武田信玄から書簡が届いた。
内容は
『温泉に招待するぞ!!』
「…まじか」
「行きたい―!!」
そんな緩い感じで温泉旅行が始まりました。
「おお、よく来たな!!」
「あんたに呼ばれちゃ、無下には出来ねえからなって…なんだこりゃ」
案内された旅館には、すでに謙信とかすがが居た。
「おそいですよ、どくがんりゅう」
「謙信様を待たせるとは、許せぬ!!」
かすががクナイを出そうと…
「浴衣かすがキレイキレイ!!」
「わ、!?」
が女の特権だと言わんばかりに、かすがに抱きついた。
「かすがキレイー!!ね、謙信様!!」
「ええ、きれいですよ…わたくしのつるぎ…」
「け、謙信様…!!」
「さてと」
謙信とかすがの周りに薔薇を咲かせるだけ咲かせて、は冷静に立ち上がった。
「かすが黙りましたー」
「よし、よくやった。信玄公、世話になるぜ」
「……」
小十郎はそんな二人を成長したと捉えればいいのかどうか判らず、黙って見つめていた。
どたどたどたと、大きな足音が一人分聞こえてきた。
「政宗殿!!片倉殿!!!!よくいらした!!」
「いっらっしゃい〜」
佐助も一緒だ。
二人とも浴衣姿だ。
「おう」
「お館様の温泉は、疲労回復によく効くのだ!!ぜひゆっくりしていってくだされ!!」
「幸村さん!!美肌は!?」
「…あ、あまり気にした事がござらん…」
「く、くやしい…!!」
とりあえず部屋に案内してもらった。
はかすがと一緒の部屋がいいというので、二人で一緒に行ってしまった。
佐助は政宗と小十郎の分の浴衣を持って
「お館様と上杉殿は先ほどからそわそわしていらっしゃって」
「竜の旦那迎えたら即行風呂行くって、あの調子じゃ」
「…何、年甲斐もなくはしゃいでんの?」
「しかし、政宗様、俺たちも汗を随分とかいてしまいましたので温泉に入りたいですな…」
「確かにな」
首の周りに張り付いた髪をうっとおしそうにいじりながら、政宗は佐助を見た。
「そういうことなんだが」
「はいはい、じゃあ入りなよ。旦那は?」
「某も入りたいでござるー!!」
決まりだな、ということで、皆で温泉に向かった。
「やはり温泉はいいのう!!安らぐわ!!」
「かいのとらとこのようにさけをくみかわせるとは…ふしぎなきぶんです」
「悪くは無かろう?」
「ええ、もちろん」
佐助が言っていたとおり、信玄と謙信はさっそく温泉に入っていた。
遠慮せずに政宗たちは戸を開けた。
「おーい、お邪魔するぜ」
「どくがんりゅう…」
「お館様!!幸村がお背中流しします!!」
「おお!!幸村!!」
ざばあと信玄は湯から上がり、ならば頼むぞ!!と幸村に背を向けた。
「はい!!お任せください!!」
「楽しそうだねー…旦那…」
佐助は湯に入らず、近くの木から皆の様子を見ていた。
それを見ていた小十郎は
「政宗様、俺もお背中流しましょうか?」
「ん?ああ、いい。いいから気にしねぇで汗流せよ、小十郎」
「そうですか…」
「……」
なぜか小十郎はしょんぼりしてしまった。
「や、やっぱ流してくれ」
「っっ!!政宗様!!はい…!!気合入れます…!!」
武田主従に対抗したかったようだ。
その会話を聞いていたもう一人は、いてもたってもいられなくなって
スパーンと戸を開けた。
「謙信様あああああ!!私もお背中を!!」
「あああああ今まで恥ずかしがってもじもじしていたかすがが堂々と勇ましく戸を開けたああああ!!!みんなー!!腰布をー!!!!!!!」
の叫びが響いた。
突然の事に驚いて、謙信以外は勢いよく温泉に飛び込んだ。
白濁した湯なので安心です。
「ぷはっ!!!?と、忍…」
湯から顔だけ出し、二人を見ると、水着を着て立っていた。
「…ごめんなさーい…断りいれてから入ろうとしてたんだけど…」
「…!!だって謙信様が…」
「判った判った…」
がかすがを落ち着かせる。
「「……」」
政宗と小十郎は
男くさい伊達軍ではめったに見れない女の子同士のはしゃいだ姿に
ちょっといいかもしれないとか思っていた。
「わたくしのつるぎ…そのふくはなんですか?」
「こ、これは、が…」
「水着っていって、水に濡れても大丈夫なんですー」
「ほう…!!相変わらずの持ち物は珍しいものばかりだのう…!!」
湯の中でこそこそと腰にタオルを巻き、信玄と政宗と小十郎はリラックスして温泉に浸かり始めた。
「かーすが。相変わらずイイ体してんね」
佐助はにやにやしながらかすがをからかう。
からかうといっても本当のことだが。
佐助はいつものようにふざけるな!!とかすがは怒りだすと思ったのだが
「ば…!!馬鹿!!お前…!!」
「え?」
かすがは慌ててを気にした。
「き、気にして、ないよ、かすが」
棒読みだ。
「さ、さっきまでは胸とか腰とか身長とか凄く気にして…!!そういうことを言うな!!が可哀想だ!!」
「あう!!」
ぐさりとかすがの言葉がのガラスのハートを貫いた。
そんなことないって言ってたのに…やっぱりただのフォローだっのね…かすが…とはがっくり膝をついた。
「…!!すまない!!ど、独眼竜!!」
かすがは睨みながら政宗に助けを求めた。
「……」
「独眼竜…?」
が落ち込んでいるのに黙ったまま。
「…貴様…!!」
に対する気持ちはその程度だったのか…とかすがが怒りを露わにしたが
「いいの…かすが…私に巨乳とか似合わないもん…。でも、でも…やっぱり、大きいほうが、いいのかな…」
そう言って
は両腕で胸を包み込むようにして隠したが
隠すというより寄せる感じになり
「それだー!!!!!!!!!!!Good job!!!!!!!」
政宗は叫んで近くにあった岩をばしばし叩いた。
「な、何…?」
かすがは何がなんだか判らないようで
「…いいか?あの劣等感を感じて沈んだ顔に、胸に添えた手、そして小柄な身体に正座。今すぐ抱きしめたいと思うだろう?」
「そ、そうなのか…!!」
意外にも小十郎が解説してくれた。
「た、確かにいいかも…ちゃん!!可愛いよ!!」
「え?あ、ありがと!!佐助…!!」
も心の傷が徐々に癒えてきたようで、立ち上がって政宗たちの元に向かった。
「…あれ?ところで…」
こういうときに一番うるさい人が、居ないんですけど?
