ぺらぺらと捲り続けるが、まだまだ見終わりそうに無い。

すでに外は夕日で赤くなっていた。

「そろそろ夕餉、食うか」
「うんー」

はじいいと絵を見ながら返事をした。

今は尾張周辺を見ている。

「…今夜は肉もあるぞー」
「え!?肉!?」

はがばっと起き上がった。
そんなを見て、政宗はぷっと笑った。







夕餉を食べたらまた部屋に戻り、本を二人で読んでいた。

「…ここらへんに…温泉があるらしいな。」
「へえー、景色もいいし、露天だったらいいねー!!」
「ああ、いいな…一緒に行っても…」
「……」

そういうんじゃないって

そういうんじゃないって…!!!!

と、思いながら、は一瞬頭を過ぎった、今の自分達は旅行の計画を立てる恋人みたいだ、という言葉を必死に振り払おうとした。

「…?どうしたよ?」
「い、いえ!!次…は…」
「四国は大丈夫だろ。島津のあたり見とけよ」
「はい…!!ここらへん、かな…」

は、ここ、本当に日本か?と思えるような灼熱の地を描いた絵を疑いながら眺めた。

「…
「はい?」
「政宗様」

小十郎が、膳に酒器を載せて、現れた。

政宗は開け放たれた障子から、空を見上げていた。

今日は、新月だ。

「お酌します。」
「ああ」

と政宗の間に膳を置き、小十郎は政宗の背後に座った。

、無事でな」
「ありがとう、小十郎さん」

政宗の盃に酒を注いだ後、小十郎にも酌をした。


政宗が徳利を持ち、に向けてわずかに傾けた。

「ありがとうございます」

も盃を持ち、政宗に酌をしてもらった。
甘くて、飲みやすかった。
自分のために、そんなに強くない酒を選んでくれたんだとすぐにわかるような味だった。

「…また、来ますから、そのときはよろしくお願いします」
はコトリと、飲み終えた盃を膳に置いた。

「待ってるぞ」

に向かって、政宗も小十郎も笑いかけてくれた。

背後から、何かを引きずるような音がし始め、はすでに用意していた荷物を抱きしめた。


「…じゃあ…」


またね、と言おうとしたら、政宗が自分のを呼んだ。

「はい…?」

政宗の目は、真剣だった。



「…お前と、俺の夢は、交錯することはねえのか?」







ころころと音がした。
の姿は消えていた。
驚いた顔をして、消えていった。

「…はは!!」

政宗は笑った。

「小十郎、あのまぬけな顔見たか?」
「はい。」

「…少しは効いたといいんだがな…」


政宗は転がる小さな陶器を手に取った。

「…あの野郎…俺をちょこっと驚かせようとしたんだろうな…」
「政宗様、それは…?」
「ペンギン、だ」

が政宗にへと、買ったもの。
消える瞬間に、置いていこうと。

「バーカ…」

ぎゅっと握った。

「こんなもん置いていったところでな…驚きも感動もしねえよ…」

月に目を向け、恨めしそうに睨んだ。

「…ただ、寂しくなるだけだ…」
「政宗様」

小十郎は、政宗の背に上着を掛けた。

「小十郎…」
「今宵も冷えますので」
「ああ…」

今度は隣に座り、続きはどうですか?と徳利を持ち上げた。

「…だな」
政宗はニッと笑った。

「…しかし、政宗様」
「なんだ?」

トクトクと、波打つ酒を見つめながら話した。

「あのような別れ方では、は悔しがってるでしょうな」
「そうしたんだ」

互いにククッっと笑う。

はきっと、自分に会いたいと思ってる。

答えを用意して無くても、あんな別れ方をする政宗に、ずるいと文句を言いたがっている。

「俺の勝ちな」
「おめでとう御座います」

早く会いたい、と思ってる。

自分も、も。


それが、いい。











■■■■■■■■
また次新しい展開に突入いたします。
よろしければお付き合いください〜。

…の前に、現代でのお友達とのお話か!!
次の更新時はバサラキャラが爺さんぐらいでしょうが流れ的に読んでいただけると嬉しいです…