政宗とは庭で蹴鞠をしていた。
珍しいですね、と小十郎が話し掛けると、女中が連れていた子供から貰ったのだそうだ。

「これが、リフティング…ああ…」

しかしあまり蹴鞠らしくはなかった。

は太腿で鞠を上方に向かって弾ませていたが、バランスを崩して左方に飛んで行ってしまう。

「俺にもやらせろ!!絶対俺のが上手い。」
「だろうね!!もう!!」

悔しそうには政宗に向かって鞠をポーンと投げる。

つま先で上手く回転させて鞠を浮かせ、胸で受け止める。

「すっごいサッカーっぽいなもー…器用なんだから…」
「ah?なんだって?さっ…かー?」

そして太腿の方へ落とし、リフティングを始める。

「こうか?」
「そうそう!!すごーい!!上手!!」
「ほう、これは見事。」
「っ…と…!!いやでも…hard…!!」
「あ!!」

バランスを崩したかと思うと、鞠が前方に逃げていった。
は走っていって、それをキャッチする。

「コツは掴めた気がするけどな…」
「うんうん!!」
「ん?なんだよ、感心したみてえだな。様になってたか?」
「うん!!」

素直に感動されて、嫌な気分は無い。

「娯楽として取り入れるかね。」
「うん!!」

嬉しそうに鞠を持ち上げながら、縁側へ向かう政宗についていく。
そして座って、小十郎が淹れてくれたお茶を飲み始める。

「他にもなんか遊び知ってたら教えてくれよ。」
「ええーと…」

は何か空を見上げて遊びを思い出す。
道具も無しに、その場でできるもの。

「山手線ゲーム!!」
「やまのてせんてなんだ?」
「………戦国武将ゲーム!!伊達政宗!!はい!!」

はびしりと政宗を指さす。

「…信長のおっさん。パス。」

そして政宗は小十郎を指さす。

「…う、上杉謙信…ええと…?」

そして小十郎はを指さす。

「こんな感じで回って、お題に関連したものを言えなくなったり間違えた人が負け!!」
「いい感じに酒がまわった時に良さそうだな。」
「よ、よく分かったね政宗さん…」

飲み会ネタは結構受けがいいのかもしれない。
しかしあまり詳しくないは、必死に絞り出すしかない。

「あと…ポッキーゲームとか…」
「ポッキーゲーム?」
「あ、ゴボウのてんぷらゲームでいいかな…」

は少し待っててと言い残して去っていく。

「朝食にゴボウのてんぷらあったな。」
はお腹いっぱいになってしまい、残して昼に食べると言っておりました。」

一体それで何をするんだ…と不安になったが、が持ってきたのは赤い箱だった。

「偶然荷物にあったよ。おやつ鞄に常備していた私ナイス。」
「なんだそりゃ。」
「ポッキー」

がさがさと袋を開け、棒を一本取り出す。

「クッキーって、小麦粉でできたものと、チョコレートっていうカカオでできたものが組み合わされたお菓子だよ。」
「ふうん、それで、どう遊ぶんだ?」
「はい、政宗さん、端っこくわえて?」

最初にチョコレート部分はべたべたして嫌だと言われるかもしれないと考え、はクッキーの部分を政宗に向ける。

「?おう。」

政宗は疑問に思いながらも唇で軽くくわえた。

「それで、」
「!!!!!!!!!!!」

が反対側をくわえ、政宗は動揺してしまう。

「へ……????」
「ほお…」

小十郎は面白い遊びの発想があるものだと真面目に観察していた。

「食べ進めて、先に口を離した方が負け!!何人かいるときは、途中で折れたり唇触れたら負けってしてどれだけ短くできるか競ったり…ねえねえ、ドキドキしないこれ?」

は単にスリルのドキドキのことを言ったのだが、政宗はそれどころではなかった。

「やめろおおおおお!!」

ぱきい!と思い切り歯でポッキーを砕く。
は少し驚きながらも、勿体ないと考えぽりぽりと残った分を食べ始める。

「こんなん平気でやれる奴の気がしれねえ!!」
「ご…ごめん…まあこれもほどほどのお酒回ったら…」
「絶対やらねえ!!お前も二度とやるな!!」
「ご、ごめんなさい…」

