今年は豊作だったといつきから手紙をもらった。
そしてそれを祝って祭りを執り行うらしい。

私に手伝えることあるかな?と手紙を送ると

ぜひ手伝ってほしいだ…!!と返事がきたので、農村に行くことになった。





といつきは民家で一緒にいた。

「…いつきさん…」
「何か質問か?」
「いや、あの…」

その民家の目の前には手作りの大きなステージが用意されていた。

は台本通りに喋ってくれれば大丈夫だ!!」

いつきはウサギのような格好をして、早く祭りが始まらないかとわくわくしていた。

「…私なんかが…こんな…」
じゃなきゃ無理だ…!!なら成功する…!!信じてけろ…!!」
「……」
このウサギさんには逆らえないと、純真な目を見て思った。


おおおと男達の叫び声が聞こえてきた。

「いつきちゃん!ちゃん!出番だべ!!」
農民の1人が二人を呼びにきた。

「わかっただ!!!!いくだよ!!」
「は―い…」

やはりやる気のないだった。




ステージにいつきが立つと、農民のいつきコールが始まった。

「みんな―!!今年も頑張ってくれてありがとうな!!」
「いつきちゃぁぁぁん!!」
「いつきちゃんの為なら何でもするだ―!!」

「……」
は隅からステージを見ながら秋葉原に居る気がしていた。

「今日は、とっても素敵なお客さんがきてるだよ!!紹介するべ!!」

いつきが大きく息を吸い込むと

農民の皆も大きく息を吸って

ー!!!!!!!!!!!!
ちゃああああああああん!!!!!
「……」
打ち合わせはしていたようだ。

呼ばれて出ていかないわけにはいかないので、仕方なくはステージに立った。
何とか笑顔になって

「はーい!!皆!!呼んでくれてありがとう!!私とっても嬉しい!!」

は自分の無理やりワントーン高くした声に吐きそうになりそうなのを我慢した。

「うわああああ!!ちゃんかわええー!!!!!!」
ちゃんー!!いつきちゃんと並んでけろー!!!!」
「あ、あはは…」

はいつきに貰った犬の衣装を着ていた。

犬耳に犬の尻尾と、犬のような手足で皆の前に立っていた。

!!頑張れ!!緊張しねぇでええだよ!!」
「え、あーはい、えっと」

はカンペ見ながら

「……」
汗をだらだら流しながら

「…が、頑張った皆の事、癒してあげたい!!…ご、ゴフ!!」
!!血を吐かないでけろ!!」
「うおおおおお!!ちゃんに癒されてえだー!!!」

「私、皆のために今日は働きたいの!!お仕事頂戴!!ご主人様!!ゲハァ!!!!!」
ー!!!!!!!頑張ってけろー!!!日々の仕事の活力を増やして村の活気を盛んにしなきゃならねえだ…!!」
ちゃんー!!!!!!おらのワンちゃんになってけろー!!!!」

はぶっ倒れてぴくぴくしているが、農民はそんなことお構い無しだ。






はそれだけの登場にしてもらい、裏で休ませてもらった。

「だめだよ私そんなキャラ無理だよ…」

ぶつぶつ言いながら茶を飲んでいた。

「そんなことないだ!!ありがとな!!!!」
「いつき…」

演説が終わったのか、ひょこっといつきが顔を出した。

「今は何してるの?」
「今年の米の出来高について報告会だ!!」
「……」
あれー…まともな事してんじゃん…
私恥ずかしくない?

「…」

恥ずかしくなり、は顔を真っ赤にした。

、お昼からは家を回るだ。大丈夫け?」
「え…家?」
「今日はみんな仕事をお休みにしてる!!一軒一軒、おらとで回って、皆を癒してあげるだ!!」
「……」

はカンペをもう一度見た。

「…これ…」
「ん?」
「有言実行ってこと…?」
「もちろんだ!!」

「………」
はとてつもなく奥州が愛おしく感じた。



農村を歩くと、あらゆるところからいつきの名前やの名前を呼ぶ声がした。

はとりあえずにっこり笑っていた。

不安で仕方なくて、いつきと手を繋いで歩いたら余計声が増えた。



「最初は、ここだ!!こんにちは!!」

がらがらといつきが戸を開けると、一人、体格のいい男が居た。

「こんにちは…」
「よ、ようこそ…!!」
「稲刈りで一番頑張ってくれただよな!!なあ、何かして欲しい事あるか?」
「ほ、本当にいいだか…!?」
「もちろんだ!!」
「なら、あの…」

「………」

は、凄まじい勢いで殺気を発し、空気読めよ?と目で訴えた。

いやらしいこと言ったら蹴る…!!

