政宗の呼び出しに応じ、部屋を訪れると、一人で晩酌をしていた。

夜空が綺麗だから付き合えなどと言いながら、に盃を渡した。

「私、政宗さんほど強くない…」
「たまにはいいだろ?」

のペースに合わせて飲む気はないらしい。
酌をすれば政宗はすぐに飲み干してしまう。

飲みたい気分なのだろうかと考え、は止めるようなことはしなかった。

「星がいっぱい出てますね。」
「ああ。綺麗だ。」

も少しずつ酒を口に含む。

お互いの顔が赤みを帯びてくる。
今日は心地よく酔えそうな感じがした。

「政宗さんは…」
「なんだ?」
「…女性を口説く時はどんな風にするの?」

なんでそんなことを聞きたくなったかと問われれば、ほのかに酔う政宗がやたら色っぽく見えたからだ。

この男に誘われたら、きっと断る女はそうそう居ないのではないかと考える自分も、結構酔って居るのかもしれない。

「和歌でも詠めと?」
「え〜…まぁそれもいいけど…もっと簡単に愛の告白とかさぁ〜」
きっと詠まれても意味が理解できないだろう。

政宗が一瞬困ったような顔をした。
は、恥ずかしいのかな、と思うと同時に、さらに興味が湧いてくる。

「ね、ね、どうなの?」
「…お前、酔ってるよなぁ…」
「えへ〜そうかも〜」
確かに気分が高揚している。
こういう時は楽しい話題が良い。
政宗にも、今だけは戦のことを忘れて自分との時間を楽しんでくれたら嬉しい。

「お前はどうなんだよ。」
「政宗さん〜!人に振らないでよ〜!私が聞いてるの!」

強気になるとさらに困惑した顔。
政宗が年相応に見える。

「…知らねぇよ」
「そんなに教えたくない?」

ふいっとそっぽを向いてしまったので、調子に乗ってしまったかと後悔する。

「あ、あの、ごめんなさい…」
「俺をどういう目で見てんだ。酒の力借りて口説く?そういう男に見えるのか?」
「…あ…」

その言葉を聞いて、安心する自分に驚いてしまう。

「そうだよね…政宗さん、そんなことしないで堂々と言うもんね!!」
「俺はCOOLが好きなんだよ。知ってんだろ?」
「うん!!」

政宗が爽やかに笑うのでも嬉しくなる。
にとって女にだらしない男は敵であり、子孫繁栄のためであったって、一人の男が何人もの女を囲うなんて不快以外の何ものでもない。
しかし、この時代の、正室や側室などという言葉が使われる世であってはそんなもの望めないだろうと諦めが入っていたような気がする。

くぴくぴと二口、喉に酒を通して、へらりと笑った。

「そうだよね〜政宗さんはさ〜まっすぐで、芯が一本通ってるもんね!」
「何褒めてんだよ、気持ち悪いな…」
「いいの!政宗さん格好いいよ〜!!はい!お酌するよ!!」
「…はいはい」




その後は途中に冗談を交えながら世間話をして過ごしていた。

が途中、酔ってしまったので、横になって政宗の上着を掛ける格好になった。

「政宗さん、まだ飲むの…?」
はもうgive upか?」
「…うん…動悸が激しいし眠い…」
「部屋行くか?」
「…うん…」
「おい?」

すうすうと寝息が聞こえ、政宗は苦笑いする。
赤くなった顔に夜の冷えた風は心地よさそうだ。

「子供みてぇになってんじゃねぇよ…」

コッと極力小さな音で、盃を盆に置いた。

…」

政宗はの顔の横に、覆い被さるように手をついた。

「…口説き方が知りてぇのか?」

酒の勢いには呑まれない。
けど相手がお前なら別だ。

「ストレートに言うに決まってる。何でか判るか?」

そっちのほうが好きそうだからだよ。

…お前が。

むしろ回りくどかったらは気付かない。
鈍いのも程々にしてくれ。





しばらくその体勢で、の寝顔を見つめていた。
どこかから犬の遠吠えが聞こえてはっとする。


俺も何をしているんだろう。

こんな、いつ誰が来てもおかしくないようなところで。

に触れたくてたまらなくなっている。

「……」

真っ赤な頬に指先を這わせれば、プニプニと柔らかい感触で、色っぽいというより可愛くて仕方なくて笑えてくる。

唇をなぞれば、少し乾いていて、いつも粗相のないよう完璧に化粧を決めてくる女中や店の女とは違う、そういった気遣いの無い自然な姿に安心してしまう。


「…口説いて欲しいのか?とか、最初は思っちまったが…」

ただの興味?

「言えるわけ、ねえだろ…こんなノリで…」

お前に俺の気持ちなんて判らない。


一度口に出したら、歯止めがきかなくなりそうで怖いんだぜ?


「……好きだ…」


ああ、


「…大好きだ…」


ほら、


「お前を…愛してるんだ…」


ストレートな言葉なのに、目茶苦茶格好悪ィ。


「……。」

静かに起き上がり、を抱きかかえる。
起きる様子も無い。

部屋に運び、降ろそうとしたときに、そっと、艶やかな髪に頬擦りする。


布団に横にならせ、立ち去ろうとした時に、声がした。

「…うむ?あれ…お酒?」

今頃起きたらしい。

「政宗さん、私寝て…」
「途中で寝ちまってたんだよ。」
「あ…ごめん…」
「全くだ。」

振り向いて勢いよく近付くと、は驚いて飛び起きた。

「俺はもっと飲みたかったのによ!!」
「ひええごめんなさい…!!」
「いい加減酒の旨さ覚えやがれ!!」

そう叫んで、の脇をくすぐった。

「ぎゃああくすぐったいぃぃ!!」
「罰だ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめ…う…うげぇぇおきもちわる…」
「うわっ!吐くなよお前…!!」
「嘘だよ!!」
「なっ…てめ…」

は驚いて隙の出来た政宗に飛び付きくすぐり返した。
しかし政宗も負けじとの脇をくすぐり、取っ組み合いになってしまった。

「わああもう政宗さんやめれ〜!!」
「お前の方が退け!!」
「ぎゃああああ政宗さん胸触った―!!!」
「俺は気にしてねぇ!!」
「屈辱!!!」


「はぁ…全く、あの二人は…」

晩酌の片付けをしながら、進歩のない二人のやり取りに溜め息をもらす小十郎だった。
















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なんだかまともなものを久々に書いたようなえ?そんなことないって?

連載の番外編な感じで、ちょっと甘い風味で、「愛してるんだ…」といって欲しいというリク頂きました!!
おわーなんと可愛らしい思考の持ち主ですか分けて下さい…!!!
キャラをとにかくいじり倒したいぜ…!!な管理人とは大違いだ…!!

素敵なリクをありがとうございました!!