぎると俺病気になっちゃうよ!!」
「な、何い!!誰かが甘えてくれないと病に!?結構好みのようなめんどくさいような!!?」
は甘やかしてくれる、包容力がある男性に惹かれるタイプだった。
しかしこれは何か違うなーと、首を傾げながらそう叫んだ。
「、夜、寝付き悪い?よし俺様が耳元で羊を数えてあげる〜」
「い、いい!!そういうものは一般に出回っている!!」
「え、なに?どういうこと?」
「まあそれはいいとして!!」
は立ち上がり、キッチンへ向かい、数分で戻ってきた。
「はい、佐助、お茶。どうぞ。」
「………。」
「あした、コーヒーとか紅茶入れるから、試しに飲んでみてよ〜…佐助?」
佐助はお茶を受け取る気配無く、ベッドに伏せたままこちらに顔だけ向けている。
目を見開いて、こちらを凝視している。
「さ…さすけ?」
「う…うわあああああああああああああああ!!!!!!!」
「佐助えええええええ!?」
突如叫びだし、ぶるぶると震えながら布団を被り、まるで引きこもりのようになってしまった。
「ゆ…幸村さん…!!」
「禁断症状でござる。佐助は自分がなんにもしなくて良いなんて状況、耐えられないでござる。」
「め…めんどくせえええええええええええ!!!!!!」
幸村はテレビを見ながらそういい、ゆっくりとココアをすすった。
まあ、時間がたてば立ち直るでござるよ〜と落ち着いていた。
が佐助に寄ろうとしたとき、政宗がけほ、と咳をした。
部屋が乾燥しているため、のようで、風邪を引いたような咳ではなかったが
「旦那あああああああああああ!!大変!!ネギ首に巻いて暖かくして寝なきゃ!!!!!!!!!!」
「げえええええ猿飛おま…」
佐助は敏感に反応し、政宗に飛び掛った。
そして不意をつかれた政宗をベッドに引きずる。
「ぎゃあああ何こいつめんどくせええええ」
「旦那メッ!!早く寝るの!!湯たんぽ用意してあげるからね!!」
「い、いらねえええ!!!暖房付いてるだろ!!あれだ猿飛!!あの天井に付いてる白い機械が温風を…」
「きこえませんーそんなものありませんー」
「何ですかこいつ世話したがりな彼女!?」
「…あら?」
ターゲットが政宗なら、小十郎と政宗を見ているようで、は落ち着いてこの状況を見ていられた。
「、あの男はなかなか出来そうでござるな。」
「あ、あれは世界で活躍する柔道家よ。」
「なんと…!世界とは侮れぬ…!!」
は幸村とゆっくりしようと、並んでテレビを見始めた。
「猿飛…!!もっと柔軟な考えを持ちやがれ…!!」
「竜の旦那!!騒がないの!!たまにはゆっくり寝なさい!!」
「やだー!!やだー!!こんな母上っぽいのやだー!!俺の母上のイメージがあああああ!!!!!!!!!!!!!」
めそめそめそめそする政宗の涙で、の枕は濡れてしまった。
翌日、佐助は嬉しそうな顔で、ベランダで手洗いした枕カバーを干していた。
は、佐助と付き合ったら自分は怠惰なダメ人間になりそうだなあ…と思っていた。
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『主人公の時代に佐助が逆トリップ』というお題を頂きました!!
佐助の扱いが酷くてすいませ…!!
リクありがとうございました!!