鳥の鳴き声で目をさまし、ゆっくりと瞼を開けた。
そしていつものように起き上がってあくびをして背伸びをして、いつもの一日が始まるはずだった。

「oh…」
違和感に気づいて頭を抱える。

「What happened…どうすりゃいいんだこれ…」

胸元を乱暴に開けると、豊満な胸がたゆんと揺れる。

「こりゃ…」
顔の輪郭を確かめると、いつもより柔らかい曲線を感じる。

「マジかよ…女になってやがる…」

一気に頭の中に仲間の顔が思い浮かぶ。
小十郎は見た瞬間硬直し狼狽えて切腹するとか責任取るとか言い出しかねないし、はきっと飛びついて自分を可愛い可愛いと言い出すに決まっている。

家臣は動揺はしても女の自分も受け入れてくれるような気がするが、もし士気が下がるようなことがあれば困る。

「!!」
小十郎の足音が聞こえてくる。
起きるのが遅い自分を起こしに来たのだろう。
いつもより軽いような、でも憂鬱そうな音に何かあったのだろうかと心配になるが、自身の方が大ごとだ。

「〜〜〜〜チッ…」

様子を伺おうと布団に潜った。
急に女になった姿で仰天させるよりは朝勃ちしてるとでも勘違いしてくれたほうがいい。

「…………政宗様…朝です……」
「お、おう…?」

びっくりするほど暗い声に顔を出して障子に映る小十郎の影を見た。

「……………。」

隠そうと頑張っているようだが隠しきれていない巨乳が揺れる。

「お前もか…」
「大体皆こんな感じになってます。」
「そうか…」

どうやら男が女になる現象が伊達軍を襲っているようだ。
のそのそと起き上がると同時に、いつもより一回り細く、胸と尻が強調された体型で不機嫌そうな表情の小十郎が部屋に入ってきた。

「…政宗様、お美しくなられて…」
「嬉しくねえ」

いつもより視線に気遣いながら着替えを差し出す小十郎を察して、政宗は背中を向けた。
寝間着を脱いで、軽装に着替える。

「あれか、小十郎、に抱き着かれたり胸揉まれたりしたか?」
絶対そうするだろうと予想して意地の悪い笑みで肩越しに振り返る。
動揺するかと思っていたが、わずかに顔をしかめるだけだった。

「政宗様…我らは女になっているのです…」
「…Ah…?もしかしては…男に…?」

小十郎がゆっくり頷いた。
そして顔を反らし、わずかに頬を染める。

「………なんだ…?」
「ど、どうやら、思考も女になっているようなので…政宗様、お気を付け下さい。」
「は…?」
「着替え、終わったか―?」

外からする声は、いつもより低いの声だった。

「…ああ。」
小十郎が返事をすると、戸が開いて顔を覗かせる。

「政宗さん!!」
ひょいと現れたのは、凛々しい好青年だった。
長めの黒髪を結んで、細い体だがしっかりと筋肉が付いているのは服の上からでも分かる。

「…誰だ。」
「…こちらが、…です。」
「…は!?」

男らしい小十郎はセクシーな女性になっている為、女らしいは男らしい恰好になっていることに納得すべきであるとは理解できる。
だが、思考が女の政宗はあらゆる思いが入り混じってうまく表現できない。

この状況を楽しもうとする自分と、に惹かれそうな自分と、町を歩けば道行く女が沢山振り返るだろうの容姿への動揺と。

「政宗さんも小十郎さんも、美人だな!!」
「Hey…口調は普段通りでいいぞ…」
「いや、なんか、こういう口調になっちゃうんだ!ごめんな?変か?」

政宗の混乱を察することも無くが近づいて政宗の顔を覗きこんできた。
「…!!!!」
「きれいな肌…」
触れようとした手を、握って止める。
いつもなら簡単に包んでしまうの手が自分よりも大きい。
おかしい。
違和感だらけだ。

「…と、ごめん。女の人に簡単に触っちゃだめだよな…」
「…小十郎」
「は。」

に背を向けて、双竜の会議が始まる。

「…、良い男なんだが…」
「……この小十郎も、そう思います。」
「…性格は普通なんだろ…?あの容姿で優しい奴なんだろ?」
「今朝、動揺していた俺を大丈夫だと言って抱き留めて下さいました。」
「…なんだそれ…」
「……逞しく、ありました…」

なんということだろう。
いつもならオイオイ…の一言で済むはずだったが、今回は違う。
抱き締められたと、恥ずかしそうに言う小十郎を見て湧き起こる感情が嫉妬ではないか。
羨ましくて、気にくわない。

