ザク、ザク、と鍬で土を掘り起こす。

大方雑草を取り除いたところで身体を起こし、汗を拭いた。

「…こんなもんか。」

満足したところで、畑の片隅に目を向けた。

細い木で簡単に柵が作られている。

「お…」

近寄って覗くと、小さな芽が出ていた。

に言ってやろうか…いや…」

自分で発見して、小十郎さん、芽が出たよ!!と嬉しそうに言うが見たいから、黙っておこう。

いつだったか、何か新しい野菜の栽培に挑戦しようと種を注文したのだが、その中に覚えが無い小さな種が入っていた。
それをにあげると、嬉しそうにして、小十郎さんの畑で育てていい?と問われたので、駄目ともいえないし、言う理由も無かった。

「散歩に行かないか?と誘って、さりげなくここに来るか…。」

湯を浴びてさっぱりしてからそうしようと、畑を後にした。















「小十郎さんとお散歩久しぶりー」
「最近農作業で忙しかったからな…」
「政宗さんも構ってあげないと可哀想よー?」

そんな他愛も無い話をしながら、さりげなく畑に近づいていった。

「あ、畑ー」
「今日はまだ畑の様子見て無くてな…ちょっと寄っていっていいか?」
「うん。あ、そうだ!!私のやつも見に行かなきゃ!!」
「ちゃんと世話してるか?」
「してるよー。」
「はは、そうかそう…か?」

畑にゆっくり近づくと、何か違和感を感じた。

緑色の蔓が見えた。

あんなところにそんなものあっただろうか?

「小太郎ちゃんが、肥料持って来てくれてね、使ってみてアピール凄まじかったから、それあげてみてさ…」
「へえ…え…?」

その蔓は、の作った柵の中から飛び出していた。

いや、おかしい。

さっき芽が出たばかりじゃないか。

「あれー!?」

流石にも驚いたらしく、駆け寄っていった。


…小太郎…一体どこの肥料を持ってきたんだ…?

「これ雑草ー?あれー?違うなー…根っこ根っこ…」

蔓をかき分け、そして手の動きが止まると、は唇を尖らせながら後ろを振り返った。

「…植えたやつだ…もうこんなに成長して…」
「お、おかしい!!おかしいぞ!!早すぎる!!!」
「う、うん、そうだよね…え、わ…!!!」

バタン!!と大きく蔓が動いた。

ありえない、と思ってしまい、駆け寄ろうとした足が止まってしまった。

「わあ怖い!!!!何々!?どうなってるの!?」
!!今助ける!!」
「小十郎さんー!!足掴まれたー!!!!」
!!」

蔓がグググと成長し、の腕や腰に絡みついた。

「わああああああ!!!恥ずかしいいいいいい!!!!!」
「おおおお卑猥だぞ!!!!こんな卑猥植物あれだな!?松永の差し金だな!?」
「松永さんの馬鹿ー!!!!ってか小十郎さん早く助けてー!!!」
「…あ、いや、ちょっと服が破けたくらいが助け時じゃないか?」
「小十郎さんの卑猥ー!!!!!!!」

卑猥キャラは御免だ!!!!と叫び、今度こそ駆け寄る。

小十郎にも襲い掛かる蔓を素手で引きちぎり、の腕を掴む。

「服は大丈夫か!?」
「…残念ながら大丈夫ですよ〜…」
「そ、そんな嫌味っぽく言うな…!」

蔓から逃れ、距離を置いて、を下ろす。
酷く驚いてしまっているらしく、そのままぺたりと座り込んでしまった。

植物はさらに成長し、もうこれは潰すしかないと思った。

、何か武器になるようなもの…」

が首を左右に振り、捜そうとしたとき、上から何かが植物に向かって降って来た。

植物のど真ん中に着地し、素早い動きで蔓を切り刻む。

「…小太郎ちゃん…!!」
「小太郎…」
「………。」

振り返った小太郎は

まさかこんなことになるとは思わなかったんだ、という顔を明らかにしていた。

「〜〜〜〜〜!!!!」
「小太郎ちゃあああん!!私怒ってないからねー!!!」

夕餉までには戻ってくるんだよー!!!と、すぐに飛び上がってどこかに行ってしまった小太郎に向けて叫んだ。

「…松永さんに、だまされたかな?」
「だろうな…」

大丈夫か?とに手を差し伸べる。

「びっくりしたけど、大丈夫…。小十郎さんの畑が荒れちゃったね。」
「すぐに片付くさ。」

並んで、静かになった蔓に近づく。

「…?」
「…何か、あるね?」

蔓の根元に、茶色い固形物が見える。

小十郎が掘り出すと、芋のような形をしていた。

「…今晩の、夕食だねー」
「本気か!?」

襲われはしたが、としては栽培した人間としての気持ちはまだまだあるらしい。
それは小十郎にも良く判る。

「…そうだな…。しかし毒があったらどうしような…」
「とりあえず火を通して、ゴキブリ君にでも一切れ食べてもらおうか。」
「大丈夫だったら、政宗様も喜んで食べてくれるだろう。」
「うん!!小太郎ちゃんにも、小太郎ちゃんの肥料のおかげで、こんなに美味しいものが出来たんだよって、言ってあげられる!!」
「良いことだらけだな。」


小十郎は着物が汚れてしまったを気遣うように、着ていた上着を着せてあげた。

「本当…」

実は、は気付いていないが、背中の部分がわずかに破れていたのだった。

下着がチラリズムだ。

「…政宗様と小太郎には…良いことだらけだな…」

あくまで自分はカウントしない小十郎だった。




















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小十郎で、『珍しい野菜ができた!!的なほのぼの』というリクを頂きました!!
これほ…ほのぼの…!?
ほのぼの…の、ジャンルに入れてください…!!
リク、本当にありがとうございました!!