、あのな〜…こういう…」
「?」

政宗がいきなりに本を見せた。

「このくらいの大きさの、太い書籍が、蔵にあるはずなんだ」
「判った。持って来れば良い?」
「ああ、頼む」


が急いで部屋から出て行った。


「嫌がらねぇで…出来る事があんのが嬉しいのかね…可愛いじゃねぇの」


政宗がククッと笑っていると、入れ違いで小十郎がきた。

「政宗様、が嬉しそうでしたな」
「な、馬鹿だよな。俺の頼みごと、喜んで聞いてよ」
「頼み事?」
「あぁ、蔵にある書籍を…」
「…蔵…ってもしや…」
「ah?どうした?」





ガラララ!!

「うわ、やっと開いた…っつ!!」

開けた途端、埃が舞い上がった。

げほげほとはむせってしまった。

「しかも…なにこれ…」

大きな本棚があって、ずら―っと本が並んでいるのかと思ったが、中は物置状態。

「…掃除しようよこれ―…」

今は取り敢えず本を探そうと、は鎧やら机やら、ごちゃごちゃした蔵の中に入った。

「…ん〜…どこだ?」

巻き物が置いてあったりはするのだが…

「…あ」

…発見してしまった…
天井に届きそうなくらい大きな棚に…

「上すぎ…もう…」

は近くの台に乗り、次になんだかよく判らないけど足場になりそうなものに乗った。

そこから背伸びをしても

「届かないよ〜」

もう少し昇ろう…

そう思い、辺りを見回し、乗れそうなものを探した。

「…あ、あの箱、使えば…っ」

降りようとしたら、はバランスを崩した。

「えっ、やばっ…」

落ちる…!!

っ!!!」
「え!!」


ドタンッ!!
ガタガタガタガタガタガタガタガタ!!



埃がさらに舞い上がり、本やら箱やら、いろいろなものがの上に落ちた。

「い…た…」
「…大丈夫か?」
「…う、うん」

痛いのは背だけだった。

目の前には

「…こじゅうろうさんこそ…大丈夫?」
「ああ、…もう少し早く来れば良かったな…」

小十郎がの下敷きになっていた。

…起きれるか?」
「う、うん…待って…」

ガタガタと音を立てて、は背に乗ったガラクタをどけながら起き上がった。
小十郎も上半身を起こした。

「小十郎さん…大丈夫?」
「俺は平気だっ…つ…」

小十郎が足首を両手で支えた。

「こ、小十郎さん…」
「ああ…ちと、捻っただけだ」
「た、大変…!!待ってて!!今誰か呼んで…」
「ま、待て、!!」

小十郎がの手首を咄嗟に掴んだ。

「政宗様には言うな!!騒がなくても大丈夫だ。少し、中に飛び込んだ際に…」
「お、落ちる私を…飛び込んで捕まえてくれて…着地しようとしたら捻ったんでしょ!!私のせいで…」
「…」

…慌ててる割に随分冷静に物事見てるんだな…

「政宗様に心配かけるわけにはいかない」
「でも…」
が治療してくれ」
「え」

小十郎がにっと笑った。

「冷やして固定すればいい。そのくらい、できるだろ?」
「う、うん」
、この事は、俺との秘密な」
「…小十郎さん、待ってて…」


掴んでいた手を離すと、は走って城へ向かった。

小十郎はゆっくり外に出て草履を脱ぎ、怪我の様子をみた。

「大した怪我じゃねぇな」

腫れはしているが、安静にしていれば治るだろう。

最近は戦がないから安心だ。

「小十郎さん!!」

が袋と包帯と布と桶を持って現われた。

「やあ、ビニール袋があってさ…よかった…」
「び、びにぃる?」

が透明な袋に水を入れた。
「…」

口を縛り、小十郎の足首に当てた。

「…漏れないのか…すごいな」
「うん…冷たい?…大丈夫?」
「あぁ、気持ち良い」
「よかった」

がすごい下を向いている…

…」
「ごめんなさい」
「…ここは、いらなくなったもん置いておいたりしてたんだ。整理がなってなくてな…」
「私の、不注意…」
「片付けていなかった方も悪いんだ」

の頭をくしゃりと撫でた。

「…小十郎さん、これ持ってて…固定しちゃうから…」

が小十郎に袋を持たせた。

「あまり大袈裟にはしないでくれよ」
「うん…」

…これは

どうやったら元気になってくれるか…


…その…」

手際良く包帯で、足首を固定してくれているが…


「小十郎さん…」
、ええと、ひとまず、固定が終わったら、俺は部屋に行く。政宗様には、蔵は中ごちゃごちゃしているから見つけるには時間がかかると言ってあるから、は本を今度は気をつけて…」
「わ、わたし…」

きゅっと縛り終えると

は勢いよく立ち上がり、小十郎に手を差し出した

「た、立てますか?」
「…っと、ああ」

負傷した左足関節が動かない。
力、無さそうなのに、はこういうときはしっかりしてるな…

小十郎が感心していると、は真剣な顔をして小十郎の左に立って、様子を見ていた

「急ぎじゃないなら、私、小十郎さんを部屋に連れていきます!!」
「いや、そんな大事じゃ…」
「いいから!!安静が大事…!!」
「……」

、心配しすぎ…

そう思いながらも、ふっと笑った。

こりゃあ、下手には死ねねえな…






一緒に部屋に来ると、はまだ真剣な顔をして、小十郎の向かいに座った。

足を出してとに言われたので出すと、は自身の太腿に小十郎の足を乗せてまた水で冷やした。

「……(太腿の柔らかさと水の冷たさが…)」
「……」

は俯いている。

「…、俺は気にしていないし…これは俺の不注意でもあるから」
「小十郎さん!!」
「!?」

がばっと顔をあげた。
それは、何かを決断したような、強い意思を抱く表情で…

「私も漢です…!!」
「いや、女だろう」
「漢と書いて、オトコと読む…!!政宗さんに、言います」
「な、何をだ?」
「小十郎さんを、下さい、と…!!」

……………………………え?

