皆で座って団子を食べていると、元就が目の前を走って通り過ぎた。

「あ、元就さんだー」
「何してんだ?」
政宗は立ち上がり、Hey!元就!!と声をかけると、元就は急にターンをし、政宗に寄って来た。

「独眼竜…皆ここにいたのか…よし、我を助けよ!!」
「偉そうだな」
「やかましい!!」
そういうと元就は、の背後に回りこみ、身を屈めた。

「元就さん?」
「や、やつらが…目覚めおったわ…」
元就がうろたえている。
何が起こったのだ、と全員が警戒すると

「元就どこだあああああああああ!!!!!」
「元就さーん!!!!俺が先に見つけたよね!?出てきてよ!!元就さーん!!!!!!!!!!」
「うるせー!!元就ィー!!!俺のとこに来いー!!!!!」
慶次と元親が、だだだだと走って、そう喚いていた。
「…」
あんな風に叫ばれては、勘違いするだろう…

「大丈夫、元就さん」
…?」
はすううと大きく息を吸った。
「けーいじー!!!もーとーちーかー!!小十郎さんも元就さんも私がみっけ!!!!」
「「ええー!?」」
二人は急ブレーキをし、たちの方を振り返った。

「二人して私に何か奢るがよい!!ふはははは!!」
は悪の大王チックに笑ってみた。

「あ、団子美味そう」
「俺も食うー」
「あ!!話逸らした!!」
慶次と元親も店先の椅子に座り、団子を注文した。

「……奴らにそのような扱いをされてまで、我を助けようと…」
「…もうどうでもいいっすわ」
元就はの背後で感動していた。

「瀬戸内に来たら、我を探すのだぞ?
「ありがと、元就さん」
元就は身を屈めたまま、を見上げて、優しい言葉を言い出した。

「…は何回ミラクルを起こすんだ?」
政宗はその元就の態度が信じられない。
「ははは、まあ、ですからな」
小十郎の言葉に、こくこくと小太郎は元気に頷いていた。










昼になり、出航時間が近づいてきた。
皆、埠頭に集まり、言葉を交わしていた。

「世話になったな、独眼竜」
「いいや、こちらこそ、だ。」
「また来るぜ」
「ああ」
元親と政宗は軽く握手をし、互いににっと笑った。

「慶次、お前、たまには家に帰れよ」
「片倉さん…やめてよそんなお父さんみたいな…」

「武蔵!!おめえ、次に会いに来るときはもう少し紳士になってなきゃダメだ!!」
「なんだようっせえなあ…おれさま、しんし、じゃねえか」
「…意味わかっていってるだか?」

皆、各々別れの言葉を言い合う中、は元就にたくさん言葉を送っていた。

「元就さん…お別れさみしい…」
「え、ええい、今生の別れではなかろうに…!!」
「ザビーさん?に、負けないでね。」
「当たり前だ。こちらにまで届くような完璧な勝ち戦にしてみせよう」
「良い知らせ、待ってるよ…。安心して待ってられるけどね…!!」
「あ、当たり前だ…」

は元就が照れるのが楽しくて仕方ないらしい。

そんなに、政宗は笑い、元親は口を尖らせた。
!!元就ばっかりずるいぞ!!」
「あはは、ごめんごめん、元親、慶次、武蔵君、元気でね」
「ひとまとめかよ!!」

元親はひでえ!!と言ったが、は優しく微笑んだ。

「またね!!」

が笑うと、武蔵も慶次も元親もふっと笑った。

「じゃあな」
「またね、姉ちゃん!!」
「行ってきます、ってね」
「…ふん」

四人が船に乗り込むまでずっと手を振り、船が見えなくなるまで、たちはずっと同じ場所に立っていた。

「行っちゃったー…」
「行っちゃったなー」
こくり

といつきと小太郎はしんみりしていた。

「さっさと帰るぞ」
「あ、うん…」
政宗はすぐに振り返り、馬を止めた場所へ向かってしまった。

小十郎もすぐに政宗を追った。

も行こうとすると、いつきがぎゅっとの手を握った。

「いつき?」
「おらももうすぐ帰らなきゃ」
「…そっか」
「明日の朝には、帰る。」
「うん…。あれ?いつき、一人で来たの?」
「来たときは何人か一緒に来たけど…皆仕事があって、先に帰っただよ」
「…一人」
は小太郎に視線を向けた。

「小太郎ちゃん、いつき、送っていってくれない?」
「…………」
小太郎は笑って、こくりと頷いた。
判ってます、といった感じだ。

「え…」
「女の子の一人旅は、危険だよ、いつき」
「…に言われたくねえ…」
それもそうだ…というと、いつきはあはは、と笑った。

、ありがと!!優しいだな!!」

にこお!!と満面の笑みを浮かべ、早く城に戻ろう!!との手を引いた。






馬のもとへいくと、政宗たちが待っていた。

いつきはから手を離し、政宗から借りた馬の元へと走っていった。

ほら、と政宗が当然のように手を差し伸べてきたので、は当然のようにその手をとって、政宗の馬に乗った。

(…こういうのなら遠慮なくできるんだよな…)












