「小太郎ちゃん〜…小太郎ちゃんはどこ〜?」
「お前が知らねぇなら俺たちはもっと知らねぇよ」
「そっか〜?ん〜と、どうしようかな…」
「何をだ?」

政宗が机に向かっていた視線をに向けると、小さな子供と手を繋いでいた。

「…who…?」

オレンジ色の長い前髪で表情は見えないが、第一印象は小太郎に似ている、と感じられた。

「小太郎ちゃんの弟か子供だよ!!たぶん!!」
「ヤロ…ガキがいたのか…!?」
「………。」

子供は内心滝汗をかいていた。
まさかこんなことになるとは思わなかった。

自分のと繋がれたの温かい手を見つめ、小太郎は数刻前のことをもう一度思い返した。









「子供って見てるだけで癒されるよね―」

と一緒に町を歩いていたときのことだった。
は笑顔で小太郎にそう言い、楽しそうに走り回る子供達を目で追っていた。

「………。」

最近、は政宗や小十郎にこき使われている、ように小太郎には見えていた。
本人はやりたんだ、と言うから自分は無理に止める事は出来ない。
だから、
だから、が癒されるのなら、と、

小太郎は、城に帰った後、忍術で子供になり、の前に現れたのだった。

するとは目を輝かせ、

「ええ〜!?小太郎ちゃんの子供!?」
「!!!!!」






政宗はじろじろじろと子供になった小太郎を見ていた。
この男は絶対気づいているだろう、と小太郎は思った。
そしてそれは的中し、小声で話しかけてきた。

「…この姿でに近づいて…何考えてんだァ?膝枕…膝枕か!?」

それは今お前がしたいことだろう、と思った。

が勘違いした時点で戻ればいい話だったのに、彼女の視線はきらきらしていて、愛おしそうに自分を見つめたため、それは出来なかった。

「………。」

自分に子供を産ませるような相手が居るなんてに思われたくなかった。
けれど、の嬉しそうな顔を壊す事は自分の望みではない。

だから、小太郎はぎゅっとの手を握り、もし自分が風魔小太郎の子供だというなら、母親はってことになるんだよ、と、強く思うことで、自分の寂しい気持ちを抑えつけた。

「小太郎ジュニアちゃん」
「longだな。小太郎ジュニアでいいだろ。」
「お名前は?」
「………。」

ジュニアじゃなくて、ミニ小太郎です、と思った。
南蛮語をちょっと学習しつつある小太郎だった。

「風魔小太郎の子なら、風魔小太郎だろ。」
「え?」
「おっと…そいつは、立派に襲名してからか?」
「………。」

探るような政宗の視線は受け流した。

「……。」
「あらら?」

の足に、ぎゅうっとしがみついた。
そして頭をぐりぐりと擦り付ける。

「甘えん坊さん。」

にだけだよ。

「可愛いね。」

が癒されればいいなと思って

「小太郎ちゃんが来るまで、一緒に遊ぼうか。」

…本当は

子供と大人の境なんて知らないから

ただの子供になって甘えてみたかった。






「小太郎ジュニアちゃん、お絵かき好き?」
「……。」

部屋に戻ると、は筆と紙を取り出した。
絵など敵国城内の見取り図や標的の人相書きくらい。
楽しいものではない。
だからふるふると首を振った。

「好きじゃないか〜…」
「……。」
「ん?」

ぐいぐいと着物の裾を引き、の畳みについていた手の甲に筆を置く。

「私が書くの?」
「……。」こくり
「よし!!」
「!!」

は気合を入れて筆を握ると、小太郎を凝視した。
自分を書いてくれるらしい。

「〜〜〜〜〜…」
「動かないでね〜」
「………。」

小太郎は正座したまま動かずにいた。
しかしすぐに、の真剣な顔は笑顔に変わった。

「はい!!」
「!」

早いな、にはそんな才能が…と思ったら、デフォルメされた自分だった。
顔だけしか書かれていない。

「似てる?」
「……。」

こくりと素直に頷いた。

「あ」

の手から筆を取って、自分も紙に向かう。

「……。」
「あれれ〜?」
「…………。」
「それ、私?」

が声をワントーン高くしてそういうと、に見て欲しくて書いたのに、顔が赤くなる。

「……。」

人の顔を可愛く描きたいと思ったのは初めてだ。

楽しい、と感じたことも。

「じゃあね、じゃあね、私今度は政宗さん書くね〜」
「………。」








小太郎は横になるの髪を優しく撫でた。
今日は気候が穏やかというのもあり、はお絵かきの途中に寝てしまった。
子供になった自分より、のほうがよっぽど子供だ。

「……。」

少しくらいは、自分に癒されて気が緩んだという理由もあるならいいなあと思った。

そして、もういいだろうと、術を解き、元の姿に戻る。

「……。」

もちろん手も戻り、の顔を半分覆えるほどになる。

やはり自分はこのサイズがいいと思う。

を守る手は、きっと大きいものがいい。

「……ん?」

耳に触れると、がぴくりと反応した。

「…おかえり…小太郎ちゃん…」

寝ぼけ眼で、自分を見上げる。

「…あれ?小太郎ジュニアちゃん…は?お家に帰ったの?」

きょろきょろと周囲を見渡すは、残念そうな顔だった。

背に手をあて、起き上がらせると、の耳元に口を寄せた。

『好きに名を呼べばいい』
「?…え?なに…?」

『俺と、の子供だったんだよ、きっと。』
「………は!?」

そんな事実はない!!!と叫びだすに、どんな事実?と視線で問いかければ、真っ赤な顔で視線を逸らす。

また子供になって現れたら、はきっとうろたえてしまうだろう。

そんなの耳元で、母さん、と囁いて

またこの人を真っ赤にさせてやろうと、意地の悪いことを考えた。
















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小太郎がもし子供になっちゃったら〜というリクで書かせていただきました!!
不可抗力でなく忍術でってことにしてみましたらすんごいまったりしてしまいました…!!

天海友姫さま、ありがとうございました!!