佐助は今日も忙しく仕事をしていた。

「さて、今日は動きあるかねぇ…」

高い木の上から、春日山を眺めていた。


今日は朝から、信玄が謙信と戦をしたいと言い出した。

佐助は先日戦をしたばっかりでしょ!!と怒ったが、一騎打ちがしたいんだとだだをこねだした。

幸村まで一緒になって戦したい戦したいと言い出すから、もうどうしようもなくなって、謙信から仕掛けてこないか様子を見に来た。


「…かすがが見当たらないし、ちょっと先まで行ってみようかな…」

こそこそと隠れながら、佐助は山頂近くを目指すことにしたが

「……」

かすがが居ないとなると、女っ気が無さ過ぎる。

「たまには…」

最近はボーナスも出たしで、めったに使わない白金切符を装備してみた。


すると

「呼んだ?」
「え!?なぜ!?」

小太郎に背負われたがいきなり隣に現れた。

しかも綺麗に着飾って。

「あれ?あのお姉さんは?」
「風邪を引いてしまったそうで、私が代わりのバイトしてます」
「あーそうなんだ…」
「ご不満で?」
「いや、じゃあカッコいいとこ見せないとねー。しっかり俺を褒めてよね」
「うん!!あ、あのね、お酒じゃなくて間違えておにぎりもって来ちゃったんだけど大丈夫?」
「ああ、いいよ。むしろそっちのほうが安そうで良いかも」

お酒より米を選んでしまうとは、何だからしい間違いだと思った。

前田さんの装備にそんなものがあったなあと思ったが、まあ気にしない。

が小太郎の背から降りて、佐助に小さな黒い機械を渡した。

「なにこれ?」
「こっちは耳に、こっちは胸元につけてね。そしたら私と小太郎ちゃんの声も佐助の声も聞こえるから」

小太郎は話さないが、それには突っ込まず、マイクなんだな、とだけ言ってみた。

「…まあ、なんでこんなものがとかは聞かずに…じゃあ、はどこかからか見てるって事ね?」
「うん!!おにぎりはちゃんとあげるからね!!だって忍の仕事についてったら、邪魔しちゃう」
、気遣いありがとね」
「いえいえ、じゃあ頑張ってね、佐助」

再び小太郎の背に乗り、と小太郎はどこかに行ってしまった。

佐助はマイクをつけて、喋ってみた。

、聞こえる?」
『うん!!聞こえるよー!!』
「じゃあ行くからね」
『はい!!』

地を蹴って、佐助は進んだ。


「あれ?そういえばさ」
『何?』
「俺から巻き上げた金はの懐に?」
『給料は貰ったんだ。小太郎ちゃんにも分配したよ。佐助からのお金は会社に入るみたい。』
「ほー、よかったな小太郎」
『……』
「はは!!今日は小太郎が何言ってるかわかんね…え?」

目の前に一枚の紙が落ちてきた。

『給料は…結構、政宗に取られた…』

…可哀想に、

『…は生活費にって言って…しかし金銭感覚が判らないから政宗の口車に乗せられて…』

竜の旦那、酷くない…?

は無駄遣いしそうだからって…』

お母さん!?

『…けど、そのお金はしっかり貯金箱に入れていたんだ…!!の為に貯めているのだろうな…!!』

何その良い話!!?


『佐助速い!!その調子だよ頑張ってー!!』
「あ?ああ!!はいよ!!」

読みながら走っていたら、結構進んでいたようだ。

「おっ…と」

突然地中から忍が多数現れた。

「…分身の術!」

『佐助さすがー!!術凄いー!!テクニシャーン!!』
「あっはっは!!これくらいはねぇ!!」

いくら仕事でも男に媚びるような話し方をしないいつものに安心した。

『私、必要なくない?』
「そーでもないかな…!!地味にくらうんだよね…!!」
『あ、う、うん、気をつけるよー!!えい!!オニギリ!!』
「ありがとね!!」

上を見ると、一瞬小太郎が過ぎ去るのが見え、おにぎりが落ちてきた。

「さーて…さっさと終わらせて、と小太郎と遊びましょうかね…!!」

ある程度倒すとぼっと消え、近くの岩陰に移動した。

「いつもよりは警備薄めだな…残念、戦仕掛ける気配は無いか…」
「おや、いらしてたのですか」

びくー!!!!として振り向くと

白菜を持った謙信が…

「ど、どうもお邪魔してます」

どどどどうしようと思いながら、謙信を見ると、にこりと笑った。

「りゅうのみぎめのつくったはくさいでつくるつけものはさいこうなのですよ」
「…お、奥州に行ってたんですか…」
「さけのおともにとおもいましてね」

謙信はとってもわくわくしていた。

「きょうはなにか…?」
「あ、いやその、元気かなあって」
「わたくしのつるぎに、あいに?」
「ああ!!そうなんだよ!!」
『佐助ー!!オニギリの時間だよー!!!』
「あ!!ちょっと今っっ…!!」

