***オウムな話***





日が暮れる前に、奥州に着いた。

『つ、疲れた…』

小十郎の広い畑が見えたので、とりあえず案山子に止まって休むことにした。

「…ん?」
『あ、小十郎さん』

丁度、帰り支度をしている小十郎と目が合った。

「見ねえ鳥だな…腹減ってんのか?」
『あ、お腹すいてるかも…』

ピイピイと首を縦に振ると、小十郎はびっくりした。

「言葉がわかるのか?」
「ピイー」
「そうか、賢いな…」

小十郎が大根の葉を差し出してくれたので、遠慮なくパクパクと頂いた。

相変わらず美味しい。

「何してんだ、小十郎。味をしめたらどうすんだ?」
「政宗様」
呆れた顔をした政宗が腕を組んでこちらに寄ってきた。

「しかも南国の鳥?元親のか?」
「ピイピイ」
ふるふると首を横に振った。

「野生のやつがこんな遠くまで飛んできたのか?」
「ピイ」
こくこくと首を縦に振った。

「NO…俺は信じられん」
「ピ!?」
「…政宗様、俺は政宗様の言葉とこの鳥の仕草がちゃんと合ってるのが信じられません」

ha!!と政宗が笑った。

「…こんなに賢いんだ…誰のペットだ?敵状視察か?」
「ピイ!?」
まさかそんな風に感じられるとは思わなかった。


突然、政宗がの首のバンダナを掴んだ。
「ピ、ピイ!!ピイ!!」
「政宗様…」
「お名前は?」
強引に取って、隅々まで調べた。

「政宗様、この鳥、怪我してますし…」
「誰の手当てだよ」
「ピイー…」

政宗は鳥が嫌いではないはずだ…

懸命に悲しそうな声で鳴いてみた。

「…う」
「政宗様、可哀想ではないですか…」
「…仕方ねえな…」

バンダナを同じように巻いてくれたので、は政宗の肩に飛び乗った。

「懐いてますな」
「…だな」

頭をがしがし掻いて、政宗はを肩に乗せたまま、城に戻った。






「ピイー」
「鳴くな」

政宗は部屋で政務を始めてしまったが、胡坐をかいたその足の上に自分を乗せてくれていた。

は政宗が冷たいのでしょんぼりしてしまった。


…可愛がってくれるかもーとか調子に乗った罰かな…

でも近くに置いてくれているので、それだけで満足することにした。


障子がすっと開き、小十郎が盆を持って入ってきた。
「政宗様、茶と水です」
「水…?」
「ピイ」

は政宗の膝から降りて、小十郎の足元に寄った。

「どうぞ」
「ピイ」

一生懸命舌を動かし、喉を潤した。

飲み終わったら、また政宗の元に戻った。

「……」
「はは、可愛らしい」
「か、勝手に来るんだぜ、こいつ…」
「ピ!?」

あ、ダメだったかな!?と思って急いで降りようとすると

「…かまわねぇ」
優しく手を添えて制してくれた。

「ピイ…」

これはこれで、凄くいいと感じてしまった。


「…寝る前に、包帯を代えてあげましょうね」
「そうだな。…たく、はどこ行ってんだよ。こういうときにいねぇんだからよ」
「ぴ、ピイ…」

ここに居ます…すいません…





政宗たちが夕餉を終えると、小十郎が部屋にやってきて包帯を代えてくれた。

「…銃創か?」
「ピイ」
「痛かっただろうな、治るまでここに居な」

優しく指先で頭を撫でてくれて、は嬉しかった。

ぎしぎしと外から音がした。

「おい、小十郎、俺はもう寝る」
「はいはい。終わりましたので俺は失礼しますよ」
政宗が入ってくると、小十郎は笑って出て行った。

「…寝るぞ」
「ピイ?」
政宗はなぜかをひょいと抱き上げた。

どこに連れて行かれるのかと思ったら

「ピ!?」

政宗の布団の中だ。


い、いいいいい一緒に寝るんですか!?


きょろきょろしてしまったが、政宗はそんな様子の自分にも構わず、自分に手を添えて寝てしまった。

「…ピ…」


…な、なんだかんだで、可愛がってくれたよ…!!!


政宗の寝顔をみながら、感動してしまった。


鳥にまで素直じゃないとはこの人…ひねくれだなぁ…!!!


笑ったら、ピチチと鳴いてしまった。

政宗は目を開けず、反応もしないので爆睡してしまったようだ。

「……」

寝相が変わり、から手を離したので、は立ち上がった。


明日になったら戻っちゃうから…


なんだか違う視点から皆を見れた気がして、楽しかった。


嘴で頑張って戸を微かに開け、部屋から出て行った。








「……………………はあ」
「………………………」

朝からずっと、政宗はため息を吐いていた。

「ど、どうしたの、政宗さん…」

は隣でその様子を見ながら冷や汗をかいた。

「…鳥がよ、いなくなった…」
…ご、ごめん…

「…鳥?」
「ああ…見せてやりたかったぜ…可愛い、綺麗な白い鳥でよ…」
「へ、へえ…」
あ、ありがとうございます…



政宗がぼーっとしてしまったので、は小十郎に会いに行く事にした。

「おはようございます、小十郎さん」
「おはよう、…………はあ」
「小十郎さんまで!!!!!!」

笑顔で挨拶してくれたのに、いきなり肩を落としてしまった。

「傷が治るまで居ていいって言ったのに…」
「小十郎さん、あの、鳥…だし…」
は見てないから判らないんだ。あの子は普通の鳥とは違ってな…」

…小十郎はそのまま語り始めてしまった。


…あ、あたし、

鳥、のほうが、いいのかな…


賢く、感情表現もしっかり出来て…と凄く褒めてくれる小十郎に、申し訳なさを感じてしまった。

も、戻ってすいません…


「鳥かあ…、………………はあ…………」

そして、ため息がうつってしまった。







武田でも尾張でも四国でも

あの子もう来てくれないのかなあ……………はあ

というため息が吐かれていることまでは、は判らなかった。



















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お礼なのに自己満夢ですいません…!!
ここまで読んで下さりありがとうございました!!

予定では、動物になってバサラキャラたちに可愛がってもらおうな話書くつもりだったんです大きく脱線しました…