「うわぁびっくりした…!!なんだよ忍…!!」
「……。」
「小太郎ちゃん…ここどこ?」

樹々が茂る林の中に、小さな小屋があった。

「……。」
小太郎がスッと右を指差した。
細い道が続いていた。

「…真っ直ぐ行ったら…青葉城?」
の質問に、こくりと頷いた。

「…あおばじょう?」
「政宗さんのお城だよ、武蔵君。お泊まりしたね?」
「ああ、うん!!おぼえてる!!野菜おいしかった!!」
「そうだね…」

すぐ近くに政宗も小十郎がいる。
は落ち着かない思考を鎮めようと、深呼吸した。

「んで、忍…こっから歩くのか?」
「……。」
小太郎は一度武蔵に視線を向けた後、の耳に口を寄せた。

「…え?武蔵君は…ここで寝泊まり?」
「えぇ!?なんでだよ!!」

武蔵は抗議の声をあげ、地団駄を踏んだ。

「…そうしたほうが…最終兵器の意味を為す…」
ピクリと反応し、武蔵は大人しくなり、腕を組んだ。

「お、おれさまの価値、わかってるじゃん!!」

「………」
「…………」

えっへんと腰に手を当てた武蔵をみて、小太郎が微かに笑った。
そんな小太郎を見て、は肩を落とした。
最終兵器の使い道さえまだ定まっていないのに、気が早いものだ、と。

「…けど…そうだね…確かに…」
「ねぇちゃん?」
「武蔵君、ここから動くな、とは言わないわ。町へ行ってもいい、修行をしてもいい、けど、役人に捕まったりしないで…」
「うん」

武蔵は素直にこくんと頷いた。

「ねぇちゃんがおれさまを必要としたときに、おれさまがいなかったら不便だもんな」
「武蔵君…」

武蔵は思った事を口にしただけで、きっと悪意はない。
だが、今のの心にはずしりとのしかかった。
今から自分は目の前の子を、道具として使うようで…

「…そうじゃないの…不安で…武蔵君が…」
「おれ、そんなにガキじゃないよ。心配しなくても大丈夫だよ。」
「…!!」

武蔵がに寄り、優しく肩に手を置いた。

「だからねぇちゃん、おれさまに旨いメシもってきてよ!!おれさま、ねぇちゃんのためにはたらいてやる!!」
「…武蔵君…」

二カッと笑う武蔵が今は逞しくて大人っぽく見える。

「ありがとう…」

は武蔵に笑顔を向けた。

感謝と懺悔の気持ちを込めて。






をお姫様抱っこして、小太郎は庭に降り立った。

「ありがとう、小太郎ちゃん」
小太郎がふるふると首を横に振った。
すると、それを目撃していた家臣が慌ただしく廊下を走って行ってしまった。

「っ…!!」
義姫が動き、こちらに何か情報を流したのかと警戒した。
しかし、すぐに安心する声が聞こえて来た。

ちゃあああん!!!遅かったねぇぇぇ!!!!寂しかったあああ!!!」
「成実さん…!!」
「てめ…待ちやがれ!!!!避けろ!!成実は避けろ!!」
「…と、政宗さん…」

に突進する成実を政宗が追っている。

「え…と…?」
ちゃんつかまーえた!!!」
「shit!!!くぉら成実!!」
どうすればいいか判らないはそのまま成実にがばぁっと抱きつかれた。
それを見て政宗は一度頭を抱えたが、すぐに成実をひっぺがそうと手を伸ばした。

が困ってんじゃねぇか!!」
「困ってないもーん!!ねー?」
「困ってないですよ―えへへ…」
…お前なぁ…」
成実を挟んで、と政宗の目が合った。

「…怪我、ねぇか?」
「うん、無事に来れました!!」
「そうか…良かった」
「殿とね、ちゃんが来た時にどっちが早く抱き付けるか競争だったんだよ!!俺の勝ち!!」
「あぁそうかよ!!」
「あいた!!」
一向に離れない成実を政宗は叩いた。

「どんな勝負ですか」
はクスクスと笑った。
「だって殿が不安がるからそうでも言ってテンション上げないと…ぎゃ!!また痛い!!」
「成実…いいかげんにしろ…」
顔を赤らめる政宗に、は手を伸ばした。
腕に軽く触る。

「政宗さん」
「お…おぅ…なんか久し振りだな…」
「うん」
にしがみついたまま、成実はちらちらとと政宗を見た。

「なに、俺邪魔?」
「えっ!!そんなことないです!!」
「あぁ、邪魔だ。」
「ま、政宗さん!!」
成実が大人しくから離れ、また後でね!!と言いながらどこかへ行ってしまった。

「……。」
「…まぁ、成実が居なくなっても小太郎は居るわけだが…」
「今回も小太郎ちゃんにお世話になりました!!」
「そうか…あのな、…「おや、、やっと来たか。」

政宗の声に被せて話しかけてきたのは、着物姿の小十郎だった。

「……こじゅうろう…。」
「小十郎さん!!」

が笑顔で手を振ると、小十郎が近付いてきた。

「遅かったな、さぁ、立ち話もあれだ、中に入りなさい。」
「…そうだな…」
「はい!!」

それにはもちろん小十郎も付いてきて

、今度はどこからきたんだ?」
「えーとですね…」

小十郎は当然のように茶を持ってきて、と政宗と小太郎と4人で一緒に過ごした。

と…二人きりになれねぇんだなくそ…!!」

政宗は机に頭を突っ伏した。

「何をおっしゃいますか政宗様、ささ、早くそこの書類に目を通して下さい。」

「…おう…」

いつも通り、と思えるこのやりとりが、心から嬉しかった。



















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やっと伊達軍出せましたよ…
長かったような短かったような長かったような…!!