「……」
長曾我部軍の忍がやってきて、小十郎に文を渡した。

「ねーねー、何て?」
成実は覗き込みたくてしょうがないが、人前なので大人しく胡坐をかいていた。

「政宗様はもうすぐお帰りになるそうだ。迎えをしねえとな」
「本当!?ちゃんも一緒だよね?」
「ああ」
「じゃあ何とか安心だね!!」

小十郎もほっと安心した。

「しかし、いつ港に着くかは書いてねえな…」
「ま、でかい船なら嫌でも目立つさ。待とう」
「ああ」







港を見張っていた兵から連絡を受けたのは次の日の午後だった。

小十郎は成実と一緒に港へと急いで馬を走らせた。

「あ、あれじゃん?でかっっ!!!」
成実が港に泊まっている大きな船を指差した。
「ほう…あれが…」

あらかじめ指示を出していた事もあり、野次馬は少ない。

馬から降りた小十郎の目の前に、小太郎が現れた。

「小太郎…お前勝手に行って…」
「……」
小太郎は悪びれた様子も無く、なぜか少しそわそわしていた。

「…?ま、まあ、いい…小太郎。政宗様は?」
「…」
くるりと振り返り、小太郎がすたすたと進むので、小十郎と成実はその後をついていった。





小太郎が一軒の民家にたどり着いた。

「ここか?」
「……」こくこく
「殿!!ちゃん!!」
成実が勢いよく扉を開けると


「…汝に問う…」


「…え」
目に前を緑色した何かが視界を覆った。

「…愛とはなんだ…」

「…なんだこれは…」

小十郎が首を傾け中を覗くと、と政宗がクラウチングスタートの体制をとっていた。

「小十郎!!早く答えろ!!そうしねえと感動再会イベントができない!!」
「小十郎さん!!元就さんに判りやすく説明してあげて!!私達、早く小十郎さんに飛びつきたい!!」
「…なにそれ」

元就は、小十郎が答えるまで道を譲る気は無いようだ。

「…片倉殿、愛って何かな」
「…何だろうな。」

小十郎にも判らないことはある。
目の前の人間を押しのけようかとも思ったが、目が怖いことになっているのでややこしい事になりそうだ。

「…あんた、愛について知りたいのか」
「…うむ」
「愛ってもんが何なのか、気になって仕方が無い」
「……うむ」
「その執着も…1つの愛なんじゃないのか?」
「な…」

元就がよろけ、小十郎と政宗たちの間がやっと開いた。

「小十郎ォォォォ!!!!!」
「小十郎さああああああん!!!!」

と政宗は華麗なスタートダッシュに成功し、小十郎に突っ込んできた。

「政宗様…!!…!!!え、えーと…よ、よし」
小十郎は両手を広げ、避けないと心に決め

「すまねえ小十郎!!!!!」
「ごめんなさい小十郎さん!!!!!」
「ぐげ!!!!お、お帰りなさいませ…」
政宗は胸に、は腰にしがみついた。
小十郎は内臓が圧迫されるのを感じながら二人を受け止めた。

はすぐに離れ
「成実さんもー!!!」
ちゃん、お帰りー!!!殿も!!」
成実にも突っ込んでいった。

「元就、あの答えはどうだったよ?」
「…あの男…なかなかやりおる…!!!」
元就は元親の隣に座り、項垂れた。

小十郎は政宗をゆっくり離し、元親に視線を向けた。

「詳細はまだ判からねぇが…ここまで政宗様とを無事送り届けてくれた事は感謝する」
「あー…まだ判らねえぞ?政宗だけかもしれねぇ」
「…あ?」

小十郎も政宗も元親を睨みつけた。

「Hey、元親…しつこい男は嫌われるぜ?」
「…どういうことだ?まさか…」
の事は知ってる。隠し事にしたかったか?片倉さん」
「……」
小十郎は静かに元親を見つめた。

「…珍しいものがお好きなようだな?」
「珍しい?が?違うね…暇つぶしじゃねえよ…本気で頂きてえからよ」
「…その執着も愛か?元親…?」
元就が消え入りそうな声で話しかけた。

