「うーん…」

は闇の中で考える。

「…彼は、大丈夫。前向きで、皆に愛される人だもん。」

一緒に過ごした時間が、彼の中から消えてしまう。
それが寂しくないと言えば嘘になる。

「仕方、ない…」

涙が出そうになるのは、こらえる。


「さてさて、色々とやろうと思いましたが、大問題発生です。」

氏政に相談すればよかったのかなとも思うが、変に言って心配かけるのも嫌だった。

「小太郎ちゃんを、解雇してしまったんですが…。」

離れるなと言われた。
小太郎と友達、のレベルではない雰囲気だ。

「雇わなきゃ、なんないなー…」

一体どれほどの金額が要るのだろうか。
こんなに早く頭を抱えることになろうとは、さすがに予想外だった。








視界が明るくなる。
一体どこにたどり着くのだろう。
どこにたどり着いても、私はやりたいことをそこから始めようと考えていた。
きっと政宗さんや幸村さん、元親、元就さんや…巻き込んでしまった皆はまだ海にいるだろう。


たどり着いた先で、人助けをしよう。
まずは自己満足でいい。
仕事も見つけてお金を貯める。
貯めたお金で日本を歩き回って、いろんなものを見よう。
みんなに会いに行って、謝罪して、経緯を説明しよう。

少しずつ成長しよう。

たくさんの知識や知恵を得よう。

いつか、たくさんの人の命を救えるようなことが出来たらいい。

それが私の夢だ。



同時に、いつか政宗に会って、裏切り者として処罰されることも、覚悟していこう。

まだ、本当に死んでもいいとは思えないのだ。
少し、猶予が欲しい。
だから、奥州ではない他のところにたどり着いてくれと願う。




「……。」



ザァっと、風が草木を揺らす。

「ここは…?」
目の前に、野原が広がっていた。
晴れ渡る空に雲がゆっくり流れ、小川のせせらぎが優しく聞こえる。

「綺麗…」

戦の世ということを忘れさせてくれるような場所だった。

ガサッと音がして、近くにあった林道から誰かが出てきた。


「おや?」
「…………。」


は、すぐに人に背を向けスタスタと早足で歩き出した。

わかっている、相手は馬に乗っていたから、こんな開けた場所で逃げきるなんてあまりに難しいということくらい。

「いつかの、お嬢さんではないですか。」

その男はの心情など無視して、馬を歩かせ近づいてくる。

「…………。」
「覚えていませんかねぇ…ほら…京の祭でお会いしました。あなたを仕損じた、情けない男ですよ。」
「……うぅぅぅぅ…!!」

横に並ばれてしまった。

もう視界に、風になびく銀色の髪が写っている。

「前田慶次に怒られる原因となったお嬢さん…急いでどちらへ?」
「わー!!!!」

一向に立ち止まらないが気にくわなかったか、男は鎌を振り、の顔の前で寸止めをした。

「なんでこんなときに…!!」
「私は明智光秀と申します。いくつかお聞きしたい点がございますので、ご同行を。」

ニタリと不気味に笑いながら、明智光秀はを見下ろす。



悩みの種が増えすぎだろおおおお!!!!!と、は泣きたくなりながら心の中だけで叫んだ。

























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織田軍にお世話になる編です!!
明智は良いキャラですね…