「…いつまでそうしてるんだ」

政宗は呆れた声を出し、甲板でいつまでも幸村たちが降りた方向に向かって土下座しているのお尻を軽く蹴った。

「…痛い…」
「蹴ったからな」
「心が痛い…」
「なら心の痛みなど気にならないほど、喘がせてやろうか」
「なんでここでS全開だ…」

なんだか政宗の口調が怖くて、は顔を上げた。

「…幸村さんが、怒られたらどうすんの…!!減給とか…なったらああああ…!!!!!!!」
「信玄公宛の文渡したんだろうが。信玄公なら読んでくれるさ」
「う、うん。でも、不安じゃん…」
「どうなったかなんて、猿飛がうちに来たときに聞けばいいだろ。」
「うん…」

政宗がの腕を掴んで、立たせた。

「…ったくよ…そんなお前に朗報だ」
「…なに?」
「俺も文を持たせた。ちゃんと詫びたし、幸村だけに責任を問う事のないよう書いたから、大丈夫だ。」
「政宗さん…!!」

そんな事をしていてくれたとは思わず、嬉しくなって、政宗にしがみついた。

「あああありがとうございます…!!」
「…あー、やっと船旅楽しくなってきた。」

素直なの態度に、政宗も心が癒されていた。










を、一緒に朝日を見ようと呼びに行ったら、はすごく眠そうな顔で出てきて

行こうぜ、というと、うん…と返事してくれたので行こうとしたら、は目を擦りながらふらふらしてて

仕方ないから腕をとって、引いてあげて

でも、はあんまり喋らなかったから、悪い事したかな、と思ったら

日の出見たら、がにっこり笑って

綺麗、って

慶次と見れてよかったって



…そのあと突如現れた元就さんに真似るな!!と蹴られたのは置いといて


「…なー、小太郎さんよ」
「……」

船内では慶次と小太郎が一緒にお茶をしていた。


「…ずっとと一緒に居たんだろ…?ってさ、どんな男が好きかなあ…」
「……」

「…………」

さらにその横には、航路の確認をする元親がその会話を聞いていた。

無理だろ、その忍に恋愛相談無理だろと、つっこみたくて仕方がなかった。


「……」
小太郎が、窓から見える海に視線を向けた。
「…海のように心が広く」

「……」
小太郎が空に視線を向けた。
「あの青空のように澄んだ人?」

「………………」

元親は、え、なにそれ会話成り立ってんの?慶次が独自に解釈してるだけだろうが!!と心の中で思っていた。

「そりゃあ最高な奴だ…。でもさ、心の広さって難しいよな…。俺、が彼女になったらさ、が他の男と会話してたら、何話したんだろって気になるし、もしかしたら嫉妬しちゃう。でもこれって、悪い事かな?心狭いかな?」
ふるふる

小太郎も頑張って慶次の言葉を聞き、考えた。

「……」
小太郎が、淹れたてのお茶に目を向けた。
「え…!!俺が熱い男だって…!?それ、褒めてくれてんの?ありがとうな…小太郎さん!!」

「……………………」

元親は、身体の力が抜けていくのを感じた。

「…つっこむ気が消えた…」

そのとき、ばんと扉が開いて、元就と武蔵が現れた。

「おう!元就!!あいつら見ろよ…お前なんとか言ってやってくれないか…」
「だーかーらー、おれさまは、姉ちゃんのこと好きなの!!」
「…いつ好きになった」
「嫌いじゃないから好きなの!!」
「…どういうことだ」

お前らもかあああああああああああ!!!!!!

船内はある意味非常事態宣言だった。






そんな事になってるとは微塵も思わないは、ただ目の前に広がる海を政宗と見ていた。

「…
「はい」
「…元親に、いろいろと言われてるだろう」

ずっと気になっていた。
けど、政宗の中では、が四国に残ることなど無いだろうと確信していた。

「あはは…ちょっと言われてるね」

…なんで確信していたのかといえば、俺が、未来へ行ったから。

小十郎に、謝る為に、こいつは絶対奥州の地を踏むからだ。
ゆっくり考えてみると、ただそれだけだった。

…けど、それが、終わったら?

また未来へ、何事も無く帰って、次来た場所が四国や中国だったら?

知ってる人間が居て、が安心してしまったら

小太郎もなかなか見つけられなかったら

俺に会うこともなく、また未来へ消えてしまって

味方が増える事はいいことなのだが

自分との距離が広がってしまう気がして

「…いつ、終わるんだろうな」
「…乱世?」
「違う。お前の、このループが…」

…やはり思ってしまう。

ここで終わればいいのにと。

ずっとここに居ればいいのに。

…でも、以前よりもその感情が複雑になっていた。

未来で、の生活を見た。

友人を見た。

勉学に勤しむ姿を見た。

楽しんでいた。

あそこは間違いなくの居場所だった。

俺のわがままで、失わせていいものではなかった。

だからせめて、約束したい。

「…お前に会いたい」
「政宗さん?」

不安定な約束でもいいから。

「…次、来た時も、俺のこと探してくれるか?」
「うん!!」

ためらいの無いの返事に、安心した。

「…な、なら…」
政宗がの手を引き、船内へ促した。

「え、何?」
「血判状をつくらねえと!!」
「………」
発想が殿だった。

「…いらんよ」
「何でだよ!?」
「信じてよ…私だって政宗さんに会いたいって思うもの…」
…!!」

政宗は目を輝かせた。
はどうも自分が保母さんになったような感覚から抜け出せなかった。

「とりあえず、次はいつきに会いたいな…」
「ああ…いつきか…元気な姿見せてやらねえとな」
「うん!!」

政宗が船内に向けて歩き出した。
「奥州に呼ぼう。年貢とか、取り決めしたいことがあるし、ついでだ。」
「あ、そか…年貢…」
もそれについて行った。
「あいつだってあの土地の頭だしな…小十郎にもう一度文出すか…。いつき呼んどけって。」
「小太郎ちゃん大丈夫かな?そんなに往復して…」
「おまえが判断しろ。駄目そうだったら元親に忍を借りる」
「オス!!」



扉を開けて

「小太郎!!ちょっと…」

政宗が小太郎を呼んだが


「おいおい!!はとぼけてる様だが実はしっかりしてんだよ!!俺はの人を看護してる様子を見たんだ!!あいつは立派な奴だ!!よって、俺みたいな世話焼き苦労症に母性本能をくすぐられるんだ!!」
「ちがうもん!!姉ちゃんはしっかりしてるようで実はとぼけてるんだもん!!だからおれさまみたいな強い奴に守られたいっておもうんだもん!!」
元親と武蔵が言い争いをし

は包容力もあるんだよなあ…包まれてんのは幸せだけど、俺もを包んでやらなきゃなあ…。」
こくこく
「…包んでどうする。そんなのは互いの甘えだ。」
「甘えたいって思える奴も必要だぜ?元就さんには居ないのかよ?」
慶次はお得意の恋愛論をし始めていて
小太郎は慶次の言葉を一生懸命聞いていて
元就は頭にクエスチョンマークを浮かべ

「………」

政宗は扉を静かに閉めた。

「……小太郎は無理だな」
「疲れてた?」
「今夜は知恵熱を出すかもしれねえ」
















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政宗と久々にまったりしてみた。

さて船旅も終わりな感じなのですが
話は頭に在れども、次、何編にすればいいのか思いつかない…