「よーし終わった!!」
「おめでとう政宗さーん!!」

筆を置いて背伸びをした政宗に、はぱちぱちと拍手を送った。

朝は結局のほうが先に起きて、政宗が起きると目の前に正座して笑ってるがいた。
おはようございます、というと、政宗はああ…と返事をした後、あー…見てんじゃねえよクソ、と顔を手で隠した。
寝顔も可愛かったが、この反応も可愛かった。

はこのままでいいのか疑問に感じ、いつか来るであろう別れの日の事を考え、少し距離を置いたほうが良いのではないか、と考えていたのだが、そんなことはもう出来ない、と感じた。


…戻ったら、今回は爺さんとちゃんと話をしよう。
これから私が出来る事は、それでいい。
政宗とは笑顔で居たい。


「よーし、気分転換に散歩でもするかー」
政宗が立ち上がったので、も頷いて廊下に出た。

「政宗様」
「お?」
と政宗が庭に下りようとすると、小十郎が声をかけた。

「…と、…」
一瞬躊躇ったようだが、隠す必要もないか…と考えたようで、言葉を続けた。

「川中島での戦、両軍本格的に動き出したようです」
「そうか」

がぴくっと反応したので、この戦にどこが関わっているかは知っているのだなと政宗は思った。

「また動きがあったら逐一伝えるように。」
「はい」
小十郎は言い終わるとすぐにどこかに行ってしまった。

すると次は小太郎がの横に現れた。
「小太郎ちゃん…の服が汚れているのでー…川中島行ってきたの?」

小太郎はこくりと頷いた。

「お疲れ様です」
またこくりと頷いた。

政宗の方を向き、は小さな声で話しかけた。
「…政宗さんは、どっちに勝って欲しいとか…ある?」
「さぁな」
政宗はそう言うだろうと予想はしていたが、聞いてしまった。

「信玄公も上杉謙信も…タダじゃ潰れねぇだろうな…」
「…うん」

激戦になるのだろう。
そのくらいはにも判った。

…もし、川中島に降り立つようなことがあれば、上杉側に助けを求めろ。あの忍の名前を大きな声で叫ぶんだ。」
「え、上杉側…?」
「武田のほうに行ったら、幸村に会う前に騎馬隊に踏みつぶされるぞ。まぁ、猿飛が見つけてくれりゃ、それはそれでいいが。」
「は、はい」

は馬に襲われる自分を想像して、ゾッとした。
回避できる自信は全く無い。

「…そうだ、お前に見せたいものがあるんだ」
「?」

突然政宗に手を引かれ、の部屋に向かった。










待ってろ、といわれ、大人しく座って待っていると、政宗が太い本を抱えて戻ってきた。

「ちと重いな…」
「何の本?」

ドサッとの前に置いて、自身もあぐらをかいて座った。

「開いてみろ」
「うん」

ペラリと2、3枚捲ると、見事な風景画が現れた。

「綺麗…」
「最初のほうは、見たことねえか?」
最初は雪国の絵が続いた。

「ここら辺…?あ、いや、いつきのほう?農村とか…」
「ああ。」
政宗はの手を退かし、ぱらぱらと素早く捲った。

「これを書いた絵師達は、各々が各地を旅して風景を描いてまわったそうだ。」
「すごいね…」
「…と、これは地図」
「地図…」
政宗は折りたたまれた紙を懐から取り出した。
が受け取ってそれを開くと、大まかな日本地図だった。

「いいの?」
「持ってろ。何、一枚やったところでなんも不便はねえ。俺だって持ってる。」
「…ありがとうございます!!」

は懐にそれをしまい、再び本を眺めた。
政宗も覗き込んで一緒に見た。

あるページで、政宗がの捲る手を止めた。
突然政宗の手が重ねられて、ドキリとしてしまった。

「綺麗だろ?」

それは青葉城を山上から描いた絵。
緑が茂り、空は青く、夏なのだろうと感じられた。

「うん…!!」

政宗は直接は言わないが、自分の事を心配して見せてくれている。
自分のために、こんな本を探して、取り寄せてくれたのだろう。
次は一緒にいられないから、 私の不安を、取り除こうとしてくれているのだろう。

「ここは…越後で…こっちが甲斐…」
「うん」
「覚えてるのか?お前?」
「大丈夫!!」

本当に幸せだと思う。

「…じゃあ、甲斐の絵に載っていた木は何の木だった?」
「そこまで!?」
「そこが大事だろ!!!!」
「ええ…木の名前あんまり知らない…」
「なら雰囲気で覚えろ」



また、ここに来よう。


















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うわお短くてすいません!!
そして都合の良い本を作ってるよここの管理人!!
バサラの攻略本か!?