***オウムな話***





怪我のせいで飛行速度が落ちた。

けど明日になる前にとにかく誰か知ってる人のところへ行かないと…

『…慶次でもふらふらしてないかなあ…』

地上を見るが、見つかるわけがない。

カァ
『!!』

前方から凄い勢いで烏が飛んできた。

『危ない!!!』
『トロくせェ鳥だな!!!!!』
『なっ…!!』

に突っ込んでくると思ったら、いきなり方向転換し、の回りをぐるっと一周した。

『…な、なに!!私急いでるんですよ!!』
『俺には知ったこっちゃあねえよ…てめェ、南国の鳥かあ?』
『…関係ないでしょ!!』
『でもなんか、会った事あるような…?』

鳥でもナンパってすんのか…と驚いていると、じっとを見ていた烏が急に前方を見た。

『あ、旦那ァ』
『旦那?あなた烏なのに人に飼われてるの?』
『烏なのにってェなんだい。どーだっていいじゃねえか』

ばさあ!!と大きく羽を羽ばたかせて先に行ってしまったので、はついていった。

興味があったからだったが…

着いたのは高い木の上で

『旦那ァ、仕事ですかァ?』
「おかえり。ちょっと遠出するから一緒においで」
『ええ、ええ、もちろんついていきますぜ』

烏が止まったのは、佐助の肩だった。

『佐助の烏さんだったんだ…』
「…ん?」
佐助は向かいの木に止まったを見つめた。

「元親さんとこの…じゃないか。似てるけど」
『おいてめえ、うちの旦那に惚れんなよな!!』
『なんなのよあんた!!』

烏の"旦那"は明らかに佐助の口調が移ったものだろう。

佐助、烏にすっごい好かれてるね…

一瞬ほわんとした気分になったが、烏はあっちいけ!!邪魔なんだよ!!と怒鳴るので、人間に戻ったら覚悟しろこのやろう…と思った。

「…お友達か?」
『な!?ち、違いますぜ!!誰があんな真っ白…!!』
『白いのは仕方ないじゃん!!なによ真っ黒!!!!』

ピイピイカアカア鳴き合う二匹を見て、佐助は笑った。

ひょいっと佐助は、のいる木に飛び乗った。

「女の子かな?」
「ピイ」
「いじめたら可哀想だろ?」

佐助がに向かって手を伸ばしたので、は飛んで、それに止まった。

「可愛い子だ。なあ、気にかけて欲しいからって、いじめたらダメだろう?」
『え』
『違います!!!こいつ、ふらふらして、危なっかしい…』
『…あ、ふらふらしてたの、心配してくれてたんだ?』
『ちっげええええええ!!!!!!!!』

慌ててる烏がなんだか可愛い。

仕方ねぇ、暴言も許してやるかとが余裕をもっていると

「ぴ?」
「大人しくしてね」

佐助がを片手で持った。

胡坐をかいて座り込んで、を膝の上に。

包帯をするすると取った。

「撃たれたのか。包帯替えてあげる。」
「ピイ…」
佐助…ありがとう…

『な、なんだよ、撃たれてたのかよ…おい、大丈夫か?』

烏もを佐助の肩から見下ろした。

心配してくれてる。

『…ありがと』
『ばっ!!!け、怪我したら、そう声かけんの当然だろうが!!!!』
『な、なによう…』
「あーあー、動かないのー」

頭を撫でて貰ってしまったので、仕方なく大人しく、佐助と烏を見上げた。

「…やたらという事聞く鳥だなあ…よし、いい子には俺様特製の薬も塗ったげる」
『佐助、ありがと!!』
『感謝しやがれ!!』
『あんたいちいちうるさい!!!!』

佐助は、また鳴き合う二匹を不思議そうに見つめた。

「…包帯巻いてあるってことは飼われてるんだよね」
「ピイ」
「ってことでこの子放しちゃうけど、いい?」
『ななななんで俺に聞くんですか旦那ァ!!!!』

にこにこする佐助の肩から、烏は近くの木に飛んだ。

『て、てめ!!さっさと帰りな!!!』
『…うん、帰るね。ばいばい』
『な、なんでんなに寂しそうに…!!!』

烏はそわそわして

『ま、また会えば、いいじゃねえか』
『あら』
『あらじゃねえ!!!!こ、ここら辺は俺の領地なんだ!!』
『あらあら』
『だからあら、じゃねえって!!!!!!』

佐助はまた鳴き出した烏をなだめたあと、包帯を結んだ。
「はい、巻き終ったよ。きつくないかな?」
「ピイピイ」

は羽を動かして大丈夫だよとアピールした。

「はは、可愛いな」
「ピ」

佐助に優しく抱っこされてしまった。

…一日でこんなに可愛いって言われる日って、

めったにないだろ…!!!!

ど、動物の特権だ…!!!

『旦那っ…なんかその鳥、何か企んで…』
「ピイー」
「…?ん?何だ?」

だったらさ、だったらさ、

奥州行ったら

政宗さんも可愛がってくれるんじゃね!?


政宗が優しい笑みで自分を撫でたり抱っこしてくれるところを想像した。

…お、おお…!!
素敵かもな!!!!!!!

「ピイピイ」
佐助を見上げてありがとうありがとうと言った。
「…?お礼言ってるのかな?賢いな…どういたしまして」

佐助がのお腹をもって、腕を挙げて

「ほら」
上に投げてくれた。

ばたばたばたと羽を動かして、体勢が整ったら、もう一度佐助と佐助の烏を見て、ピイーと鳴いた。



「…変な鳥」
「カァ」

「また会えるといいな」
「カァ!?」

あの鳥と結ばれたらどんな子ができんだろなあ?と自分に言う佐助に、烏はカアカア!!!と必死に鳴いた。

『だれがあんなの!!何気になってんですかい!!!!早く仕事しましょうよ!!!!!!!!』














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佐助の烏、気品ある奴にしようかとおもいましたが
どちらかといえばかすがの鳥のほうが気品がありそうだと出番がないのに気を使ってこんなキャラになった。
捏造甚だしい…