受けた質問には嘘を織り交ぜながら出来るだけ本当のことをいった。

最初は、知らないところに迷いこんでしまいしばらく野宿だった、途中半兵衛に会った、からしか言えなかった。

それを聞いた政宗と小十郎は、心配そうな顔で優しく問い掛けてくれた。

「おい、何か、されなかったか?」
「大丈夫だったのか?」
「大丈夫だったよ、だって私本当になんにも状況知らなかったし?」

へらへらと言えば、二人は少し安心したようで、表情が緩む。

「半兵衛さんには、慶次の影響で旅してる、って言ってたし…けど怪しまれて大阪城まで連行されて…」
「長旅だったな…」
「小太郎ちゃんはすでに見つけてくれてたんだけど、なかなか隙が…ね?」
小太郎はのフりに大人しくコクリと頷いた。

「なかなかこっちに来れなくて…それで、なにがあったの?」
はわくわくしながら政宗に詰め寄った。

すると政宗はニヤリと笑い、の耳に口を寄せた。

「細かい事は省くがな…武田・上杉と同盟を組んだ。」
「同盟…やっぱり…!!」
「半兵衛が何か言ってたか?」
「何かね…はめられたとか…!!政宗さんが…」
「まぁな…豊臣を敵に三国同盟だ。忙しかったぜ〜?幸村も上杉の忍もぎゃあぎゃあ意見言ってたが無視だ無視。」
「じゃあ…戦わなくて…いいんだね…!!幸村さんとも佐助とも信玄様ともかすがも謙信様とも!!」
「あぁ」

の反応にはやっぱりな、といった感じだ。

「俺は徳川の動きが気になる…」
「家康は気にすんな!!近々ウチに呼んでちょいと話してみんよ!!」
心配する小十郎の背をバンバンと楽しそうに叩く。

「そっかぁ…なんか実感湧かないけど…政宗さんの口から聞くと現実味がね…!!」
「んなもん嫌でも感じてくるぜ…そんでだなぁ…」
「…?」

話はそこまでかと考えていたが、先があるらしい。

政宗がにこにこしているので、も笑顔で言葉を待った。

しかし、すぐに硬直してしまった。


「俺の母上がよ、それ聞いて…連絡くれたんだ。」


の脈が速くなった。
何て返したらいいのか判らない。

「…母上…って?」

怪しまれないよう声を絞り出す。

「まぁ大した事じゃないんだが…その…呼ばれたからよ…」

政宗の声はいつも通りだったのだが、嬉しさを抑えているのがすぐに判る笑顔だった。

「呼ばれた?ここで会うんじゃないんだ?」

は思い付く限りの質問を政宗に尋ねた。

「ああ、米沢城にな…。それで…、その、一緒に行こうぜ!!」
「え…?」

素で驚いてしまった。
それは自分が消えてしまう日のはず…

「安心しろ、お前が戻る前日だから。んで…一緒に食事して…お前の事…母上に紹介しようとか…な、なぁ?小十郎?」
「はい」

小十郎は政宗の目配せに返事はしたものの、若干下を向いてしまった。

「政宗さんの…お母様に…」
「今回の事できっと俺を認めてくれたってことだ。だからよ…いい機会だってな。なぁ…小十郎?」
「はい…」

一々小十郎に確かめる政宗は明らかに照れている。
深い意味があるということなのだろう。
いつもの自分なら、戸惑って、でもそんな政宗が可愛らしく感じてしまって…胸はときめいていたのかもしれない。

今は

今は最悪の状況しかの頭は想像できなかった。

小次郎を思い出して目が潤みそうだ。

今はだめだ。

「政宗さん…」
「難しく考えなくていい。ちぃと…、後で話がある。それで…」
「やだ。」

の言葉に政宗が止まる。

「は?」
「お食事…行きたくない…。」
「なん…なんでだよ?」

予想してなかったのか、政宗は目を丸くした。
しかし小十郎はを見つめてほっとしている。
彼は仲間のようだ。

「…政宗さんのお母様…怖いんでしょ?」
「誰に聞いた?」
「調べた…」

は言いずらそうに躊躇いながら、意見を述べた。

「政宗さんのことはともかく…私は余所者だよ?久々の団らんに押しかけて、良い反応してくれるかな…?」
「それは最もです、政宗様。まだを連れて行くなどと向こうに伝えていません。まずは政宗様が、の存在をその会食にて話してからが良いかと。」
「…良い事は一気に来た方がよくねぇか?」
「段階を踏むことも大切です。」
「そうか…?そうだな…」

うーんと唸ったが、政宗は納得したようでそれ以上は言わなかった。










政宗は疲れが溜っているだろうとに配慮し、残りの話は明日にしようということにした。

夜になり、が寝ようとすると、自室に近付く足音が聞こえてきた。

「…?」

酷く焦った足取りだ、と感じた。

部屋の前で、止まった。

「起きてるか?」
「…小十郎、さん?」
「入って、いいか?」
「はい」

戸を開けた小十郎は、眉間に皺を寄せ、珍しく余裕の無い顔をしていた。

「どうし…」
「年甲斐もなく…と思われても仕方ねぇ。…政宗様を見て、我慢しなきゃならねぇとは何度も思った。」

の言葉を遮り、言うと同時にの部屋に入って来る。
何事だろうと、は黙って小十郎を見つめた。

「けど…の顔見たら…の空気に触れたら…耐えられなくなっちまった…。頼みが、あるんだ。」

に近付くと、すぐに腕を掴んで力を込めた。

「一緒に、来てくれ」
「小十郎さん…」
「頼む……わがままだって判ってる。けれど、もう無理なんだ…!!我慢できねぇ…!!」
「こじゅ…」
「許してくれ…来てくれ…」

この男にここまで言われて、拒む理由がには無かった。
引かれるまま、立ち上がる。

「…政宗様に…見つからねぇところへ―…」



















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政宗との接触があまりなくてすいませんー
ちょっと小十郎とのお話挟みます!!