馬に乗ってひたすら走る。
後ろに乗って振り落とされないよう元親に必死にしがみつくは、まだ状況が判っていない。

「いやーギッリギリだったなあ!!!あぶねえあぶねえ!!!」
「な、何で元親がここに…?」
「先にお前が、何でこんな事したのかを言った方が順序が良いぜ?」
「私は…」

小太郎を見ると、こくりと頷かれた。
言えということなのだろう。

「あのまま、何もしなかったら、政宗さんは義姫…お母さんに毒を盛られるの。」

一度言葉を切ると、元親は、で?と話を催促するので、反応を気にせず話そうと想った。

「でも、政宗さんは死なない。その罪を被るのは、政宗さんの弟。それが嫌だった。私の我儘…。」
「それで?お前には、その先があるはずだ。」
「…政宗さん、小十郎さん、成実さん、みんな…みんなが私のあれを真に受けてくれるとは想ってないの。皆、頭がいいもの。きっとばれる。もしかしたらもうばれてるかもしれない。」

成実さんは、驚いてはいたがそれは最初だけで、私の言う事することをすべてしっかりと観察していた。

「城に侵入した私を、義姫様が殺さず売った。その恨みを持った私が、この日をぶち壊してやろうと計画し、実行した…」
「兵達にゃでかい出来事だな。政宗の飯から毒が出てきたってばれても、まあお前がやったんだろうってなるな。…武蔵が邪魔して失敗して腹を立てて…自らの手で殺してやろうと姿を現した。」
「弟の、小次郎様とも接触してます。お母様が大好きな小次郎様が怒り、私を探し殺すために便利な役職に就くことを望む…。それは『奥州筆頭』の地位ではない…」
「それでとりあえず家督争いを一時的に鎮めちまうってか?」
「…これじゃ、駄目かな?元親からみたら、甘いかな?でも、私にはこういう方法しか無かったの。私の予想通りじゃなくても、何かは起こる。きっと、政宗さん…私のしたこと、活かしてくれると思うんだ…。」
「そうか…」

それで、元親はなんで?と顔を覗くようにして聞く。

「俺は小太郎に頼まれたんだよ。を連れて逃げてくれって。」
「え?」
「筆談だったけどよ。」

小太郎は全く表情を崩さない。

「気付いてもいいだろう?お前の持ってる銃、すんげえ立派じゃねえか。俺が取り寄せたもので一番良いやつだぜ?」

さすが俺!!!と笑い出す。
は、小太郎が自分の為にそんなに動いてくれていたことに驚いた。

「小太郎ちゃん…本当に…?」

見れば、気にするなと言わんばかりの無表情。

「で、さあ助けにーって船を出したらよ、…場所が違うじゃねえか…。」
「青葉城に向かったの?」
「半分くらい来た所で一応確認に忍向かわせたら、宴は米沢城?予定狂ってよ、ちゃんと伝えやがれ!!って文句を送ったら、小太郎、迎えに来てくれてよ…」
「……。」

あのとき、ゼェハアして疲れていたのは、術でも使って急いで元親を迎えに行ったものだったのだろう。

「じゃあ、これ、元親の船に向かってるの?」
「違う」
「え?」
「調べられたらすぐばれて包囲網食らうだろうが。反対の海に、元就に向かってもらってる。」
「も…」

元就さんんんんんん!!!!!?との叫びが夜の空に吸い込まれる。

「なんで、そんな、みんな巻き込んじゃって私…!!!」

申し訳なくて慌ててしまったに、落ち着けと声をかける。

「お前は気にしなくていい。元就、迷わず頷いてくれたみてえだしな。愛がなんとかとか言って。」

あいつアホだよなーと笑うが、は笑えない。

「今は俺達に甘えろよ。」
「でも…」
「黙ってこんなことして、俺は少し怒ってるぜ?でも、お前には誰かに頼るって発想も時間も無かったんだろうよ。」
「ご、ごめんなさい…」
「いや、違うだろう。俺達がいけねえ。本当にお前に信頼されてたら、相談してたろう。もっとしっかりしねえとな…」