また頭上からオニギリが現れ、佐助の元へ。

「…おや、さけではないですが…じょせいが…しろがねきっぷですか?」
「あ、えーと…」
「ということはじゆうがっせんですか…」

謙信はまたにっこり笑って

「しん・きょう!!!!」
「ぎゃあああああああ!!!!!」
『はい佐助おにぎり!!』

「しん・えん!!!!!」
「うわああああああ!!!!」
『はい佐助おにぎり!!!』

「拷問だよこれええええええええ!!!!!!」

『拷問!?どうしたの佐助!?』

と小太郎が現れ、佐助の元に駆け寄った。

来るな!!あぶない…」
「あ、謙信様こんにちはー」
「おや、いらっしゃい、
「そうだよね要らない心配だったよねええええ!!!!!」








謙信は、独眼竜と右目によろしく、と言って去っていった。

佐助は武田領まで戻ると、に自分の薬を傷ができた部分に塗って貰っていた。

といっても擦り傷が多かったが。

「佐助、情報収集できた?」
「まー、報告する事はできました…」

戦しよう、より、一緒に酒を飲まないか、の誘いのほうが上杉サンは喜びますよ…ってね。


「それよりは、このバイトいつまでやんのさ?」
「治るまでやるつもりなんだけど…向いてない?」
「いや、そういうわけじゃないけどさあ…」

がやってるって聞いたらさあ…風来坊とか四国の方とか…うちの旦那だって装備したいってなるっての…

佐助が眉根を寄せているのを見て、はそれをマイナスの意味に受け止めたらしく元気が無くなった。

「でも契約しちゃったから、途中でやめるなんてなあ…」
「うーん、、他にバイトの子は?」
「いるけど…」
「じゃあ、

頬に薬を塗るの手を止め、笑いかけた。

を指名してくる馬鹿がいたら、俺のところに来な」
「何で?」
「俺が上乗せして指名すっから。形だけだけど」
「…何で?」
「皆さん容赦なくを呼びそうだから。過労で倒れたらどうするよ?っつーわけでそんな優しい俺にもバイト代分配して」
「そ、それだめじゃん!!ぼったくりじゃん!!」
「何言ってんの、戦場に出ないだけで、には手伝いしてもらいます。俺の仕事のお手伝い。馬の世話とか」
「雑用じゃん!!!!!」
「雑用言うなー!!!!本当に俺がやってるんだからー!!!!」

…え、まじで?

…うん、旦那と大将のはそこらへんの奴に任せられなくてね…


「……」

小太郎がの袖をくいくいと引っ張った。


「あ、なに?お仕事はいった?」
「……」こくり

と小太郎が、何やら小さな機械を取り出して画面を覗いた。

「…なんでわかんの?」
「極秘の通信機器です。」
「…ふーん…で、どこの誰?」
「あ、かすがだー」
「何で!?」

「お前と戦うためにな」

背後からの声にギョッとなって慌てて振り向くと

腕を組んだかすがが立っていた。

「…を…独り占めしたいのか?」
「い、いや、俺は、のためを思って…」

そして旦那の財布のことも想像して…

「しかも…私の留守中に謙信様に近づいたそうだな?」
「それは仕方なくない!?俺だってあんなところにのこのこと上杉サンが来るとは思わなかったし!?」
「…問答無用だ…」
「ちょ、く、クナイも手裏剣もしまえって!!こんな至近距離で!!」
「かすが!!」

が咄嗟に佐助とかすがの間に入った。

…」
「佐助は今はお仕事中じゃないよ!!かすがもそうでしょ?謙信様は、佐助を追って殺せなんて命令しないでしょ?仕事以外でこんなことしちゃダメだよ!!」
「…それは…そうだが…」
「あらら…」

…こんな風にかばわれた事なんてないから俺様ちょっと感動しちゃったよ…


「というわけでみんなでオニギリ食べようよ。余ってるんだー」
「……」

ま、まさかおにぎり皆で食べたくて止めたんじゃないよね、うん。


佐助は前向きに考え、からおにぎりを受け取った。

「まあ、がそう言うなら、私も頂こう」
「……」こくこく

かすががの隣に座りおにぎりを一口。

、こんな仕事、今後はやめておいたほうが良いぞ?こいつのように下心のある輩に捕まってしまったらどうする?」
「下心なんてないっての!!!!華があるってのは良い事でしょー!?」
「……?」
「小太郎は小田原にいたとき寂しく…ないよな…お前は…」
「…」こくこく

は、がくりと項垂れてしまった佐助を見つめ、

「佐助」

にこにこと笑いながら話しかけた。

「さっきの言葉、嬉しかったよ。なんだか俺専属の回復役になれ!!って言われてるみたいで」

「……」

落ち込む自分に可愛い事を言ってくれるに再び感動してしまった…

「馬鹿が。白金切符モードだ。お世辞に決まっている」
「かすがあああ!!!嫌な事言うなー!!!!」






次の日、から佐助に手紙が来た。

お姉さんが昨日一日で風邪を治したそうで、バイトはやめたよ。
心配してくれてありがとね。

そんな内容の手紙だった。


ったら、マメなことで…」

最後に

「ん?」

戦う佐助、お世辞無しでかっこよかったよ。

「…………………」

ったら…!!!!!


こんな一行の文だけで感動できる、疲労が蓄積した佐助であった。