「、元親」
「あ、政宗さん」
「おう、政宗」
政宗が船に乗ってきた。
「お前らの話は終わったのか?」
「…ああ」
「もしかしてみんなもう準備できた?」
「もう少しで運び終わるそうだ。…、行くぞ」
「はーい」
政宗が手招きすると、はトタトタと足音を立てて行ってしまった。
「懐いてるねぇ…」
ありゃあ勝てねぇか…と元親は頭を掻いた。
「慶次!武蔵君!!おつかいお疲れ様ー」
「姉ちゃんー」
「お、、と、政宗…と、元親」
「おう」
元親が、慶次達が大量に買い込んだ食物を見渡した。
「こんだけありゃあ十分だ。昼過ぎに出港することにしたからな。」
「昼過ぎ…」
が太陽を見た。
「……」
「判りもしねぇことしてんな」
時刻を確認しようとしたが無理で、固まったを政宗が小突いた。
「、」
「あ、そだ」
慶次が武蔵に気付かれぬ様、背後からちょいちょいと指を差していた。
「武蔵くん、道中気をつけてね」
「心配いらねぇよ!!」
「慶次の言うこと聞くんだよ」
「え」
「迷子になったら大変」
「おれさまじゃなくて慶次のほうが迷子になりそうじゃないか」
「そりゃねぇよ武蔵」
慶次が先程まで武蔵を指してた指で武蔵の頭をつついた。
「あはは、まぁ安全第一かな…二人共、また会おうね」
「なんだよ姉ちゃん、しんみりするなよ―。おれさま、姉ちゃんの笑った顔すきだぜ?」
「「「「!!!」」」」
武蔵の口からそんな言葉が聞けるとは…!!
「調子に乗るでねぇ、武蔵…。」
いつきが呆れてため息をついていた。
その後方には小太郎がいて、そうだそうだとこくこく頷いている。
「何を固まっておる。感動のお別れか?大袈裟な」
「あ、元就さん」
元就も馬に乗って現れた。
トンっと身軽に降りて、ふん、と笑った。
「出航はまだか?」
「荷を運んだらだ。ちいと待てよ。」
「…ならばもう少し時間をずらして来るべきだったな。おい、どこか休む場所は?」
「元就さんも、元気でね」
「……我にそのような言葉、不要だ」
「ええ〜?雰囲気じゃん、そういう」
「不要だ!!!!」
そうに言って、元就は背を向けてどこかへ行ってしまった。
「、気にすんな。」
元親はの肩にぽんと手を置いた。
は、あれは悪くない、と笑ったので、元親は首を傾げた。
「元就さん、照れてたよ」
「まじか?」
「お別れのときもっと言ってやろーっと」
何を言おうかな…と楽しそうに考えるを見て、こいつ強ェな…と元親は思っていた。
はくるりと政宗を振り返り、声をかけた。
「そういえば小十郎さんは?」
「海賊さんたちが心配だから町を見回ってるぜ。」
「おいおい、んなに暴れん坊はいねえよ」
元親は心外だと眉根を寄せた。
「まー、まだ時間あるし、俺らも町、うろうろするかー?」
慶次がさりげなくのそばに移動し、背に手を当てた。
「いいねー、おなかもすいたし、小十郎さんに会えるかもね」
「元就さんにもね」
そんな二人に文句を言ったのは元親だった。
「おいおいおい、てめえらはお気楽でいいだろうがなあ、俺はここから離れられねえんだぜ?俺を仲間はずれか?あ?」
「アニキー、俺達だけでも大丈夫ですぜー!!遊んできたらどうですかい!?」
荷を運ぶ船員が笑いながら叫んだ。
「だがよ…」
「俺達は昨夜遊ばせていただいたんでー」
「はあ!?」
船が心配だから、と昨晩港に残った家臣達は楽しそうに笑っていた。
「て、てめえら…」
「あ、アニキ、でも番はしっかり代わる代わる…」
「遊ぶぞおお俺は遊んでくるぞおおおおおお!!!!なんだ手前ら畜生ー!!!!!!!!!!!!!!」
「おわ」
「あ」
元親はそう叫んで、慶次からを奪ってどかどかと大股で賑わう町へ進んでしまった。
いきなり奪われた慶次は、待ってー、とその後を追った。
「…元親もしっかり城で遊んでたじゃねえか」