元親のまさかの言葉に、は目を丸くした。

「そんな事無い!!相談したくなかったんじゃないよ!!こんなことに、皆を巻き込みたくなかったの!!」

必死に叫ぶと、元親が僅かに肩越しに振り返る。

「俺の側にいろよ。」

口元は、優しく笑っていた。

「もう二度とこんなことさせねえ。お前が悩んだとき、俺は側にいたい。お前に頼られたいんだ。」

政宗と心を通わせたのに、元親の言葉が深く心に染み込んだ。

「…それに、俺も、お前を頼りてえ。心の支えってやつは、やっぱ要るだろ?」

困惑するに、さらに言葉をかける。

「好きだって、言ったろ。」

覚えている。
しかしあれは仲間としての言葉ではなかったのか?

「俺はお前が好きだ。」
「元親…」
「お前と別れた後、何回お前を拐いに奥州に来る夢を見たか…」

こんな形で現実になるとはな、と複雑な心境で話す。

「さぁて、これ以上はの小太郎ちゃんが怒ってるから控えて…」

馬のスピードが落ち、山道で止まる。

「ここで下りるぞ。」
「え?」

随分な距離を来たが、海に着くにはまだまだ遠いのではないかと思うが、元親が誘導するまま馬を下りる。

「ここからはまた弩弓で進む。」

そう言うと、片手で碇槍の鎖を持つ。

「あっ、また?」

はしっかりと肩に担がれる。
先ほどの衝撃が思い出され、大した効果は無いと判っていても元親の服をぎゅっと掴んだ。

「行くぞっ!!」
「は、はぃぃ!!」

碇槍に飛び乗り、徐々にスピードを上げていく。

「俺達にゃ…」
「へ…!?」
「山を越える時間なんてねぇからなぁ!!!」


ザッと大きく音がすると

下を向いていたの視界から地面が消える。

「っ…!!」

高い高い崖を、飛び降りた。

「ひ…」

あまりの高さに目が眩む。
次の瞬間には落ちていくスピードに恐怖でいっぱいになる。

「道は作りゃいいんだよっ!!!岩があろうが何があろうが…真っ直ぐ進むぞ!!!」
「まままままマジですかぁぁぁぁ!!!」













「遅いわ!!」

港へ着くと、元就が苛立ちを隠すことなく仁王立ちをしていた。

「…元就…後ろにいる家臣が全員くたばってるぞ…」

可能な限りのスピードで船を動かし続けた元就の家臣たちは、休む暇もなく働かされた。

「そっちはがくたばってるではないか。」

はあまりに酷い振り回されっぷりに、口から魂が出そうな疲労と気持ち悪さに襲われていた。

もし敵襲があれば対応せねばならないためにを運べなかった小太郎は、背を撫でてを介抱していた。

。我に会えて嬉しいだろう?」
「は…はい…嬉しい、です…」

そう返事をするのがやっとだった。
しかし元就は満足そうに笑う。

「ならばよい。早く乗れ。南下するぞ。」

小太郎に支えられながら立ち上がる。
元親が手を差し出してくれるが、大丈夫、と断った。

船に乗ったら、本当にもう、お別れだ。

「……っ」

振り返りたくなるのをこらえる。
自分が決めたこと、自分が、決めたことなんだと心の中で反芻した。

今頃になって、最後に見た政宗の顔を思い出す。
目を丸くして驚いて…

(泣きそうな、顔を…)

非情にはなれなかった。

私の言った気持ちは、嘘じゃないよ。

ずっとずっと、大好きだよ。

そう言いたくて、たまらなくなった。

「……。」
「だ、大丈夫。お言葉に甘えて、乗らせてもらおうか…。」

一歩踏み出せたら、あとはスムーズだった。

元就の船に乗ると、すぐに出航の合図が鳴った。

























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お話わたわたし始めた…
いっぱいのキャラ書ききれるようがんばりまっ