***オウムな話***





山の上を飛んでいると、だんだん疲れてきた。

『ちょっと休もう』

木の枝に止まり、周囲を見渡す。

『……』

高いけど、怖くない。

『今どの辺なのか』

ドン!!!!!!!

な、と言おうとしたら

隣の木に

銃弾…?

下を見ると

なんか威圧感…


「外したわ…」
『…え』
「信長様ァ、あれ鷹じゃないですよ?」
「気に入った。余はあれを持ち帰る。」
「では、蘭丸もあれをねらいます!!」

信長様アアアアアアアアアアアア!!!!!!!

ちょうど鷹狩りに来ていたようだ…

『やばい!!』

蘭丸も矢で自分に狙いを定めてる。

急いで飛び立った。



「逃がさぬ…」
『!!!』

弾丸が自分の胸を掠めた。

『うわ…』

びっくりして、混乱しながらも羽を必死に動かしたが

意識を失ってしまった。






『…う』
起きるとなにか良い匂いがした。

目を開けると誰かの膝の上…

「起きたかしら?」
「ぴ、ピイ、ピイ」
「元気そうね、よかった…」

上を見あげると

「…上総介様が、白い珍しい鳥を逃したと…あなたの事ね…?大丈夫よ…こんなに綺麗な羽…」

『…濃姫様…』

体には包帯が巻かれてあった。
優しく撫でてくれた。

守ってくれたんだ…!!

『あ、ありがとうございます!!』
「喉が渇いたのかしら?」

お礼を言ったつもりだが、そうとらえた濃姫は、水を汲みに行ってしまった。

『濃姫さまに、羽、褒められた…』

とっても喜んでいると

カタン

『…?』

襖が少し開き

鋭い眼光がこっちを見て

「…おいしそうな鳥…」

明智イイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!

しかも鎌をしっかり持っていた。

「ピーピー!!!!」
「丸焼きにして差し上げます」

部屋を必死に逃げ回った。
明智の舌なめずりは本当に怖い…!!!

「光秀!!!!何してるの!!!!!!!!」

濃姫様が急いで戻って、怒鳴ってくれた。

「帰蝶、だめじゃないですか…これ、拾ったんでしょう?信長公に隠し事なんて…」
「…可哀想だったのよ」
「…お優しいですね」
「…ピ…」

濃姫様が水を置いてくれたので、ありがたく頂いて

自分がこれ以上ここにいたら迷惑かなと思って

「ピイピイ」
「あら」
「おや」

褒めてくれた羽を、一枚くちばしでとって、

濃姫様の足元に置いて、もう一度鳴いた。

「くれるの?」
「ピイ」
「恩返しですか?賢い鳥だ…」

そしてそのまま、飛んでみた。

『あ、飛べる…!!薬も塗ってくれたのかな…?』

信長様にも蘭丸にも見つからないように、北へと飛んだ。




「よかったですねえ、帰蝶」
「…光秀、あなたにあげるわ」
「おや?いたいいたい」

濃姫は光秀の長い髪を引っ張り、羽を髪で縛った。

「あなたも、たまには綺麗なものを見ることも必要でしょう?それに、その白…」

光秀の髪の色と似ていて

「あなたを思い出すわ」
「…私を連想させるものを、助けたんですか?」

その言葉に一瞬ぴたっと止まって

「私もおかしいわね」
「…そうですねえ。しかも綺麗だなんて」

髪がちぎれないように、羽を取って

「でも、不思議と私にも、これは綺麗だと思いますよ。私の色とは違うようです。」

光秀がにっこり笑った。

「…あら、そうかしら?」
濃姫も笑った。
光秀はその笑顔にきょとんとしてしまった。

「…?帰蝶?」
「…ふふ、ごめんなさいね、今日の私は本当に変」
「…変なのは、帰蝶じゃないでしょう」
「そうね…」

濃姫も光秀も外を見て

「…変な鳥、だったわね」
「ええ。これ、部屋に飾っておきますね…」

そう、呟いた。


あの小さな命、無くならなくてよかったと思った。













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濃姫さまと明智の話が書きたかった話。
この二人…とてもいいとおもいます…