「なかまはずれがきらいなんだな!!鬼は!!」
「断るけど、一応誘って欲しかったんだべな…」
こくり
だんだん、元親のことがわかってきた四人だった。
大通りを不機嫌そうに進む元親は、町人の視線を集めていた。
「元親ぁー、もう少しゆっくりー…私コケそう」
「ああ!?ああ、悪いなあ!!、どっか楽しいとこはどこだ?」
「楽しいところ?元親の楽しいところ…どこかなあ…」
「宝探しか?」
追いついた慶次は元親の服を引っ張り、落ち着いてゆっくり歩きなよ、と言った。
「宝ねえ…」
「あ、じゃあ、小十郎さんと元就さん探ししようよ」
「おう!!そりゃいいな!!って、言いづらいんだが…」
元親は眉根を寄せてしまった。
「じゃあ、見つけられなかった奴、全員に何か奢るってのはどうだい!?」
「おお、いいじゃねえか」
「え!?」
慶次と元親はまだいいが、は文無しだ。
政宗に借金しなくてはならなくなる…どうしよう…と思ったが、元親と慶次が、じゃあ開始!!と同時に言って走って行ってしまったので、はうわあ!!!と叫んだ。
「どどどどうしよ…見つけなきゃ!!自分が言い出した事だけど…よ、よし…」
「おや、」
「うおおおお小十郎さん!!!!!!!」
が慌てていると、近くの店から小十郎が出て来た。
急いで駆け寄って、袖を掴んだ。
「小十郎さんつかまえたー!!」
「ん?どうした?政宗様は一緒じゃねえのか?」
「政宗さんは港に…小十郎さん、一緒に行動していい?」
「?ああ、構わねえが」
「よかったー!あのね、元親と慶次とね、小十郎さんと元就さん探ししようってなって、見つけられなかったら何か奢らなきゃで…」
「ああ、じゃあ声かけねえ方がよかったか?」
「なんでよ!!!!!」
小十郎がははは、と笑った。
「いや、負ければ政宗様に借りるだろ?」
「そりゃ、そう考えてました」
「政宗様はに頼られると嬉しいだろうからな」
「え」
「あ、政宗様」
小十郎の声に反応し、が勢いよく振り向いた。
「おう、小十郎」
政宗は小太郎といつきと武蔵と一緒に歩いてきた。
「、あの二人は?」
「元就さん探しに行きました…」
「ふーん。」
「、いろんな奴らに振り回されて大変だべ…。青いお侍さんは落ち着いてるし…」
いつきがキッと政宗を睨んだ。
「…なんだよ」
「守ってやらなきゃダメだべ!!」
「………」
小太郎は自分にも言われてる気がしてきた。
「いつき、守ると束縛は違うぜ」
「だけども…」
「………」
小太郎はまたもや自分にも言われている気がした。
「あーもー、いいじゃんなんでも!!!姉ちゃんーおれさまはらへったー!!団子くおう!!なあなあ、買ってー団子ー」
武蔵はの腕を引きながら、小十郎におねだりしていた。
「仕方ねえな…買ってきてやる」
「ありがとな!!」
「小十郎さん、すみません」
は小十郎にお礼を言った後、武蔵をじっと見た。
「どうした?姉ちゃん?」
「武蔵君は、いいなあ…」
「?」
頼られると嬉しいだろう、といわれても、自分は武蔵のように無邪気におねだりなどできない。
これ以上迷惑はかけられない、という気持ちがまだあるのだろう。
「どうした?二人とも」
しっかり全員分の団子を買って、小十郎がすぐに戻ってきた。
「…小十郎さん、そのうちさ、また相談していい?」
「…?答えられるかどうかは別だぞ?」
「ありがとうございます…」
ちらりと政宗を見て、
は、素直に甘えられない自分にため息をついた。
「…俺見てため息ってなんだよ…」
「あひゃ、ふいません…」
政宗はの頬を思い切りつねって引っ張った。
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出航までの暇つぶし話
大変、元親がめんどくさい人になってる