「…おらの母ちゃんに、おいしい料理、作ってくれねえかな…」
「……」

は、一気に懺悔したい気持ちになった。

「病気でいま臥せてるだ…!!でもおら、料理上手くねえ…!!」
「ええだよ!!な!?!!」
「う、うん…!!」

は台所を借りて、味噌汁と、お茶漬けを作ってみた。

「ええ匂いだ…」
「ありがとうございます…」
病気のお母さんは上体を起こして、息子さんに食べさせて貰った。

「あの、お身体は…」
「少し熱がでた位なんですよ…この子大袈裟で…」
「そうなんですか…よかった…!!お大事に…」

はこんな衣装を着ているが、この調子なら何とかなると思った。

「いつき!!私がんばる!!」
ー!!おらもがんばるからな!!」

やる気を出して、次のおうちへ。






その頃奥州では、小十郎と小太郎が碁を打っていた。

も友達が増えて、小太郎としては複雑か?」
「……」

の話をしながらの勝負だった。

小太郎は夕方を迎えに行くつもりで、それ以外は暇だった。

「小太郎は、なかなか先を読むのが上手いな」

ぱち

「……」

ぱち

「…小太郎。政宗様に、本格的に仕える気はねぇか?もちろん、から離れて、というわけではない。」

ぱち

「……」

ぱち

と会える時間は減るかもしれないが、の護衛という職務はきちんとこなせるように手配する」

ぱち

「……」

ぱち

勝負はまだまだ終わらない。






意気揚々と次の家に向かっただったが


ちゃん…ちょっと首を傾げた感じて…あああそうだべ!!さすがだべ!!かわええ…!!」
「…えーと」

座り込んでポーズをとらされていた。

…最初はよかったのになぁ…

を絵に描きたいと言われ、先ほどからずっと同じ格好で疲れてきた。

「…まだですか?」
「そろそろ次行かねえと…」

いつきも太陽の位置を気にしていた。

「もう少しで大まかに描けるだ…そしたら…」
「もう待てねぇだ!!」

バアンと戸が開き、農民が数人入ってきた。

「え…」
「おらはちゃんに肩もみして欲しいだ!!」
「おらはいつきちゃんといっしょに歌って欲しい!!」

怒鳴りながらの元に近づいてきて

「…こ、怖いんですが…」

皆、仕事で鍛えた身体では絶対襲われるとおもった。

「皆!!待って!!順番にちゃんと回る…」
「いつきちゃんー!!でもこいつに時間かけすぎだー!!」
ちゃん!!うちに来てけろ!!」
「!!」
いきなりぐいっと引っ張られて

「…か、帰りたい…!!」

皆の怒った顔が怖くて

「…小太郎ちゃんー…!!」

早く迎えに来てー!!と叫ぼうとした瞬間

「いて!!!!」
「………」
「…え!?」

小太郎が現れ、を引っ張っていた腕を捻りあげていた。

「忍の兄ちゃん…!!す、すまねえだ…をこんな」
「……」
小太郎がちらりといつきを見た。
いつきがびくりと怯えてしまった。

「あ、いつき、小太郎ちゃん怒ってないよ…!!私のこと迎えに来てくれただけ…!!ね?」
「…」こくり
「そ、そうだか…?でもごめんな…!!お詫びに米送るから…」
「気にしなくて良いよ、いつき…。私こそなかなかこなせなくてごめん…」
…」

気がつくと農民の皆がいつきと同様に申し訳ない顔をに向けていた。

ちゃんはお客さんなのにごめんな…!!」
「すまねえ…!!調子に乗っちまっただ…!!」
「みんな…」

皆のことを若干怖がってしまったが、そう言われては逆に謝りたくなってくる。

「いいんだよ…!!私楽しかったよ…!!」
「……」
「あ」

小太郎がをひょいと抱き上げた。

帰るだか?」

小太郎の様子を見ると、帰る気満々のようだ。
ヤダと言っても無理なようで

「…また来るよ、いつき。途中で帰ってごめん…」
「何いってるだ!!は頑張ってくれただ!!ありがとうな!!」

「……」

小太郎が地を蹴り、飛び上がった。

「バイバイ!!いつき!!」
「またなー!!!!」

いつき達が見えなくなると、は小太郎の首に腕を回してにこりと笑った。

「小太郎ちゃん来てくれてありがとねー…」
「……」

「いや、そんな危険な人たちだとは思ってないけど、なんかあの空気はねー…」
「……」

「ん?」
小太郎がにこりと笑って

の護衛は疲れる仕事だ』

「え!?え!?」

は嫌われたかと不安になってしまったが

『…だから、それ以外の仕事はしたくない』

「……」

はきょとんとして

「………」

だんだん照れてきて

「…給料あげれてないよ私は…」
『構わない。そんなのは何とかなる』
「…即答するなよ…」




奥州に着くと小十郎と政宗が二人を待っていてくれた。

「驚いたぞ…いきなり小太郎が消えてしまったから…」
に何かあったのかと思ったじゃねえか」

小太郎ちゃん、何かを察してきてくれたのかな…

そう思うと、自分と小太郎が何かで繋がっている気がして嬉しい。

「ごめんなさい。でも何も無いよ。私、大丈夫だよ」
にこりと笑ったが

「…いや、その格好で何も無いはないだろ…」
「…え?……ああああ!!!!!」

政宗に引かれた事は言うまでもない。











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いつき達に獲らているとろを小太郎が乱入!ということで
…あれ、小太郎の出番が…(おいー

いつきを久々に書けて嬉しくなってなんかもういつき夢…す、すいません…!!
リクありがとうございました!!