低俗だったろうか、とはしゅんと肩を落とした。

政宗も少し言い過ぎたかと思ったが、突如その場にいないはずの人間の声が響く。

「独眼竜…新しきを否定するは卿らしくないのではないか…?」

「て…てめえ松永…!!!いったいどこから…!?」
小十郎は即座に立ち上がり、腰に携えていた木刀を握る。

「そんなことは問題ではない。面白そうなことをしているじゃないか。私も珍しいものは好きだ。」
「ポッキーですか?」
「てめえにやるポッキーはねえ!!!さっさと失せろ!!」

ポッキーを松永にあげようとは一本取り出したが、小十郎に遮られてしまった。

「ポッキーくらいで帰って頂けるなら…」
「いいや…!!あいつはポッキーを袋ごと差し出せと言いだすに違いねえ…!!許さねえぞ松永ァ…!!!!」
「ポッキー1袋別に…4袋あるタイプですし…」
「誰が…ポッキーが欲しいと言ったのかね…?」

松永がゆっくりと、右手をこちらに向ける。

「私は…ポッキーゲームとやらをしてみたいのだ…!!!!!」

「…………。」
突っ込みをどこにもできなかった政宗は自身を呪った。
どうして俺はこうなるまでただポッキーをもぐもぐしていたんだと後悔した。
クッキーがやたら自分の口の中の水分を奪っていく…そのせいかもしれないとお茶を含んだ。

「………よし、回復。」
「政宗さん、じゃあみんなでポッキーゲームだ!!」
「あれ!?もう取り返しがつかないとこまでいってたのかよ!!!?」

が楽しそうにポッキーを持つ。

「2人ずつに分かれて、ポッキーを…」
「ちょっと待て!!!待て待て!!1組男同士じゃねえか!!!」
「くじ運は悪いのかね…?独眼竜。」

いつのまにやら松永も縁側に座ってまだかまだかと待ちわびている。

「悪運は強ェぜ俺は…」
「ほう、それは頼もしいものだ。しかしこの場は例外として…我々男3人の対決といこうじゃないか。」
「?」

松永がの持ったポッキーを一つ持って、に向ける。

ぱくりと口に含むと、松永はにやりと笑った。

「彼女とポッキーゲームを行い、唇同士触れ合わない距離、どれだけ近づけるかを競う。」
「…勝った奴になにか景品はでるんだろうな?」
「ふふ…良かろう。」

指をパチンと鳴らすと、三好三人衆が箱を持って静かに現れる。

「私が勝ったら独眼竜の六爪を、卿らが勝ったら私気に入りのこの筆を「いらね」

政宗が即答し、松永は静かにため息をついた。

「ふ…では始めようか…」
「誤魔化すな!!そんなもん欲しがってにこんなことさせるかよ!!」
「政宗さん、私目を閉じてるよ。物差し持ってるからこれで測ってみんな公平にね?」

懐からなぜか筆箱を取り出し、が微笑んだ。

「いいのかよ…?」
「大丈夫!!ちょっとドキドキするけど!!」
「変なことはさせねえからな…。」

政宗が目を細めて松永を睨みつける。

「…俺達が勝ったら、あんたの名誉を貰おうかね…」
「ほう?名誉とは?」
「変態クソ野郎な噂を流してやるよ。あんたは絶対それを否定しない。どうだ?」
「…なかなか面白い発想だ。仕方がない、では私もそうしよう。卿らが負けたら、とんでもない噂を流させて頂くよ。」
「しばらく外に出れなくしてやんぜ…!!」

では、俺から行きましょう、と小十郎がの正面に立つ。
屈んで、肩に手を置き少し首を傾げたところで政宗は動揺した。

「っ…!!」

そういうことではないと分かっているのに、複雑な気分になる。

「じゃあ、始めるぞ。目を閉じていろ。」
「うん。」

は強張ることもなく信用しきった様子で目を閉じた。
松永は口元に笑みを浮かべて見つめる。
視界に政宗も入っているだろうから、政宗も平静を装うと必死だった。

「……。」
もうこれ以上は難しいと判断した小十郎は、口を離した。
目を開けたは物差しを当て、政宗が目盛を読む。

「…2ってとこだ。単位はなんだ、これ?」
「センチメートル。うわあこんなに近づいたんだ、想像するとドキドキだ!!」

小十郎は政宗に耳打ちをする。
「如何でしたか。この小十郎、政宗様でしたら一度見ればコツを掴めるかと思い先陣をきりました。しかとご覧いただき策は練れましたでしょうか…?」
「………お、おう…」

