「殺し…?」


佐助の言った一言が脳に衝撃を与え、上手く感情が引き出せない。


「…死…」


小太郎が死ぬ気なんだ、という言葉が浮かぶ。
けれども、そんなはずないと思おうとする。
だって、戦っているじゃないか。

いつもの小太郎の動きじゃないけど、佐助と戦っているじゃないか…


小太郎ちゃん!!!
!!あぶねえ!!!」


咄嗟に走り出したを、元親が捕まえる。
構わず手を伸ばし足を走らせようとし、無我夢中で叫ぶ。

「嫌だ!!!死なないで!!!戻ってきて!!!!」
「落ち着け!!戦場に突っ込む気か!?」
「誰も、誰も死なないで!!いや…嫌だ!!!何で!?お願い!!!」

必死に叫ぶの言葉は、小太郎にぶつかるだけだった。



「あんたの大事なお姫様が、あんなにぼろぼろ泣いて訴えてんのに…」


佐助は目を細めた。


1発勝負、とちったらそれで仕舞いだ。


皆、俺様に仕事任せすぎだっての。



空中戦をし、一度着地する。


佐助は深く身を屈め、全身のバネを最大限に使い、一気に飛び出した。


幸村は目を見開く。

「佐助…!!!!」

「!!」


佐助は殺気だけを纏い、手裏剣を振りかぶり小太郎に襲い掛かる。


「……。」


小太郎が、感謝の言葉を言った気がした。


「や、やめっ…!!!!」

の全身が震える。

元親は今にも崩れてしまいそうなを支え、静かに見ていた。


「こた…!!!」
「簡単にっ!!!!死ねると思うなよ!!!!」
「!!!!」

手裏剣を、小太郎の肩口ギリギリで手放し小太郎を蹴る。
バランスを崩した小太郎に更に体当たりをして、船の外に追い出した。

「いっ…」

宙に浮いていた手裏剣を避ける余裕は無かった佐助は、肩を裂き血が流れた。

痛みに顔を歪めたが、すぐに耐え、小太郎を追う。

バシャン、と大きな音を立てて小太郎が海に落ちる。
佐助は姿勢を何とか整え、小太郎の側に、自分に負担が少ないように着水する。
そして水中にいた小太郎を捕まえて、水面に向かって泳ぐ。


「ぷは!!」
漂う血は、自分のものだけのようだ。


「…いやー上手くいった…残念だったね。」


きょとんとする小太郎の口に、念の為手を突っ込んだ。


「自害は、すんなよ?」
「………。」

猿ぐつわになるようなものは無いかなと考えるが、上手く頭が回らない。
殺す気がないと察知されたらもう手が思いつかなかったので、先程の一瞬に全力を注いでしまった。


「…あ、俺様の手裏剣…」


船を見ると、手裏剣が甲板に突き刺さったようで、その周りに必死に避けたであろう兵士たちがしゃがみ込んでいる。

「…あとで、回収出来るよな…」
「………。」


視線を巡らすと、と元親が身を乗り出してこちらを見ていた。


「手でも振ったら?」
「……。」


そ、と掌を達に向ける。

は安心したのか、膝をついてしゃがみ込んだ。
手を顔に当てているので、泣いているのだろう。
元親がそんなの背中を撫でる。


「誰か、船に上げてくれないかな…皆そんな余裕無いか…」

小太郎の口から手を離し、佐助がそう呟いたとき、遠くから音がした。

「ん…?」


そして、ドオン!!と大きな音を立て、船の進行方向の海に水柱が立った。


「げえ!?」

海面が揺れる。
船も勢いよく揺れる。

「…!!!」
が衝撃に耐えられず倒れてしまうのを見た小太郎は、波も気にせず船に近づこうとした。

「馬鹿!!お前大馬鹿!!!は大丈夫だっての!!さっきまで死のうとしてたくせに!!!!俺らは離れるぞ!!!!」
「っ…!!!!」
「船にぶつかったらマジ死ぬから!!!!」


小太郎を引っ張り、砲撃を受けた方向を船を挟んで避けるルートで陸を目指す。


「そんな遠くないはずだから、体勢整えるぞ…!!っつーか何この砲撃…!!!!」

2発目が来る。
これでは船は進めない。
むしろ後退するしかない。

その対策は元就と元親を信じ、自分達は陸に上がって砲撃をする敵勢力を探るべきだと判断する。

「っつーか腕が痛い!!!」
「……」

小太郎が傷口を布で巻いてくれるが、それももちろん海水で濡れている。

「……。」
「あれ?」

小太郎が、佐助の前に来る。
おんぶしてくれようだ。

「甘えよっかな…ありがとさん…」

大人しく小太郎に身を任せることにする。

「どーせお前…手を抜いてたんだから体力余ってんだろ…」
「……。」
嫌味の口調で言うと、小太郎がしゅんと落ち込んだ。

「…あれ?」

もっと言ってやろうと思い顔を勢いよく上げた佐助だったが、陸の一点を見つめたところで止まる。

「………。」
「なーんか、気配がするよねー。」










は全身から力が抜けていた。

けれども自分ひとり休んでいるわけにはいかない。

その意思で自力で起き上がる。

「大丈夫か、!!伏せてろ!!」
「だ、大丈夫だから!!私のことはいいから…」
「そういうわけにもいかねえだろ!!」

船が揺れ、元親もバランスを崩す。

「元就!!どうなってる!?」
「大筒だ。軌道から発射元は特定した。届かぬところまで移動するぞ。」
「冷静だな元就!!ふらふらなのに!!」

もちろん元就も船の揺れでふらふらしていた。
しかし顔はこの場に似つかわしくなく無表情だった。

「反撃しても良いが。」
「俺とてめえだけの船旅だったらな!!今は逃げること考えろ!!」
「そうだな。」

感情のこもってない返事をした後で、元就が輪刀を構える。

「船は、な。」
「てめえが行くのか?」
「文句があるか?」
「…いや、ねえよ。」

は、止めたい、と思う。
でもどうしたらいいのか判らない。


「…来い。真田源次郎幸村。」































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小太郎は
もちろん無事だよっっ!!