「政宗さん。この上に手を載せて?」

がそう言って自分の小さな手を差し出してきた。
政宗は占いか何かか?と思い、ぽん、と自分の手を重ねる。

その瞬間、が硬直した。

「え、政宗さん……Mなの……?」
「ど、どういうことだよ!?」
「あの、こうするとSの人は疑いながら乗っけたり拒否するって聞いて…恐る恐るな政宗さん見たくてやって・・・」
「Mの奴はそのまま乗っけるってか…なんつー診断だよ……。」

俺がに触れるのに抵抗なんかするか、と思うがそれよりため息の方が先に出る。

「くだらねえ。俺がMだったときがあるかよ。」
「ふふ、隠してるの?」
「てめえ……。」


重ねたままだった手を強く握る。
言いすぎて、しまったと冷や汗をかくを、逃がさねえ、と、やや強く。

「大体お前はSだとかMだとか分かって言ってんのか。」
「い、痛いので感じるのがMで、痛がるの見て興奮するのがS。」
「ふうん?」
「ん?痛いので感じる姿を見て興奮するのがSか。言葉が足りなかったごめん。なかなか深いね。」
「…いや別に謝らなくてもいいけどよ…。」

どんどん迫って、俺がMじゃねえって分かったか?と言ってもいいが、真面目に答えるの態度に付き合ってやってもいいかとも思えてくる。

「…やってみるか?」
「えっ?」

まさかの申し出に目を丸くする。

「ったく、奥州筆頭様にこんなこと言わせられんのお前ぐらいだぜ……どうする。」
「でも私、政宗さん痛くするのやだよ?」
「ガチでやんねえよ。軽く。」
「じゃあ…ちょっとやってみようかな…!!」

は書状を束ねていた紐を取る。

「政宗さん、手を合わせて?」
「…どっかのついてねえ奴思い出すな…」
「官兵衛さん?じゃあ後ろで結ぼうか?」
「前でいい。」

両手首を合わせて紐を巻く。
そしてリボン結びで可愛らしく止めるのでSMプレイの真似事であることを忘れそうになる。

「あれ!政宗さん可愛いよ!?」
「可愛いってなあ…」
「無抵抗な感じが!可愛い!!」

あぐらをかいていた脚の間にが入り、政宗の肩に手を置く。
そして耳元に口を寄せる。

「ふう」
「うお!!」
されるがままにされていたら、息を吹きかけてきた。

!!調子に乗るな!!」
「やっていいって言ったの政宗さんじゃないのー。」

手を縛られているとは言え、抵抗する気になればいくらでもこの小さい体を跳ね飛ばすことができる。
反射的に何かしないよう身構えて耐えるのも大変なのではないかと今になって危機感が芽生える。

視線が揺れるのを見て、困惑しつつも了承しているととったのか、再びが身を屈める。
今度は耳を食む。

「おいいいいいい!!!!!!」
「痛くするね、いくよー。」
歯を立てて、やや強く噛む。
しかもそれも一瞬で、すぐに労わるように舌を這わせて舐める。

「むう…うまくいかなかった気がするわ…。」
「そ、そうだな…全然痛くねえ…。」
「足縛ったり目隠ししたりの方がいいかなあ…。」
「……!!」

そう言いつつ、指を首筋に当てて下へと滑らせる。
触れるか触れないかのその感触に、ゾワゾワとした感覚が駆け巡る。。

!もういいだろ!!」
「全然気持ちよくなかったでしょ…?むう…」

なんとかしようと、今度は着物の合わせ目に手を入れてくる。

「おま…!!」
「乳首を摘んでみよう。」

冗談じゃない。
そう思うがの顔は真剣だ。
なぜこんな事に真剣だ。

「軽くって言っただろうが!!」
「うん、軽く摘む。」
「そうじゃねええええええ!!!!」
「政宗様、書簡は目を通しましたか?」


廊下に視線を向けると、こちらを伺い止まっている小十郎がいた。

「や、その…小十郎…これは…。」
「……なぜこんな戸を開けっ放しにした状態でそのような事を…。お二人共見られて興奮するのですか?」
「小十郎さん、見られて興奮するのってマゾかなあ?」
「いや、それはただの変態だ。」
「そうかあ…」