「ふうん…」

くるりと振り向き、に向かって笑顔を向ける。

「おい!!特別にhugを許可してやるぞ!!」
「ま…政宗様!!!」
「な、なんか、違和感あるよ…気軽に出来ないよ…」
は手の平を見せて左右に振り、その申し出を断った。
その様子に政宗は不機嫌そうに頬を膨らませる。

「てめえそりゃどういうことだ!!上目線かアア!?性別が変わったからっててめえに力で負ける気がしね…」
そう喚きながらの胸倉を掴むと、は政宗の腕を握る。

「政宗さん、落ち着いて」
「…な…」
握られた力は少々痛みを感じる程度だったが、全く力を込めている様子がない。

「…分かったよ。少し緊張するけど。」
「!!」
困った顔を穏やかな表情に変え、が政宗を抱きしめる。

「うわー政宗さん柔らかい!」
「ちょ…お…」

の方が背が高く、政宗の顔がの胸に当たる。
そして加減が分からないのか、徐々に苦しくなってくる。

…!!苦し…!!」
背に手を回し、ばんばんと叩くとはっとしたようにが離れた。

「ごめん!!またやっちゃった…さっき小十郎さんにも加減分からなくて…」
「お、おまえなあ…」
「う、頬が赤いよ!?そんなに苦しかった…!?」
「……。」

口元に手を当て、そっぽを向く。
その方向に、複雑な表情をした小十郎がいた。

「…政宗様…」
「……小十郎…」
から少々離れて頂けると…」
「なんでそんな指図されなきゃならねえんだ…」
「????」
二人が険悪なムードであるのが疑問でならないは首を傾げる。

「ね、ねえ…二人ともどうし…?」
「……俺と小十郎、どっちが好みだ?」
「え?」
「思考が男になってんだろ…どっちを抱きてえか聞いてるんだ」
「ええ!?」
「政宗様…配慮が足りませぬぞ?」

と政宗の間に割って入るように腕を伸ばした小十郎を鋭い眼光で睨む。

「小十郎…」
「そのようなはしたない言葉を投げるものではございません。…こほん、、その、この体の俺を見て開口一番、美人だと言ったな…?それはどういう意味合いが込められて…」
「出しゃばるんじゃねえよ!!!」
「そのままの意味だよ。小十郎さん、綺麗だ。見惚れてしまいそうになる。」
「お前誰だよ!!!!!!!キャラ変わりすぎだろうがよ!!!!!!!!」

だがよくよく考えてみるとは人を敵に回さない魅力を多く携えている。
前田慶次も真っ青な色男になってもおかしくない。
そう考えているといつの間にか小十郎との距離が縮まり、小十郎が頬を赤らめているではないか。

…!ちょ、ちょっと待ってくれ?今迄経験したことない緊張感が…」
「…小十郎さん、可愛い…ドキドキしてくれてるの…?」
…!!!ど、どきどき…とは…?」
「……。」

二人が盛り上がってしまって政宗が孤立してしまっている。

強面だった小十郎は切れ長の目にスレンダーな体躯で色っぽい。
対する政宗はスタイルは良いが顔は小十郎に比べればやや幼い。

「あいつsexy系が好みなのか…じゃ、ねえ!!!!!!戻る方法考えろよ!!!!」
「ま…政宗様…俺はどうしようもなくに心乱されております…これを克服せず戻るなど負けに等しいのでは…」
「そんな深く考えなくていいんだよ!!!クソ真面目!!!!」
「ふふ、可愛い、小十郎さん」
「お前もやめろ!!!悔しい…いや何を言ってるんだ俺は…!!!!!」

小十郎がはっとして政宗を見つめる。
「ま、政宗様、女になってものことが好きですか…?」
「女になってもってとこが気になるが…そ、そりゃ…」
「そうですか…おそらく小十郎も…なまえをお慕いしているようで…」

目を伏せがちに、躊躇いながら言う小十郎に、これは政宗を試すでもない本音だと知る。

「…小十郎…」
「政宗様…!!!!この小十郎、正々堂々、貴女と戦い、そして決着をつけとうございます!!どうか俺と戦ってください…!!!!」

小十郎が部屋の片隅にあった木刀を手に取る。

「………。」

男に戻った時、小十郎はこのことを思いだし、恥ずかしさと後悔で部屋から何日か出てこれないんじゃないか…政宗の一番の心配は、それだった。
























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御崎リュウ様より、小十郎夢で「政宗VS小十郎で主人公のの座を争う」というお題頂きました!!
ちょ、小十郎寄り、って感じでしかも大丈夫かどうか分からない賭けの性別逆転…!!!
ふおおおお土下座!!!!!!
新規開拓してしまった新鮮さで書いてる方は楽しかった…です…!!!
リクありがとうございました!!