「かもしれねえな」
「…く、くう…何だか判ってきてしまったぞ我は…!!愛とはこういうもの…」
元就はいきなり顔を上げて小十郎をじっと見つめた。

「…え」
小十郎はとっさに目を逸らした。


元親は政宗と睨みあったあと、成実と話をしているを見て 大きな声を上げた。
「なあ!!!!」
「ん?」
「俺はしつこくてうるせえか?」

は酷い言葉など言わないと知っているから
まだ望みはあるんだぜ、と、政宗に宣戦布告をするために話しかけたが

「うるさくない元親なんて、元親じゃないよ…!!!姫若子ちゃんだね!!」
「…あー…そうだね?う、うん、そうだね…うん…えー…そんなことないよ元親は頼もしくてかっこいいーみたいなのは…」

はなかなか思い通りに発言しなかった。



「あれー?片倉さん」
「風来坊…」

大股で慶次が民家に近づいてきた。

「おかえり!!慶次!!」
「ただいま、

「お、戻ったか…ah?どこ行ってたんだっけ?ナンパ?」
「色町じゃなかったか?」
「ちょ…!!政宗!!元親!!俺をそんな風に見ないでって!!!包帯買ってきたの!!」
慶次はが居る事もあり、大慌てだ。

ため息をつきながら、に包帯を渡した。
「…、巻いてー」
「うん!!慶次脱げー!!」
「はいはい、んじゃあ脱ぎまーす」
「……」
と慶次がひどく仲が良さそうにみえる。
小十郎は、これ、政宗様が嫉妬して怒りだすんじゃ…と思ったが

「小十郎、馬は何頭出せる?」
「…え、あ、はい…ええと…政宗様以外には…5頭まで可能かと」
「十分だ。こいつら城に案内するぜ」
「…了解しました」

そのくらいは何でもないようだ。

…信用…なのか?

政宗に何か心境の変化があったのだろうかと、政宗に視線を向けるが、政宗は構わず外に出て、大きな声で叫んだ。

「武蔵!!いつまで通り魔やってんだ!!もう行くぞ!!」
通り魔!?

「ちっげーもん!!!通り魔じゃないもん!!おれさま強そうな奴に決闘もうしこんでんだもん!!」
そう言いながら、武蔵は政宗を見つけて走り寄ってきた。

「もっと厄介じゃねえか!!」
「じゃあおまえがおれさまとと対決しろよ!!」
「城に行ったらあのの近くにいる成実って奴が相手してくれっから!!」
「え…!!う、うん!!」
「……」
小十郎は

政宗様は自分に都合のいい方向に持ってくが、その中でも一番良い人選をするなあと頼もしく思っていた。

事実、成実には訓練より政務の手伝いをさせていたので、運動不足だ戦いたいよーといっつも文句を言っていた。






政宗との乗った馬を先頭にして道中を進む。

「はいはいはいはいちょっと!!!俺、馬苦手!!もうちょっとゆっくり走れ!!」

そう言うのは海の男、元親だった。

が心配して振り返った。
「元親頑張って!!ピーちゃんがアホウドリにならないよう頑張って!!」
「?…どういう意味…」
「モトチカアホウーモトチカアホウー」
「そういうことかあああああ!!ピーちゃああああん!!」

ピーちゃんに馬鹿にされてしまった。

「……」
隣で元就が笑いをこらえていた。

「元就ぃ!!!ピーちゃんにこんな事教えたのお前かァ!?」
「知らぬ」
「アイハスバラシーニチリンヨー」
「お前じゃねえかあああああ!!!!!」
「あはははは!!元就さんおもしれえー!!!!」
慶次は腹を抱えながら笑っていた。


小十郎も自然と笑みを浮かべてしまった。

「政宗様。随分と賑やかな連中ですな…」
「今日、宴開けるか?」
「政宗様が帰ってくるって話で皆はもう俺が何も言わずとも宴の準備ですよ」
「そうか…ま、宴の前にすることはあるがな…」
「……ま、政宗さん…」

「!!」

自分も同席したいと言おうとしたを、小十郎が呼んだ。

には来客の相手をしてもらいたい」
「来客?」
「随分と早くに来たな」
「政宗様の文が届く前に、すでに来てたんです。に会えるまで帰らないの一点張りですから…」


青葉城が、見えてきた。
















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小十郎はみんなと仲良くなれると思うんだ
半兵衛だってなんだかんだで、小十郎に秀吉ののろけ話を話したいなあとか思ってるといいんだ