城に戻り、明日帰る、といつきが政宗に言うと、そうか、とそっけない返事が返ってきた。

しかし、その夜の夕餉はいつもより豪華な食事が出て来た。

「青いお侍さんは態度で示すだな」
いつきは嬉しそうにもくもくと食べていた。

「態度で示されるのは嬉しいよね」
「素直じゃねえ奴の典型だべ」
「おいこら聞こえてるぞお前らー」

政宗は、といつきが並んで食事をしている向かいに座って同じく食事をしていた。
にこにこ笑いながら、にお手拭をぶん投げてきた。
「ぎゃあああ!!政宗さんの手垢が!!」
「嫌な表現すんな!!!さっき手洗った!!汚くねぇもん!!」
「じゃあお手拭の意味は!?」

はぐしゃぐしゃになったお手拭を綺麗に畳んで、立ち上がり、政宗に返した。

小十郎と小太郎は、何か用があるようで、今は一緒ではない。

「朝飯は要るのか?」
「くれるなら欲しいだ!!」
「わーったよ」
政宗の気配りが微笑ましい。

「……」
このように客観的に見ていると、政宗は随分と優しい。

(本当に、良い人だよ…)

自分は政宗によく締められたりしているが、やはり自分にもこういった気配りをしてくれてるんだろうな、と思うと、なんだかお礼を言いたくなる。
だが、いきなり有難うといわれても困るだろうし、何度言っても足りないだろうから…
「……」
いつか、自分も気持ちを態度で示せればいいな、と思った。

「何にやにやしてんだ気持ち悪い」
「………気持ち悪いて…」

気配り…してくれている…はず…
………………………多分。











今日もはいつきと同じ部屋で寝てしまった。
政宗は一人、廊下に出て煙草を吸っていた。

「政宗様」
「…小十郎」
「なかなかとゆっくりできませんな」
「仕方ねえだろ」

政宗が苦笑いした。
小十郎は空を見上げた。
「…明後日ではありませんか」
空に浮かんでいるのは細い月。

「…なあ、小十郎」
「はい」
「俺はあいつの笑った顔が好きでな」
「…ええ」
「ずっと見てても飽きねぇんだ」
フー、と煙を吐き出した。

「でも、それは俺だけじゃねえな…」
「そうですね」

当たり前の事だったんだな、と言い、ククッっと笑った。

「じゃあ、おれは…あいつの困った顔も、怒った顔も、泣き顔も好きになるさ。」
「皆と同じなど、つまらないですものね」
「ああ」

今まであいつに、いろんなものぶつけてきた気がする。
でも

「…まだまだ、ブン投げさせてもらうぜ」

それしか出来ねえんじゃねえか、と思うようになった。
あいつへ抱くこの感情を言葉にしろといわれても、頭がごちゃごちゃしちまうから、
俺は俺がそのとき思ったことを。

俺はお前がどんなに悲しんでも、俺に怒りを覚えたとしても、受け止めるよ。

だから俺を選べ。


「小十郎はの味方について宜しいですか?」
「的確な助言をするならな」

それについて報告義務を課すほど、俺は鬼じゃねえから安心しろ、と言い、政宗は自室に戻っていった。

も大変だ…」

明日からの食事は大盛りにしてあげよう、と思いながら、小十郎も部屋に戻る事にした。









「小太郎ちゃんー、頼んだよ」
こくり

ーまたなー」
小太郎に背負われながら、いつきはに手を伸ばした。
はその手を握り、またね、畑仕事頑張ってね、などお別れの挨拶をした。

「青いお侍さんもー。ありがとなー」
「美味い米作れよ」
「頑張る!!」

小太郎が、会話が切れるタイミングを見計らって、消えていった。

「お客さんみんな帰っちゃったねー…はくしょん!!」
?」
「風邪か?」
がうう〜…と唸り、手で口を覆った。

「なんかさー…昨晩身震いがしてさ…へくしっ!!風邪じゃないとは思うけど…寒かったのかな…うー…」
「………」

はなかなか敏感だな、と小十郎は思った。

、身震いついでに」
「う?」
「政務手伝え」
「…風邪だ!!寝なきゃ!!」
「もう遅いぜー?」
「え、ちょ、うわあああ!!!」
政宗は問答無用での腕を取って思い切り引いた。



















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ころっころ場面変わる忙しい話ですいません。
2話に分けるには短い上に中身が無い話になりそうだったので…