元親と元就さんが帰ってしまう。

慶次と武蔵も行ってしまう。

「寂しくなりますなあ…」
「静かになるじゃねえか」

は政宗といつきの間に座って茶を飲んでいた。

「…おい、いつき、おまえはいつ帰るんだ」
「もうちょっと居たいんだ」
「用は済んだくせに…」
「いつきまでいなくなったら寂しいー」
はお茶を置いて、横からいつきを抱きしめた。

「!!!…!!政宗に寂しい思いさせられてんだな…!?」
「…なんだと?ふざけんなよいつき。俺らはしょっちゅう一緒に寝たりしてんだぜ…?」
「ちょ!!政宗さん!?いつきにそーゆーこと言うのは」
「体と気持ちはまた別だべ!!!!!」

…あっ

いつきちゃん

今、体って言った?

それなりに知識あるのか…と思い、も政宗もそれ以上のことを言うのはやめた。

いつきはアイドルなので、変な発言はさせないようにと。


「………」
「ん?」

政宗がじっとを見つめた。

「…何?」
「…いや。まあ、ちょっと、俺は行く。」
「あ、うん…」

政宗は立ち上がり、部屋の中に行ってしまった。


「……」
「…何だべ、政宗。さっきまで、俺とを二人きりにしろ!!って、おらと取り合いしてたのに…」
「あはは、嬉しいよ」

朝から、政宗は考え事をしているのか、たまにぼーっとしていた。

「おら、本当に邪魔だべか…?」
「何言ってんの…政宗さん、何か考えてるみたい。ほら、領主はいろいろあるわけだよ。…私が、不在にさせちゃったし…」
こそ何いってるだ。領主ったって、いっつも国さいるわけじゃねえ。そんなに影響がでるとは思えねえよ」
「うん…ありがと」