こっちは動揺してそんな凝視できてねえよこっちはそんなに純情でも変態じゃねえんだよこのくそ真面目!!!!!と心の中で思いながらも政宗は余裕の表情を見せる。

「よし、じゃあ次は俺が…」
「私が最後かね。まあよかろう。」
「あ、じゃあ新しいポッキー咥えるね。」
「…よし、じゃあ…」

小十郎と同様に肩に手を添えて顔を近づけるとが目を閉じる。

「………。」
「いつでも始めてくれて構わないよ。」
「政宗様!小十郎が見守っております。」
「…………。」

予想以上に可愛らしく、政宗に緊張が走る。

「く…くそ…負けねえ…無心だ…!!!」
そう呟いた後、顔を傾け一気に食べ進める。

「あっ!政宗様、唇をこう…にゅっと引込めるようにすればよりいけるかと思われますが…」
小十郎うるせえええええ!!!!と内心悪態をつきながら、せめて小十郎の2センチメートル以内には行こうと近づいた。

「!」
「!!」

しかし政宗の吐息がかかった瞬間、の体が強張る。
それに驚いて、政宗は口を離してしまった。

「〜〜〜〜〜shit!…びびったろ、今」
「ご、ごめんらさい…」
「いやしかし、随分…素晴らしい、もう少しで1です。」
小十郎が物差しをあてがって計った後、にここだと指し示す。

「1.2センチ…うう…政宗さん勢いよくくるんだもんびっくりしたよ…」
「勝負事は勢いが肝心なんだよ…!!」
政宗は頭を掻きながらから視線を逸らした。
口づけを交わすときに先程のようにいつも大人しく待っていてくれたらどんなに可愛いだろうと想像しながら。

「では、私の番か…」
松永がに一歩近づいただけで小十郎は殺気を向ける。
「分かってるとは思うが…」
「ふ…決まり事はしっかりと守るよ。」

そしてまた新たなポッキーをくわえたの正面に立つ。
相手が松永ということにさすがのも緊張を隠せていない。

「ふふ、これは可愛らしい…」
「よ、よろしくおねがいします…」
そして松永は目を閉じたの顎を支えて持ち上げた。

「!!」
「おいてめえ…!!」
「方法は自由だ。この方がやりやすいと判断した。」
、もしもの時はポッキーから口離していいぞ。俺が許す。」
「は、はひ…」

そして松永は、ゆっくりと一口目を咥える。
ゆっくりゆっくりと、いやらしく唇を動かしながら食べ進めていった。

「や…やめろ…」
政宗は血の気が引く思いになる。
問答無用での口の中にあるポッキーまで食べられてしまうような錯覚に陥る。
しかもよく見ればは顎を持ち上げられすぎてつま先立ちになり苦しそうにしているではないか。
の体勢が崩れた際に事故を装って接吻…きっと松永の策略はこうだ。

…という妄想が政宗の中で爆発した。

「やめろおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「政宗様ー!!!!!!!!!!!!!!」

小十郎の制止も間に合わず、政宗は松永の頭を近くにあったゴボウで引っぱたいた。

「っ!!!」
「ー!!!!!」
引っぱたかれた松永はそのままにゴツンとぶつかることになる。
政宗は動揺しすぎであった。

「……。」
松永は静かにポッキーから口を離す。
も下を向いてしまった。

「政宗様…」
「あんな可愛い顔されてこの欲求不満野郎が耐えられるかってんだ!!下心丸見えなんだよ!なんだいやらしい食い方して!!」
「卿は…面白いことをするのだな…私は純粋にポッキーゲームとやらをだね…」
「政宗さん…何してんの…」

はっとして目の前を冷静に見ると、は顔が真っ赤で松永もどこか照れくさいような顔をしていた。

「…なんというか…すまないね。事故ではあったが君の柔らかな唇を…」
「いいんです…政宗さんが馬鹿だったんです…なんでよりによって頭はたくのかな…」
「………。」

政宗はいったい何が起こったのか冷静に考え、

妄想すると

発狂し

松永にBASARA技で襲いかかった。

「一番政宗様が理不尽ですね。」
「松永さん、楽しそうに避けてるからいいんじゃないですか…?」


後に松永は変態と、政宗は阿呆との噂が立ったが特に真新しいものではなかったためすぐに消えて行った。

「…どういう意味だ…」
「そういう意味かと…」












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伊達軍・松永様でポッキーゲーム、落ちは松永様というお題頂きました!!
最初は…まともな感じにスタートできたと思ったのになんだかごめんね政宗様!!!!になってしまいましたすみません!
リクありがとうございましたー!!