佐助はよたよたとだるそうに廊下を歩いていた。
朝日はまだまだ昇らないが、ぼんやりと空は明るい。

「さっさと汚れ落とさないとな―…誰にも見つからないうちに…」

今回の任務は少々てこずった。
服は血や泥で汚れてしまっている。

しかし、珍しいことではない。

風呂場につくと、中から人の気配がした。
しかしあまり気にせずに堂々と扉を開ける。
驚かせようとか、いたずらしようとか、そんな意思は全く無くそうしてしまった。
ただ会いたかったのかもしれない。

「え……あ!!きゃ…!!佐助様!?」
驚いて隠れたのは屋敷の女中。
小さい頃からずっとここで働いていて、佐助とも幸村とも仲がよい、という女だった。

「おっと、ごめんごめん。」
「確認してくださいよ佐助様―!!おかえりなさいませ!!」
「ただいま。うっかりしてたよ。ごめんね?」
「気配で気付いてくださいよ〜!!」

扉を開ける前に気配で中にいるのがだということには気付いていた。
しかし仕方が無い。
開けたかったから開けた。

「まぁいいじゃない?全裸じゃなかったし。」
「う…でも危なかった、です…」
「ちいさい頃はよく一緒に入ってたじゃん」
「今はちいさくないですから!!」

佐助が見たは着物の襟を合わせて居るところだった。
舌打ちしい気分になったのは気のせいだと自分を偽る。

、俺今から風呂入るんだけどさ」
「はい」
「背中流してくれない?」
「はい!かしこまりました!!」

幼い頃は普通の女の子だったのに、今じゃもうすっかり女中だ。
上の者の言いなりになることに何ら疑問を感じていない。

(俺様の命令だけ、ってんならときめくけどさ…)

残念な気持ちになりながらを先に浴室に待機させ、服を脱いでいった。





「おまたせ、。」
「いえ、お気になさらず。」

にこにこするに背を向けて座る。
は黙って背後に立った。

「……。」
「どうしたの?」

「傷…増えました?」
「まあね〜」
「気をつけて、下さいね」
「うん、死なないようにはね。」

飄々とそんな事を言う佐助を見て、は唇を咬んだ。
その気配を察して、佐助は優しく声をかけた。

「久しぶりだっけ、背中流してもらうの。」
「ええ。佐助様はいつお風呂に入ってるかわかりませんし…」
「んじゃあ、俺の広い背中にドキドキしてよ〜?」
「佐助様…」

様、に慣れるべきなのに、の口から出るそれにはむず痒さを感じる。
一線を引かれているようで受け付けないのだろう。


「はい?」

佐助が上を見上げ、は真後ろにいたため見下ろす形となった。
とん、と佐助がに寄りかかる。

「佐助様?」
「…まあ、も成長したね。」
「…え?」

一瞬何のことか分からないと言う顔をしたが、すぐに気がつき、後退した。

「佐助様!!からかうのはやめてください!!」
「からかってないよ、うん、柔らかくっていい形だ。」
「かっ、か、形…!?」

の頬が真っ赤に染まる。
初心で可愛らしい。

「…お、お世辞は…いいです…」
「お世辞?俺がにお世辞言ってるって?」
「だって…!!」

は自分の手を胸に当てて下を向いてしまった。
いつもの佐助なら察することが出来たのかもしれないが、今は上手く頭が回らなかった。

「どうしたの、。はっきり言ってよ。俺が信用できないってこと?」
「そ、そうじゃありません!!だって、だって佐助様は…」
「俺が何?」
「あの…上杉の…忍の方と…よく会って…」
「……………ああ。」

はかすがと自分の体を比較しているのだろう。
しかし今はかすがの名など一言も言っていない。
の目には自分はそういう人間に映っているのだろうか?

「…、俺、そんな最悪な男に見える?」
「そういう事では…!!」

おそらく劣等感を感じているだけなのだろう。
ならば自分は、そんなことはないと、今のままのが好きだとでも言って勇気付けるのが正解だろうか。

「じゃあさ」

自分は常に冷静な男だと思うのだが

「…俺に任せてみなよ…」
「え…?」
「大人の女にしたげるからさ…」

任務の後の昂りがこんなにも簡単に表に出てしまうなんて、まだまだだなと思った。







「っ…!!佐助様!!佐助様…!!」

を思い切り引き寄せて抱きしめ、帯を解いた。
着物一枚しか羽織っておらず、それだけでの白い身体が露わになる。

「こういうときは、佐助、にしよっか?」
「だ…ダメです…!!」
「何が?怖いの?」
「人が…来るかも…」
「…じゃあ移動したら…二人だけの空間になったらの事めちゃくちゃにしていいのかな?」
「っっ!!」