今度はいつきがに抱きついた。

って、頼りになるとおもってたんだけど」
「いつき?」
「政宗の前にいるは、何だかとっても可愛いべ」
「は!?」

どういう意味かすぐに理解できなかったが、なんだか恥ずかしくなった。

こ、媚びてたかな!?
無意識のうちに!?
いやそりゃ政宗さんはかっこいいけど、そんな…

「一所懸命で、可愛いだ」
「え…」

一所懸命…気張ってたかな…

「…政宗さんにしてみたら、迷惑かな…?」
「迷惑?」
「政宗さんは、私が頑張んなくたって、大丈夫なんだろなって…私は政宗さんが居ないと…」

言って改めて思った。

…そうだね。

私、政宗さんがいなかったら

いつ死んでたっておかしくなくて

政宗さんに会うって目標がなかったら、二回目こっちに来た時、どこにも進めなかった。

政宗さんに影響受けなかったら、いつきを助けようなんて思わなかった。


は、政宗がいないとダメなんだべか?」
「…うん、きっと、だめ」
「でも、それは政宗と会ったからだべ」

…いつきって…

「政宗に会ってなかったら、別な誰かと会ってただよ」

私より

「そんな事言ってたって、仕方ねぇだよ」

しっかりしてんな…

いつきがにっこり笑った。
「でも、政宗は嬉しいべ。こんなにに想ってもらって」
「……」

いつきの言葉は素直で綺麗で、なんだか本当に恥ずかしくなる…

「……」

もし、来た時期が、爺さんが武田との同盟破棄してるときだったら、

幸村さんたちと会ってたのかな…

それで、幸村さんや佐助に出会って、今の私にとっての政宗さんみたいな存在になって…

……………本当だ。

考えてもどうしようもない。

私が来たのはここなんだから。

「…そうだね」

めんどくさい女かもしんないけど

不安になったら、政宗さんの近くに行けばいいよね。

きっと安心する。






「あ、元親」

ざっざっと足音を立て、元親が現れた。

「元親、準備終わっただか?」
「今、港で食料調達してんだ。行くか?雪ん子」
「行く!!」

いつきが勢いよく立ち上がった。

船というものを見てみたいと、いつきは朝、元親にお願いしていた。

も行くだろ?」
「うん、行く!!」

慶次と武蔵も、乗せてもらう代わりにということで食料調達に行かせてるらしい。

いつきは馬に乗れるというので、は元親に一緒に乗せてもらって港を目指した。








すっと障子を開けると、元就が胡坐をかき、目を閉じていた。

「…遅いではないか」
「お見通しってか」

ゆっくり目を開けると、政宗が正面に座って笑っていた。

元就も口元を上げた。

「判ってんなら話は早いな?お前だって豊臣は気にくわねぇだろうが」
「独眼竜」
「なんだ」
「焦るな」

元就の口調が強かった。

「我は確かに島津となんらかの繋がりはもつ。しかし、あの海賊の馬鹿がそれに危機を感じて三国同盟…なんてさっさと進むとは思えん。何よりその前にザビーだ。」
「…元親だって、ザビーを潰したがってる」
「参加などさせぬ。なんとしてでも止める。四国までザビーに目を向けるなど危険だ。お前の気に食わない奴らがな…」

政宗が言葉を止めた。

「…北から南から挟み撃ち…すぐにそんなことができたらなんと簡単なことであろうな…」
「問題があるのは判ってる」
「判ってるとは思えん。お前は焦っている。…そんなことを言うからには、武田、上杉、徳川…それに対してはなにか策があるのか?」
「………」
「…そうだ。言わなくていい。べらべらと喋られては不快だ」
「…軽率だってのは頭にあった…」
政宗ががしがしと頭をかいた。

「ただ、今日お前らが戻っちまう…何にもせずに帰すのが惜しかっただけなのかもしれねえ」
「それだけでこんな話を持ち出すとはな…」
「あああうっせ!!判ってる!!」
「…が作った繋がりを信じたか?」
「……」

元就は相変わらずの自分を馬鹿にしたような態度だったが、雰囲気は悪くなかった。

「…この数日の馬鹿騒ぎ…愚かだとしばし思う時も有ったが」

元就が視線を政宗から逸らした。

「そんなに悪くはない」

その言葉は本音のように思えた。

「…お前のその切羽詰った顔、覚えといてやろう」
「てめえ…」

政宗はキッと睨んだが、元就はにやっと笑った。

「独眼竜…お前が望むのはなんだ?」
「…天下だ」
「そうか。我が望むは毛利家の繁栄だ」
「…あっそ」

政宗は外に目をやった。

皆には、武田と上杉の戦が終わった後、勝者との同盟を考えているとだけしか言っていない。

小十郎に一度相談すべきだったなと考えていると


「お前が天下をとった後、毛利家の安泰を約束できるか?」


政宗は驚いて元就を見た。

「今の言葉、覚えといて良いか?」
「勝手にしろ」



外から、元就様〜と呼ぶ声が聞こえ、元就は立ち上がった。

部屋から出る寸前に肩越しに振り返った。

「…しかし、我は豊臣を潰したいとはとは言っておらぬ。竹中半兵衛、あやつはなかなか侮れん」
「ああ」
「精々、我のご機嫌取りをするんだな」
「ご機嫌取りなら任せろよ。こっちにはがいるんだぜ?」

政宗がにっと笑った。

「…それもそうだ」

元就も微かに笑った。


ギシギシと音を立てて、元就は行ってしまった。

「まー、なかなか上手くはいかねぇし、すぐには信用しちゃいけねえって事だし」

とりあえず

目先のことからクリアしていかねぇと

けど、元就は何とかなりそうだ。


「…あいつの無防備に感謝か…」

単純な思い付きだったが、もしかすると実現するかもしれない。

政宗はごろんと寝転んで、天井を見つめた。


今は自分と元就の接触はなんとしてでも隠しておこう。

「元就がここにいること…中国じゃ必死に隠してるだろうし、幸村達…から漏れることはないだろう…危ないのは…慶次…?」

ふらふらしてる奴だが

半兵衛に早々と情報を漏らすなんて事はしないだろう。

「…あ、いっちばんあぶねえの、じゃねえか…」

忘れてた。

あのお気楽。

さっき名前を出してたのに。

誰にも話さないよう、言い聞かせておかないと。



「…


の為に急いてる自分がいる。

の存在が大きくなってる。





















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いつきはしっかりしてると思います…
良い子。