「「「「「「………」」」」」」
そういえば、と、きょろきょろ周囲を見渡すと
「…OH…」
さっき政宗がばしばし叩いた岩の影に隠れて
「…こんなところにいたのかよ」
「…はれんちでござる…」
幸村が顔を真っ赤にしていた。
ちゃぷんとが湯に入り、幸村を心配して覗き込んだ。
「幸村さん、隠してるから、大丈夫よ?」
「!!!!!!!!!!!はっ!!はれんち!!」
「…破廉恥…」
幸村はの方を向けず、背を向けてしまった。
「…幸村さん、私、破廉恥?」
「そのように、肌を晒してはならぬ!!」
「私みたいな、身体でも?」
「関係ござらぬ!!破廉恥でござる!!」
「幸村さん…!!」
は
喜んでしまった。
「ありがとう!!幸村さん!!」
「ぎゃあああああ!!せせせ背中に当たってるー!!!!!!!!!」
幸村に勢いよく抱きついた。
「幸村さんのこの反応が嬉しいー!!」
「某には拷問でござるああああ!!!お館様の前でー!!!!止めてくだされー!!!!」
「幸村!!ワシが見ておるぞ!!」
信玄がしっかりせい!!と叫んだ。
「…信玄公…それおかしいぞ…視姦かおい」
「…政宗様、そのような発言は控えてください」
「りゅうのみぎめ、いっぱいいかがですか?」
「おお、すまねえな」
「俺も欲しい」
謙信はとりあえず飲みたいようだ。
女中が持ってきた酒を小十郎と政宗に渡した。
「幸村さん、幸村さん、こっち向いてよー」
「いやだあああああ!!お館様ああああ!!この幸村、降伏…!降伏でござるううう!!!」
「幸村!!が可哀想とは思わぬか!?そのように拒絶するとは!!」
「お館様!!は嬉しそうにしてますが!?じゃ、じゃあ佐助ー!!!!」
「ぐー」
「寝たふり!?忍のくせに!!しかもぐーって!?」
佐助の、自分で何とかしてくれ、という、上司へ対して成長してくれという親心だ。
「か、関わりたくない、じゃなくて!?」
そうとも言うかもしれないね。
「あ…わ、判ったよ、幸村さん…ご、ごめん」
「え…」
あんなにくっついていたのに、はすっと離れてしまった。
「あ、あれ、…」
言い過ぎたかな、傷つけてしまったかな、と幸村が心配して、立ち上がって岩の反対側に行ってしまったを見ると
「……」
も真っ赤で視線を合わせてくれなくて
「……?」
「幸村…」
「…幸村…おまえ…」
「真田ァ…」
「貴様…!!」
「とらのわこ…じしんのすがたをみてみなさい…」
「…え」
…そういえば
慌てちゃって
…何も腰に巻いてないなあ…
「ぎゃああああああ!!!佐助!!佐助ええええええ!!!」
「…はいはい」
佐助は幸村の元にやってきて布を渡した。
「うわああああ!!すまない!!某、わざとではなく…!!」
「…へ、平気だよー…うん、ちょっとしか見えてないもん…ほら、湯が白いし…。うん、その、ちょっと、毛が…うん」
「言わないで下されえええええええ!!!!!!」
幸村はこんな場で好きな子に見られてしまい、どうしていいか判らなくなって
「うあああああん!!!」
「あ!幸村さん!?」
走って温泉から出て行ってしまった。
「幸村さああああん!!」
も水着のままで行ってしまった。
「幸村は純情だねぇ…俺なら、見たんならお前も見せろよとか言うのになあ…」
「…政宗様、発言を控えてください」
二人が行ってしまっても政宗は落ち着いていた。
なぜなら
某は何てことをー!!!!!!!
幸村さん私大丈夫だからー!!!!!
でもー!!!!!!!!!
ええい!!いつまで気にしてんだ!!しっかりしろ幸村ー!!!!!
脱衣所からすさまじい叫び声が聞こえていたからだった。
ばしいいいいん!!
「あ、殴った」
…!!
あーあ!!私ったら殴っちゃった!!まあいっか!!これでおあいね!!
…!!
熱血友情ドラマで解決したようだ。
「つまみねぇの?」
「漬物ならばあるぞ!!」
「それはあがってからにいたしましょう」
「謙信様、かすががお酌を…」
皆それぞれ
温泉を満喫しているようです。