忍は町の近くまで連れて来てくれた。
適当な林の中で止まり、を下ろした。
「奥州まで、と言ってあげたいところですが、私はそれほど権力も能力を持っていませんので、自分の身を考えればここまでです」
「大丈夫です…ここまで、ありがとうございました…。道だけ、教えて頂けますか?」
忍は懐に手を伸ばし、紙を取り出した。
「地図です」
「あ…」
広げると、大まかに尾張より上の地が描かれていた。
「あの町はここ。点で示されたのが確認できている町です。上のほうにある線が奥州の国境です。」
「はい」
忍はすぐに折り畳み、に渡した。
「いいんですか?」
「ええ」
政宗がくれた地図より縮尺が大きいので、周囲を歩き回るには使えるものだと思い、ありがたく受け取ることにした。
もう大丈夫です、と言うと、忍はこくりと頷いて消えていった。
「うん…私、大丈夫…」
町に入り、ひとまず宿を探すことにした。
「全く…あれはやられたね…」
「半兵衛様、秀吉様にはなんて伝えましょう?」
「…そのまま伝えるさ。隠していても仕方がない。」
半兵衛はカリ、と爪を噛んだ。
戦力は五分五分。
決着がつくとは思えなかった。
どちらの軍が、どのような戦術を使うかを見たかった。
そして、武田軍の情報を、徳川に流そうと考えていた。
戦での疲弊の状況を伝え、戦略を少し助言し、勝機があると見れば、家康は出陣するだろう。
(そしてその先…)
かといって武田が簡単に徳川に負けるとは思えない。
ならば、本田忠勝、あれにも少しは隙ができる。
(僕達の出陣は、そこだった…厄介な、戦国最強から…)
徳川を落としたら、武田、上杉へと容赦なく攻め入るはずだった。
「なぜ、僕たちの居場所が判った…?」
影響が及ばない場、尚且つ戦でどのような兵法が使われるかしっかり見えて、向こうからは見つけるのが困難な場所を選んでいたはずなのに。
「…兵をそんなことに回す余裕はなかったはず…」
「半兵衛様!!」
ばたばたばたと走る足音。
「ここは宿屋だよ。もう少し静かにしたまえ。それと、名前を呼ぶのも控えてくれ。」
小さい町だから、自分の名を知る人間もいないだろうが、念の為に注意をした。
「申し訳ありません…!!」
「…で、どうしたんだい?」
「それが…川中島での戦の後、伊達政宗が現れたそうで…」
「政宗君…」
ああ、そうだ。
彼の所に、風魔小太郎がいるんだった。
「…判ったよ」
武田信玄と上杉謙信が一騎打ちを始めたとき、異変が起こった。
竹中半兵衛は連れて来た隊を二つに分けていたのだが、一方が何者かに襲われているという報告がきた。
急いで確認させようとしていると、豊臣軍の旗を掲げた集団が現れた。
自分達とは関係がない。
誰かが、旗を奪って利用したとしか考えられない。
しかしそれを見た両軍の忍は慌ただしく動き、戦は混乱し、豊臣軍が漁夫の利を狙おうとしている、という話で戦が止まってしまった。
自分達は急いで逃げた。
全て、政宗君達の謀か…。
僕等の行動を予測して、調べさせていたんだろう。
「……」
ならばその先は
三国の共通の敵を作るのは
「…同盟を組む気だね」
使われた、ということだ。
「気に食わないね…」
ぎゅっと拳を握り、窓に寄った。
景色を見て落ち着こうと考えた。
「…ん?」
「ここ…宿屋…」
は一番目立つ宿屋の前に立った。
いくらぐらいするだろうか。
「…朝食抜きで値下げとかあるかな…」
高くて泊まれなかったら、他の宿屋がどこにあるか聞けばいいや、という軽い気持ちで入ってみようと考え、中に入った。
「いらっしゃい」
出迎えてくれたのは優しそうな女将さんだった。
「あの…」
「さん」
聞いたことのある声に、は思い切り振り向いた。
「半兵衛さん…」
「覚えていてくれて良かった。偶然だね。」
半兵衛は笑顔でゆっくりと階段を下りて来た。
「ここに泊まるのかい?1人で?」
「あ、えと、泊まりたいんですが、手持ちが少ないので…値段聞いてからじゃないと…」
「ああ、なら」
半兵衛は懐に手を入れ、女将に銭を渡した。
「え…」
「会えて嬉しいからね。ここは僕に甘えてくれないかな?」
「でも…」
「僕たちの隣りの部屋、用意できるかな?」
半兵衛がそういうと、女将はもちろんです、と言って二階へ上がって行った。
「す、すみません…」
「困った時は、お互い様だよ…」
「お互い様…?」
は半兵衛の言葉に違和感を感じたが、すぐに消えた。
優しく手を取って引いてくれたからだった。
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漫画のほうと展開が被りそうだったので(十分かぶってる…)
ちょっと曲げてみましたが…いろいろ違和感出てきたらすいません…
大丈夫かな…ウ、不安…でも多分大丈夫…
半兵衛さまに遭遇です。