「ええと、?」
「傷モノにした、責任は取りますっっ…!!それに、私、小十郎さんのこと、好きだもん!!」
「いや、それは嬉しいが…」
「政宗さーーーーーーん!!」
「おうおおおおい!!ー!!!!最後まで話は聞こうなー!!!!!!」

小十郎の足に水の入ったビニール袋を当て、布で縛り付けて丁寧に畳に下ろすと、は走って行ってしまった。

ー!!書物の読みすぎだー!!いや、書物を読むことは良いことだが、内容による…!!傷物って…それは男が女に…ってえ、ここで叫んでいても仕方ねえー!!」

小十郎は立ち上がり、政宗の部屋に向かった。





政宗の部屋に行くと、予想通りと言うべきか、中で二人がぎゃあぎゃあ騒いでいた。

「な、なんだってんだ…!!小十郎がお前にまんまとヤられたっていうのか!?ふざけんじゃねえぜ!!」
「政宗さん!!私、認知しますから…!!生まれたら、ちゃんと認知します!!」

「……………………」


何の話だ。


予想通りというか、予想以上だった。

「私にも、責任がありますから…」
「俺の小十郎は、そう簡単にはやれねえ!!」
「わ、私だって小十郎さん好きだもんー!!」
「んだとてめー!!どの程度だ!?どの程度だってんだ!?」

…な

……なんだこれは…

小十郎は今まで読んできたどの本にも載っていないこの状況に混乱していた。

「…小太郎」

すたっと小太郎が背後に現われた。

「とりあえず連れてきてくれ。俺の部屋に」
こくり


小太郎が消えると

部屋の中からあー!!という二人の声が聞こえた。






胡坐をかく小十郎の前にを正座させて、小十郎の部屋で説教体制。

「さて、何で呼び戻されたか判るか?」
「…小十郎さんは、やっぱり政宗さんの事が…」

涙目になるに、小十郎は頭を抱えた。

…」
「…でも、私もこれでも一所懸命…」
、あのなあ…」

仕方がないな、と

小十郎はにおいでおいでと手招きをして

近づいてきたの両腕を掴んで引き寄せて、強く抱きしめた。
は突然の事に驚いてしまい、小十郎の肩にしがみついた。

「…はい?」
は目をぱちぱちさせた。

…」
「こ、小十郎さん?」
「動けないか?」
「う、動けません」
「痛いか?」
「えと、少しだけ」
「そうか」
「こじゅ…、!!うえ!?」

小十郎がの背筋を、つ、と指でなぞった。
それと同時に、耳に静かに息を吹きかけた。

「ひえええ!!!!!小十郎さんはただでさえ声が良過ぎるのにそういうことやめてくださいよー!!」

慌てるが面白くてクスリと笑った後、真っ赤な耳たぶを甘噛みした。

「ぎゃああ!!」

力が抜けたのか、はぺたりと、小十郎の足の間に座り込んだ。

捻挫した患部には乗らないのは、さすがというか…

…まだ余裕なのか?

…」

今度は

「…え」

内股を着物の上からゆっくり撫でて…

「〜〜〜〜ギブアップです!!もうストップ!!終わりでお願いします…!!」

小十郎もちょっとほっとして、手をの頭に乗っけた。

「俺も男だ。判ったか?
「し、しってます…!!」
「なのに、責任取るだの、認知するだの…ちょっと冗談が過ぎるんじゃないか?」
「ご、ごめんなさい…」
の仕事は、俺の足を治す事だ。いいな?」
「はい!!」

これでは大人しくなってくれるだろう。

心配してくれるのは良いんだが、自分のすべき事を見失ってしまうのはまだまだ子供だな…

をゆっくり離すと、は小十郎の足に触れた。

水を替えてくれるのだろうかと、大人しくしていると

包帯していない足の指に


ちゅ


「………………」

今一瞬、の唇が…

?」
「服従の、サイン!!」
「…は?」

は何も無かったかのように水を替え始めた。

「い、今の、何だ?」
「小十郎さんの足が治るまで、私は小十郎さんの下僕です!!」

…どこで覚えるんだろう…こういうの…


「上目線で、すいませんでした!!今日からは、小十郎さんを治療させて頂くと言う謙虚な心で…」
違うー!!!そうじゃないー!!」


しばらく

ドM全開で小十郎のそばにいて

政宗にいろいろと勘違いされていた。

「てめー!!俺の小十郎に馴れ馴れしいんだよ!!」

「なんですとー!?いろいろ込み入った事情があるんですよ政宗さんー!!」

「何がだよ!!調子に乗りやがって…おい小十郎!!こっちに来い!!」

「……ええと(仕方ねえ…痛み堪えて行くか…。しかし腫れてて歩き方おかしくなっちまうな…)」

「悩んだー!!!小十郎が悩んだー!!うわあああああああ!!」
「政宗様ー!!!!!?」

今日も青葉城はうるさいです。










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甘さが…
ダイエットシュガーだぜ…(意味不明)
政宗が出張っててすいませ…

淳様、小十郎をリクしてくださった方、ありがとうございました!!
本は… 家臣の誰かが持ってきたと…(毎度のごとくテキトウ…