随分な距離を走ったが、まだ大阪城には着かず、馬の疲労もピークに近かったため、途中に林道から外れた場所に小さな無人の家を見つけ、そこで休むこととなった。

「疲れたかい?」
「…もちろんです」

は小屋の中に入るとすぐに寝そべった。
床板は冷たいし、汚いだろうな、と思ったが、とにかく休みたかった。

小さな囲炉裏に火をおこし、薪をくべる半兵衛を横になったまま見ていた。

「部下の方は…?」
「固まって休憩などしないよ」

周囲を見張っているのだろう。

「…寒いんじゃ?」
「毛布なら持たせてる」
「そうですか…」

揺れる火を見ていると、眠くなってきた。

(…ゆき、むらさん、元気かな…)

思い出してしまった。
何故か懐かしく感じる。

(会いたい…みんなに会いたい…)

みんなで、ただ笑っていられたら、どんなにいいだろう。

(みんなを…)

未来に連れて行ってしまえたら、楽しいなんて、
そんな自分勝手な考えが思い浮かび、はまた泣きそうになった。


「…君」
「あ…」

に半兵衛が毛布を掛けてくれた。

「これ…」
「体調を崩されては困る」

半兵衛の持ち物だったはずだ。

「……」
は起き上がって半兵衛の近くに寄った。

「どうしたんだい?」
「一緒に…」
「……」

が半兵衛の隣りに座り、毛布を半分、半兵衛の背にかけ、二人で共有した。

寄り添わずとも十分二人を覆える大きさだったが、半兵衛はの肩に手を回して引き寄せた。

「…不快に感じないのかい?」
「なにが?」
「僕が君に優しいのは、情報が欲しいからだよ?」
「…私、だって…」

が半兵衛の肩に頭を乗せた。

「半兵衛さんの言葉が聞きたい」
「…君は、僕への問いで…政宗君に危険が迫ってると、言っている。さらに僕に問い掛けて、自爆したいのかい?」
「…政宗さんは…強いよ」

の言葉に、半兵衛はピクリと反応した。

「自分が何を僕に漏らしても、政宗君は安全だと?」
「…命の危機…というわけじゃない…」
助かるはずだ。
解毒剤があるはずだ。
「…私の我儘なの…私が…起こさせたくないから…」
「……」

半兵衛は、ぶつぶつと、命の危機ではない…と繰り返した。
頭の中では、何が起こるのか推理し、それをどのように利用できるか考えているのだろう。

「半兵衛さん…もし半兵衛さんだったら…」
「…起こるのはいつ頃なんだろうね」
「秀吉さんに、言う?君にはこれから、こんなことが起こるよ…とか…」
「場所…場所は奥州かな?」
「それとも、自分一人背負って全て潰しちゃう?」
「幸村君が政宗君を追い込む…いや、信玄公が居る限りそれはないか…?いや…同盟前なら…」
「秀吉さんを信じて…見て見ぬふり?」
「政宗君の謀とバレて…忍が暗殺を計り混乱を…?ああ、それなら僕たちの情報操作で可能かな…?いや、政宗君がそれを予測しない訳がない…」
「………」
「…………」

互いにほぼ独り言だ。

「…半兵衛さん…寝ませんか?」
「そうだね…少し…」
「!!」

半兵衛がを抱き締めて横になった。

「は、は…」
「君より先には寝ないからね…」

今日は半兵衛自らが自分を縛ってくれるらしい。

「…おやすみ」
「み、耳元はやめてください…!!」
「おや?君はこういうものに弱いのかな?」

半兵衛はにやりと笑い、政宗君に何が起こるんだい…?と耳元で囁いた。

「いいいい言いません!!」
の顔が真っ赤になった。

「…教えてくれないか…僕はどうしても…欲しい…」
「ひいぃぃぃ!!」

は体を強張らせた。
半兵衛の声+吐息ダイレクトは全身の神経にくる。

君…良い子だ…」
「ちょ、ちょ…!!」
明らかに自分の声が良いことを知っての確信犯だ。
片手での顎を掴み、逃げられないように固定して言葉を発した。

「ねぇ…僕に…どうされたい…?」
「やめっ…やっ…」

段々半兵衛がノッてきた。
関係ない言葉まで吐きだした。

「あぁ…可愛らしいね…細くて柔らかくて…乱暴にしたら壊してしまいそうだ…」
「わぁぁぁぁ!!!!」

たまらずが抵抗した。
そんなを見て半兵衛は笑った。

「…君」
「はい…」
「……寝ようか」
「ええ…」

突然、自分達は何をしているんだろう…と思ってしまった。























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半兵衛も阿呆に…
あの容姿にあの声は反則かと…