SMって難しいな…とが呟く。

「…政宗様がM役ですか?」
「ちょ、ちょっと遊んでやっただけだ!!」

小十郎が政宗に近づいて膝を着く。
そして政宗の手をとって、縛り方を確認し始めた。

「この縛り方ではだめだ。緊縛感がない。」
「は、はい。」
も座って小十郎の顔と紐を交互に見る。

「…おい?」
「しかもこのようにズレるだろう?腕を宙に浮かせていたら大丈夫だが、手を下にしてうつ伏せにした時など摩擦により手首の皮が剥けるかもしれない。」
「あ、そ、そうです、ね。」
「相手のためを思うならばしっかりと、血流を阻害しない程度にだ。このように。」
「何さりげなく縛り直してるんだ!!!!!」

しかも捕虜でも縛るかのようなしっかりとした結び目で、解ける気がしない。

「なるほど…」
そしても感心した面持ちで小十郎を見つめる。

「そして…、ちょっと来なさい。」
「はい!」
「こんな状態の俺を残して何処へ行く!?」

小十郎がの手を引き立ち上がり、政宗の声も聞かずにどこかへ行ってしまった。

そしてしばらくすると、の絶叫とともに激しい足音が近づく。

「うわあああああん小十郎さんの必殺テクニックご馳走様です!!!!」

部屋に倒れ込んでくるのを、政宗は眉根を寄せた困惑顔でただ見ていた。

「だ、大丈夫か…?」

声をかけるがすぐ小十郎も顔を覗かせ、まるで剣術でも教えているような口調で話し出すから頭が痛い。

「分かったか?触れずとも直接的なことをせずとも感じさせる術は多くあるんだ。そういうのを巧みに使って焦らすんだぞ?」
「小十郎何教えてんだよ!!!!!!!!!!!!」
「わ、分かりました…頑張ります…!!」
「頑張らなくていい!!」
「では、仕事の方は明日までお待ちしますので、ごゆっくり。」

そして小十郎が戸を閉め、と二人きりになる。

「…政宗さん…」
「お、おう…」
「………これ流れ的にやらなくちゃいけないんでしょうか…」
「小十郎の去り際の良い事をした顔を思うとやったほうがいい気もするがやらなくていいぞ。とりあえずこの紐外してくれねえか…」

ハッとした顔で、もやっと我に返ったようだ。
遊びで始めただけのはず。

「今解くね!!」
「小刀使ったほうが早いからそれで頼む。」
「そっか、気をつける!!」

が小刀を取り出し、政宗を傷つけないよう慎重に縄を削る。
削るのに夢中で、政宗がその顔をじっと見つめていることにも気づかない。

「…。」

その姿のほうがらしい。
傷つけるより癒す方がこいつには合ってると、改めて思う。

「解けた!」
「よし…。」

手の動きを確かめると、と目を合わせる。

首を傾げたの腕をとって抱き寄せ、耳に口づけを落とす。

「うわあああ政宗さん!?」
「うるせえ仕返し!!」
「仕返しされる覚えがないぞ!!」
「なんだと!?」

理不尽だとが抵抗し、政宗の腕から脱出しようと前腕に噛み付いた。

「あっ…!」

そして思いもよらぬ色っぽい声が政宗の口から出る。
咄嗟に口を手で覆うが遅い。
も硬直した。

「…こ、このくらい強くしたほうが、良いのね?」
「だ、黙れ!!!今のは事故だ!!」

政宗がSなのかMなのか、それは本人にもわからない。

「Mじゃねえええええええ!!!!!!」


















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お相手政宗様で、隠れMというお題頂きました〜!!
政宗様隠れMだったらもえますなあかわいいですなあ!!!
リクありがとうございました!!