腕の中でがびくりと震える。
佐助は、小さくはは、と笑った。

「ごめんね……」
「冗談なら…離してください…!!」

掌で自分の頭を押さえ、佐助は目を細めた。
もう、冗談だよ〜などと言ってに笑いかける余裕などなかった。

「本当…今二人きりになったらのこと壊しちゃいそうなんだよ…」

こんなに人肌を欲する事、今まで無かっただろう。

「誰か来るかも…って、緊張感ないとちとやばい…」

多分とこんなタイミングで会ってしまったからだ。

が佐助の心境を察したのか、驚いたように佐助を見つめる。
そしてゆっくりと口を動かした。

「…あ、あの…」
「何…?」
「私…そういった経験が…」
「………」
「そ、それでも、佐助、の、相手が務まるなら…」
「あらら…」

嬉しい気持ちを、言葉の代わりに優しいキスで伝えれば、は佐助の首に腕を回した。







尋常ではなく緊張し、少し触れただけで反応して泣きそうになるに配慮して、風呂の隅に移動した。
湯気だけでは不安だろうから、少し霧を発生させ、落ち着くように宥めた。

「佐助さ、…ま」
「佐助、だよ。さっきは言えたでしょ?」
「そんな…余裕…無いです…!!」
「えーと…い、今で?」

佐助はゆっくり慣らせてあげようと思い、肩や背に手を這わせているだけだ。
こんな調子ではとても最後までなどできない。

、大丈夫だから落ち着きな?俺のこと信じてよ。」
「信じてます…けどお…」

だめなものはだめなんだと、は目で訴えてくる。
佐助は苦笑するしかなかった。
の小さな手は、佐助の腕をぎゅっと握っている。

「…
「あ、呆れてらっしゃるのでしょう…!!し、仕方ないではありませんか…!!」
「そうじゃなくってさ、手を繋がない?」
「え…手?」

佐助が握れば、の手はすっぽりと収まってしまった。

「よく…手を繋いで散歩したろ…」
「……はい…。」

を落ち着かせようと、過去の思い出話を持ち出したが、佐助のほうが感傷に浸ってしまった。

「迷子になりそうになって…が涙ぐんでさ…」
「佐助、いつも勝手に行っちゃうんだもん…必死でついて行って…」
「ああ、あの時は本当にごめんね…。でも、手を繋いだらさ…」
「安心しました…」

が佐助をまっすぐ見つめる。
そして手を握り返した。

「…佐助の…冷たい手…好きです…。」
「手、だけだった?」
「…手…だけだったら…」

目を潤ませながら言葉を紡ぐの髪に指を通し、何度も何度も撫でた。
佐助は不思議な気分だった。
何にも邪魔されずにに触れていたい、行為を進めたい。
けれど、とずっと話してもいたかった。

「こんなに…緊張したり…心臓がばくばくいったり…幸せと感じたり…しないとおもいます…」
「そうだね…俺も…」
「佐助…?」
が俺にとってただの家臣だったら…こんな気持ちにならなかっただろうね…」

ただの家臣だったら、本当に狼という形容が相応しい襲い方をしていただろう。
こんなに気を使ってしまうなんて、男としては情けない。

「じゃ〜、気持ち確認したし、もうそろそろ…」
「…へ?あ!!」

するりと片手を胸に手を這わせ、中心を優しく擦る。

「佐助っ…!!」
「俺のこと、好きって言って?」
「な…なんで…」
「なんでって何?言えないの?酷いなあ…」

もう片方は腰から下へ滑らせる。
どこに到達するかなど簡単に想像がつく。

「…濡れてる…」
「そ、りゃ…」
「俺が好きだから?」
「しっ…」

突然佐助が覆いかぶさり、を見下ろした。

「…し、知ってる…でしょうっ…!!」
「うんそうだね。」

にっこり笑って、佐助はの肩に顔を埋めた。

「…ずーっと前から知ってた…って言っても良いかな?」
「……。」

が目を泳がせる。
佐助はの首筋に何度もキスをするため見えてはいないが、きっと気配で自分の心境を悟っている。

「いいですよ…」
「では、いただきま〜す。」

もうすでにいただき始めているだろうと思いながら、は目をつぶり、どうか最後まで誰にも邪魔されないようにと祈った。













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ぬるいのが過ぎるって…しってる…!!

折角詳しい設定を頂いたので活かしたいなあと思ったんですが詰めすぎた…!!
全然えろくないですが裏に置かせていただきます…!!
暁様、リク本当にありがとうございました!!