「ほら、ふかふかだぞ?布団」

小十郎がから離れて布団に入り、手招きをした。

はゆっくり小十郎に近付いたが、すぐにピタリと止まった。

「こ、こんな、寝間着で寝ていいのか?」

小十郎は笑った。

他に気にする事があるだろうに…

「立派な寝間着じゃないか。似合ってる」

「…そ、そっか?」


はいつも青やら紫の着物を着ることが多かったが、寝間着は淡い桃色だった。


はまたゆっくり近付いて

布団に入ろうとした時にピタリと止まって

「…あ!!小十郎!!何かやましい事しないだろうな!?」

今頃気付くが可愛らしかった。

「して欲しいか?」
「な、何言ってやがる…!!冗談じゃない!!」
がびっくりして後退した。

「冗談だ。、ほら」
「う…」

がおずおずと布団に入った。

小十郎も隣りに並んで寝ころんだ。

「ふかふかだな―…」
「あぁ」
「気持ちいいな―…」
「だろ?」
「小十郎の匂いがする―…」
「…」

お、俺の匂いがするって…幸せそうに言わないでくれるかな…


小十郎はの事だから、臭ェよ!!とか言うかと身構えたが、はうとうとするばかりだった。

「こじゅ―ろ―…」
「ん?」
「この寝間着な―…お母さんが作ってくれたものなんだ―…」
「そうなのか…」
「似合ってるって言ってくれて嬉しかったよ―…ありがと―…」
…」

小十郎がを見つめた。
それに気付いたは、なんだよと恥ずかしそうにしていた。

可愛いと思ってしまった。

思ってしまったら仕方が無い。

うん。

「…若君は」
「梵?」
「俺と…が仲良しだと…嬉しいそうだ」
「可愛いね、梵は」
「あぁ…」

小十郎はに引っ付いた。

「…お、おい?」
「仲良しに、なろう」
「これ、この状態は、仲良しな状態なのか?」
「そうだ…」

小十郎はの方に体を向けると、今度は抱き締めた。

「これも、仲良しなのか!?」
「仲良しじゃなきゃ出来ない事だ」
「そうか…な、仲良しだからか…こじゅろ…あの…何だか顔が熱くなってきたぞ?仲良ししてるからか?」
「そうだな…」
「う…うわ、小十郎…恥ずかしいんだが…」

って…

刀馬鹿だとは思ってたが

本当に刀馬鹿で

こういう知識、あまり無い?



「…って」
「なに?」
「子供はどうやって作るか…本当に知ってるか?」

言った後で、自分は何を聞いているんだろうと後悔した。
小十郎は助平だ!!と騒がれる…

「知ってる!!大地の恵みと仏様の慈愛によってできるんだ!!」


えっ!!

今この子良い事言ったね!!

でも違うよね!?何その抽象的で漠然とした意見!!

この子の両親、何教えてんの!?


「刀も同じだ。職人の磨かれた腕と、気候、材料、それだけじゃない。仏様がお与えくださる天性も作成には重要となる…」

あ!?

両親も刀馬鹿!?

「…私には、細工の才があるらしいんだ…」
「…だろうな。お前の作る鍔や柄の装飾や、鞘の塗りは細かくて美しいと思う」
「ありがと…でもな、私な、…刀作りたいんだ…」
「打ちたいのか?」
「そうじゃなくて…1人で、作成してみたいんだ…」
「…作業工程を全部1人でか!?」
「うん」

小十郎は驚いたが、らしいとも思った。

無謀だが、この向上心は見てて気持ちがいい。


…じゃあ…頼んで良いか?」

「なに?」

「俺は、梵天丸様の初陣の際、必ず共に行き、御守りする」

「うん…」


は寂しそうな顔をした。

小十郎はの頭を撫でた。


「その時までに、作ってくれないか?」
「小十郎…?」
「俺の為に、梵天丸様を守るための刀を」

が目を見開いた。

「え…?」
「嫌か?」
「嫌とかじゃなくて…小十郎…私なんか…」
「何だ?女に頼むのは異常か?」
「そうじゃなくて…」
「自信が無いか?」
「い、いや、でも…」
、頼む」


しばらくは考えこんだ後、小さく頷いた。

「時間、かかってもいい?」
「若君の天下統一に間に合えば良い」
「はは!!そうか」

は手を伸ばすと、小十郎の左手に触れた。


「…じゃあ、最高のもの作らなきゃな」
「期待してる」
「待っててくれ…」



男女が一つの布団に入って何もしないなんて

いったい俺達の年はいくつだと笑ってしまいそうになった。


でも


「……」
「……寝顔は可愛らしいのにな」


俺たちはこの距離でいいんだと思った。


このままでいいんだと。








次の日、朝起きるとはいなかった。

小十郎は慌てて起き上がったが、障子を思い切り開けると、昨晩の忍が立っていた。


「おはようございます―。あの子なら店まで送りました―」
「…そうか」
「昨晩はお楽しみで?」
「…俺たちはそんなんじゃねぇ…。お前、何であいつ連れて来た?見つかったらただじゃ済まねえだろうが…俺もお前もあいつも…」

小十郎は忍を睨み付けた。
忍は特に反省する様子も無い。


「可愛い子に、半泣きされたら、無視できなくて…。小十郎様の大事な方ならなおさら」
「!!」




半泣きして懇願したのかよ…


「口実は作っておきましたよ。じゃあ、また」

シュッと消えてしまった。


…口実?


部屋を振り返ると


枕元に櫛が置いてあった。


「…返しにいけと…」

小十郎は頭を掻いた。

「あ―…くそ…」


喜んでいる自分がいるのが悔しい。
















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突発夢、企画で少々子作りの話に触れたりした気がする…
実は企画やる前から主人公の知識は間違いだらけな設定してたんですが時々忘れる…(ばか!)
こっちが本当と言う事で…うわあ混乱したかたいたらすいません…