宴会はすでに始まり、男達の騒ぐ声が聞こえる。

「小十郎、、遅ェぞ」
「申し訳ございません」
「ごめんなさい政宗さーん」

慶次と元親と元就と一緒に飲んでいた政宗に声をかけ、その近くに座った。

「あれ?いつきは?」
「一気飲みして気持ち悪くなった武蔵を介抱してる」
「いつき優しいー」
「冷やして」
「氷づけにしてないよね!?」

ははは、と元親が笑い、小太郎が一緒だし大丈夫だろうよ、と言った。

「おお…小太郎ちゃんが…」

小太郎はそうは思ってないかもしれないが、友達が出来ては素直に嬉しい。

「小太郎ちゃんと武蔵君て仲良くなれるんじゃないかと思ってたんだよ…!!!当たった!!よかった!!小太郎ちゃんに友達が!!」
「そうなのか…よかったな、

「「「……」」」

と小十郎は喜んでいるが

小太郎と武蔵は

の親衛隊みたいなもんで

気が合うかもしれないのは、がいるからで

はもちろん気づいてなくて

「…ま、まあいいだろ…」
政宗はは気付かないほうが良いと判断した。

「よかったなー、祝い酒だ、ほら」
「ありがと元親!!」
「…ふん、なんでも良い様に解釈しおって…」
「ま、そこがの良い所ってね」

は元親に注いでもらった酒をゆっくり飲み始めた。


「そういえば、武蔵君、成実さんと対決したの?」

ちょうど酔っ払って騒いでいる成実さんの姿が見えたので、先に行かれた事は別に気にしていないから、と笑顔でアピールしながら、明るい声で政宗に話しかけた。

「一戦だけな。武蔵なかなか口だけじゃねえようだぜ?」
「…小十郎は認めません…あんな技…」
「そう言うなよ。勝ちゃあいいんだって、何だろうとよ」

は、政宗さんが褒めてたよ、と武蔵に言ってあげようと思った。

なんだかんだで喜びそう。

「その武蔵な」
「ん?」
慶次がに向かって話し始めた。

「明日、俺と一緒に大阪城目指すから」
「…へ?」

以外は驚いていないので、皆にはすでに話していたようだ。

「な、な、なんで…?」
「戦いてェんだと」
元親が楽しそうに笑った。

「元気な餓鬼は羨ましいねぇ」
「貴様は元気じゃなかったしな」
「…元就…俺の傷抉って楽しい…?」
「すこぶる」
「元就…」

元親は寂しげに小十郎の野菜を口に運んだ。

「武蔵君の面倒ちゃんと見てあげてね、慶次」
「とりあえず、行く前にが武蔵に、大人しく慶次の言う事聴くんだよ?って言ってな?」
「ま、まあ、うん」

そんなことしなくても、慶次なら大丈夫な気がするが…

「あ、元親と元就さんは?いつ帰るの?」
「明日も泊まりてェな」
「元親、我は早急に帰る」
「…奥州もう少し見たい…」
「することがある。あまり国を不在には出来ん」
「……俺らも、明日帰るよ…」

元親は負けました。

「あ、じゃあ乗せてってよ」
「仕方ねえな…」
「やりい、早く着く!!飯代も浮く!!」

慶次は大きくガッツポーズをした。


「…慶次、頑張ってね」
「…おう。良い知らせ、にするからな。」

二人の、はにかんだような笑みに

政宗たちはちょっとびっくりした。

……こいつら、なにか、あった?

慶次が秀吉のところへ行くのは、過去のいざこざについてケリつけたくなったからと

それだけしか聞いていなかった。



「もー!!!!信じられねぇだ!!女の子の前であんっな堂々と吐くだなんて!!!!!!!!!」

どすどすと思い切り足音を立てて、いつきが戻ってきた。

「あ!!!もう聞いてけろ〜!!武蔵ってやつありえないだ!!!」
いつきはを見つけると、すぐに隣に座って腰にしがみついた。

「武蔵君は?」
「寝ちまったから、部屋に置いてきた!!!の忍が抱えていってくれただ!!」
「そっか、小太郎ちゃん、お疲れさん」

そういうと、天井裏から小太郎が現れた。

「…そこにいただか…おらには判んなかった…よく判るなあ…」
「あはは、ありがと!!」

は小太郎に一杯お酒を注いで、頭を撫でた。


、俺にも」
「ああ、はいはい」
政宗が盃をに向けた。

「俺にも」
「我にも」
「あ、ああ、はいはい」
「じゃあ、俺もお願いしよう」
「ま、待ってー、小十郎さん…!!!」

急いで注いで回るを見て

「…、もてもてだな…」
こくり

いつきは感心していた。

「実はおらの村にもに憧れる奴が結構居てな…」
「……」
「…なんでもないだ…」

小太郎の殺気を感じ取り、いつきは大人しくなった。








いつきはさすがにお酒が飲めない。

そして夜更かしも出来ないという事で(子供で可愛いなあと思ったら、お肌が荒れる!!と言われた…偉いなアイドル…)

といつきは早く部屋に戻る事に。

いつきと並んで布団に寝ころんで向かい合って、眠くなるまで、いつきの村の話を聞いた。

あのあとどうなったのかとか、みんな元気にしてるとか、そんな話を。

「…
「ん?」

「おらは、戦なんか、なくなればいいって、思ってるけど」
「うん」

が居たときの戦は、忘れたくねぇ」
「…いつき?」

いつきはにこっと笑った。

「おらたちも、やれば出来るって思えた。が撃たれたとき、本当に怖かった。」
「…?」

「本当に、足に力入んなくて、手が震えて、信じられなくて、…死ぬ事が怖いって、改めて思った」
「消えて、ごめんね、いつき」
「それは謝らなくていい」

いつきの手が伸びてきたので、も手を出した。

ぎゅっと握られた。

「自信がついた。けど、生きたいって思った。一揆が怖いって思った。」
「うん…」
「政宗が領主になってくれた。おらたちはこれ以上、戦わなくていいって言ってくれた。…おらたち、喜んだんだ」
「…そっか」

「…、ありがと…」
「私は…そんな」

「感謝させてけろ」
「…いつき…」

「ずっと、ありがとうって、言いたかった。…」

いつきの握力がどんどん弱くなってきた。

「いつき、おやすみ」
「…ずっと友達でいてけろ…」

「うん…」

すうすうと寝息が聞こえてきた。


解いた髪が顔にかかっていたので、指で優しく退けた。

「……」


キキッ

「!!」

廊下から、夢吉の声がした。

「……」

はふっと笑い、障子を開けた。

















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外伝の慶次の過去がとっても気になります…
予想と全然違ったらどうしようかと…!!