たちが城に入ったのは、日が暮れる頃だった。
お約束になりそうな女中さんたちとの再会の感動を分かち合ったあと、各々部屋を割り当てられ、はいつきと一緒に過ごしていたのだが
「さん」
「篠さん」
小十郎様が呼んでいるから、部屋に行くようにと言われた。
篠さんも同じ方向に用があるようで、一緒に向かう事にした。
そこで、気になった事を聞いてみた。
「…篠さんはさ」
「はい?」
「…政宗さんの小さい頃とか、知ってる?」
「小さい頃、ですか…」
うーんと悩んで
「小十郎さまに聞いたほうが…私がこちらへ来たときにはすでに小十郎さまがいらっしゃいましたから…。いろいろあったようですが、私は笑顔の梵天丸様をお見かけする事が多かったですわ」
「あ、あの…」
篠さんの言葉が引っかかって、急いで言葉を足した。
「政宗さんの傷を抉りたいんじゃ、ないの…ただ、あの、」
「そのように思ってませんわ」
「え」
「知りたいんでしょう?政宗様を」
「…」
…間違っちゃあ、いない…
「なおさら、小十郎さまに、えと、ぱす、ですわ」
「…」
可愛いですね〜…その言い方…
小十郎の部屋に着いたので、は中にお邪魔して待つことにした。
しかしすぐにすっと戸が開いた。
「小十郎さん」
「…やっと解放された…待たせて悪かった…」
あからさまに疲れた顔をして、小十郎が入ってきた。
「解放…?」
「会議が終わったあと、政宗様に引きずられて…部屋で、の世界すごいすごいと…」
「……」
政宗さん…
「くるま…がっこう?でんしゃ…やら、…良く判らん…」
あんなに平然そうにしてたのに…
「自動で扉が開くとか…嬉々として話すから、いつ離してくれるのか不安だった…」
心の中、すっごいはしゃいでたんだ…
そう思うと政宗がなんとも可愛く思えて仕方が無かった。
しかしすぐにはっとして
「会議って…、あの、私は、何か罰…」
「あ?ああ…え?いや別に…」
「え!?」
何言ってんだ?といった顔をされ、は心配しまくっていた自分が恥ずかしくなった。
「え、え、あの、お咎め無しなんですか?だって、私、政宗さんを不在にさせて…」
「咎めて欲しいのか?しかし、聞いたところによると、が衣食住、すべて政宗様の面倒を見てくれたのだろう?礼を言う。」
「ええ!?」
小十郎はむしろ頭を下げてしまった。
「止めてくださいよー!!なんで!?なんでこんなに平和!?」
「はは、政宗様は、刺激になったと言っていた」
「し、刺激…?」
「政宗様は、先しか見ていないようだぞ?」
「……」
んじゃあ明日から
また天下を目指して張り切るのですね…
「私、女々しい…」
「女だからいいんじゃないのか?」
「…ですね…」
「今日は宴を開くから、もそんなに気にせず楽しんでくれ」
「…小十郎さん」
「ん?」
小十郎はに礼を言うために呼んだようだ。
話が終わりそうだったので、今度は自分の話を聞いてもらおうと思った。
「政宗さんて、今まで、その、女性関係とか、どうだった?」
「女性関係…?俺はそういう話はあまり聞かないな…」
「そ、そうなんだ」
「…え、、その…」
「ん?」
は、政宗様と何か無かったのか?と聞きたくてしょうがない小十郎だった。
…政宗様、奥手すぎやしませんか…!?
「あの、あのね、小十郎さん」
「ん?」
が小声になり、小十郎に近づいた。
内緒話をしたいようだ。
「どうした?」
「私、政宗さんをどう思えばいいのかな」
「どう、とは…?」
は
政宗に、お前に愛されたいと言われたことや
気に入ってるといわれた事や
自分が思った気持ちを、小十郎に話してみた。
「…政宗様が、そんな事を」
「私、政宗さんのこと好きなんだけどな…政宗さんの気持ちって、なんか複雑で、よく、判んないかも…」
「そうだな…」
小十郎は、の様な子を捕まえて何と欲張りな主人だろうと思った。
「そういうのは、感じたままでいいと思うんだが…政宗様の場合は…に、望みすぎだな」
「…え?」
小十郎は困惑するの肩に手を置いた。
「母がくれるはずだった無償の愛だとか、女としての恋心とか、…妹の、兄を慕うような気持ち…」
「…?」
「全部、から欲しいんじゃねえのかな…」
「へ…?」
「失ったもの、欲しいと思うもの、全て、がくれるような気がしてるのかもな」
深く考える必要は無いんだと、小十郎は笑った。
「政宗さん…そんな事を…」
「そんな気持ちにさせたのは、ありのままのの姿だ。はそのまま、政宗様と一緒に居てくれ。無理に変わろうとしなくていい。」
「う、うん…」
は、何だか気持ちが軽くなった。
小十郎さんに言ってみてよかった…
「!!」
気が抜けて、小十郎に寄りかかってしまった。
「…?」
「じゃあ、小十郎さんは、政宗さんのお兄ちゃんとお父さん役で、私がお母さんと妹役?」
「…そうなるかもなあ。、恋人役は?」
「うーん、それは今は別問題ー。」
「…そうか」
残念だと思いながら、小十郎はの頭をなでた。
…こんな姿見られたら、さすがに政宗様も怒るだろうが…
俺も、二人が居なくて寂しい思いしたんだからこれくらいいいでしょう?
「…あれ…?」
「どうした?」
「…風?」
「…」
頬でかすかに感じる程度の風が
次第に強くなり
「え…」
「大丈夫だ、」
小十郎はを離して立ち上がった。
びゅうっと突然部屋に小さな竜巻が現れた。
「なーにしてんだか。お二人さん」
「あ!!佐助!!」
そこから現れたのは佐助だった。
「…片倉さん。はいこれ」
佐助は小十郎に文を差し出した。
「…大方の事は政宗様に聞いたが…」
「まーまー、こういうことはやることに意義があるってーか?」
今回起こったことの詳細を書いたものなのだろう。
「それに、旦那のことについても書いてあるし?、知りたいよねぇ?」
「あ、し、知りたい!!」
「というわけで」
「判った。」
小十郎が文を受け取った。
佐助はに向かってにっこり笑った。
「笑えんだけど。からの文を大将に渡すってんでねぇ。俺も読ませてもらったら、可愛い字で、幸村さんは悪くないです、私のせいです、不在にさせてごめんなさい、幸村さんに罰とか無しの方向でお願いします、私に罰なら全然いいです、本当にすいません…って延々と謝罪…大将も笑ってたよ?」
「ええええ恥ずかしっっ!!!だって何書けばいいか…」
「しかも徐々に文字小さくなってるってとこがまた…罪悪感、感じまくりだねぇ」
「仕方ないじゃんよー!!!!」
佐助はふっと優しく笑い
「ん?」
を抱き寄せて
耳元でごめんね、と言った。
「…え?」
小十郎は突然の事でぽかんとしていた。
「…佐助?何が?」
「ん〜…」
を離して、今度は、にやあと笑った。
「に対して不埒なこと考えて?」
「は?」
「な…!!」
はいまいち判ってないようだけど、
片倉さんはいい具合に勘違いしてくれた。
これでいい。
俺の自己満。
「じゃね」
「おい、てめえ…」
小十郎の言葉を最後まで聞かずに、佐助は消えた。
「…よく判んないけど、佐助も忙しそうだね」
「…あ、ああ、そうだな…」
「小十郎さん、内容は…?」
「あ、ああ…」
は特に佐助の言葉を気にした様子はないので、警告しなくてもまあ大丈夫か、と思い、文を広げた。
「幸村さんは罰無し?」
先ほどの佐助の様子なら、それもありうるだろうと、は嬉しそうにしていた。
「…団子は一日一本の刑だそうだ」
「厳罰だ!!!!!!!!!」
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小十郎がいると話がまったりする…気がする…
小十郎大好きだ…