「綺麗だなあ、海ってのは!!」
「ねー!!あのね、地平線からの朝日綺麗だよ!!」
「へー!!明日の朝、早起きして見てえな!!」
「うん、見ようよ!!」
「綺麗な景色に、隣には可愛い女の子!!最高だねえ!!」
「え?夢吉って女の子?」
ー!!!!!!!その天然はもう捨てろー!!!」
「キ?」

甲板で、と慶次と夢吉は海を見ながら騒いでいた。

ちなみにピーちゃんは、空をパタパタ飛んでいた。

夢吉を狙いながら。

「……(これはどうしたら良いのか)」
「…
「ん?」

慶次を見上げると、少し頬を赤らめて、口を尖らせていて

「(…なんか可愛いぞ?)どうしたの?」
「…ちょーっと、向こうのほう行かない?」
「あっち?」

慶次が指したのは、倉庫などがある奥のほうで

「あっち、暗いし、あんまり海見えないよ?」
「ああ、うん、だから、都合いいなあと…」
「…え?」
「ほら、やっぱり仲を深めるなら」
ごっっっ
「キ!!」

突如、小太郎が空から降りてきて、慶次のすぐ後方に立った。

「…こ、小太郎さん…」
「…………」

あまりに慶次に殺気を送るので、慶次は冷や汗をかいた。

もうお前との時間は終わりだと言わんばかりだ。

「あー!!忍!!見つけたー!!」
「……」
「武蔵君」
「あ、ね、姉ちゃん…」

だんだん騒がしくなってきた…

ー!!!某達、明日船を降りることになった…!!お別れ寂しいでござるー!!」
「俺様はすぐ奥州に行くけどね〜。いやあ〜、片倉さんには余計な心配かけないように連絡しなかった事とかあるからさあ…。謝らなきゃ…」
「佐助行くのか!!ずるいー!!!!」

幸村と佐助が、だだだだと走ってやってきた。

「あ、明日?佐助ともうお別れ…?早いよ…」
俺様嬉しいー!!もっと言ってー!!」
「佐助奥州すぐ来てよねー」
に会いに行くってー!!」

佐助とががしい!!と手を互いに握った。


「…小太郎さん?」
「…………」
「…佐助がと仲良いのは良いのに、俺がと仲良いと怒るんですかい?」
「………………」

小太郎はまだ慶次の背後に立ったままで、慶次を警戒していた。

佐助もすぐに幸村の元に行きたかったのに、文を届ける仕事は小太郎に任せ、甲斐で慶次の看病をしてくれていた。

幸村の分までしなければならない仕事があったのかもしれないが、とりあえずこれは、貸しだ。

…ある程度は、大目に見てやろう…


「俺も寂しいよ…!!また肩揉みして…!!」
「佐助…!!どんどんオカンになっているよ…!!ってゆーか佐助、全然凝ってなかったよ…!?」

「………」

「いいんだって!!いや何というか、女の子に触ってもらうことに意義が在るっていうか…!!」
「佐助ぇ!!に何を申しておる!?」
「幸村さん落ち着いて!!佐助なんだか疲れてるみたいだし…!!」

「…………」

「ああ、でも、旦那が世話になったみたいだし…俺もの肩揉みするよ…!!」
「い、いいよ、大丈夫…」

「……………」

「いや、触ることに意義が在るっていうか…」

「…………………」


何でそんなに欲求不満だこらああああああああ!!!!!!!!!


と、心の中で叫んで

「あ、小太郎さん限界早っっ」

慶次にそんなことを言われながら、小太郎は佐助に跳び蹴りを食らわせた。

「姉ちゃん…あのさ、あの忍と対決」
「却下。」
「ううう姉ちゃんー…!!」
武蔵がに縋りついてきた。

「武蔵君…」
「おれ、さいきょうになりたいー!!」
を困らせるなど何たる愚行!!!!!!!!!」
「元就さんー!!!!!!!」

元就は、武蔵に向かい攻撃してきたが、もちろんも巻き込んだ。

「言ってる事とやってることがー!!!」
ならば乗り越える!!」
「なんて試練!!!!!」

は必死になって元就から離れた。
ちょうど視界に、びっくりしている元親が見えた。

「元就何してんだー!?」
「元親ヘルプ!!」
「へ、へるぷ?」
「助けて、だ」
「うあ」

の背後から手が伸びてきて、勢いよく引っ張られた。

「ったく、集まって何してんだ…」
「政宗さん」

すっぽり、政宗の腕の中に納まった。

「全くだぜ…まあ、船旅楽しんでくれんのは嬉しいけどよ」
元親がに、言葉わからなくてごめんな、と一声かけると、全員を見渡した。

はてめえらと違うんだからな、優しくしろよ」
「も、元親、そんな、いいよ…」
「見ろ、この細い腕。守ってやるのが男ってもんだぜ」
「元親ー!!照れますー!!」
「俺の嫁に傷つけたらぶっ殺すからな」
「そ、そんなあ、元親…」
そこはつっこむところだろうがああああ!!!!!

政宗が腕に力をこめてを締めた。

「ぎゃああああ!!しかたねえー!!だってこんな素敵な扱いされるの滅多にないしすげえ嬉しいー!!!」
、俺のそばにいればずっと優しい言葉かけてやるよ…だから小姓に」
「ランク下がってるよ元親さん!?」
「はっ!!本音が出たな馬鹿め…!!を敬う気持ちなど皆無なのだろう…!!?己の側近として働かせる気だな…!!」

「え、を敬う?」
「??」
「…佐助、小太郎殿、いろいろあったのだ…。あまり気にしないほうがいい…」
「そ、そう?旦那がそう言うなら…」

幸村がげんなりするなど、よほどのアホな事があったのだろうと思い、佐助はあまり深く関わらない事にした。


「…ところでよ、俺ちょっとに話があるんだが…」
元親がよりも周りに許可を得ようとぐるりと全員を見回した。

「ここじゃできねぇ話なら却下だ」

政宗はもちろんを離す気はない。

「…ちょ…元親サン!!を口説く気じゃないだろね!?」

慶次が元親を指差して怒鳴った。

「船の構造を熟知してるからあんたならを逃げられないよう追い詰めたりできるわけだ…!!暗くて狭いとこにを連れ込んでそこでよからぬことを…!!」

小太郎は、それしたいのはお前だろと思った。

「残念だったな、前田慶次…もうやったんだ、それ」
「ええ!?」
「まあ無理だったけどな」
元親は肩を落とし、政宗はにやにやと笑った。
「…え、何?ま、まさか強姦しようとしたら政宗がやめろー!!って止めてとか…?ちょ…政宗の好感度が超上がっちゃうじゃん!!」
「俺は強姦なんてしねえ!!!!」
「じゃあ何さ!!?まさか酒で酔わせてそれで同意を得てみんなの目を盗んで…あ…!!それで酔いが醒めたに泣かれてそれ以上できなくなって…ええ!?ど、どこまでしたんだよ!?おい!!」
慶次の妄想が徐々に激しくなってきて

「ぎゃあああ破廉恥でござる―!!!」
「ぎゃあああ姉ちゃんはおれが守る―!!!」

佐助は幸村と武蔵は意外と気が合うかもしれないと思った。

慶次は政宗の鋭い視線に気付いて、やっと妄想をやめた。







日差しが強いので皆で船内に入り、暇つぶしをすることに。

「俺はと二人で話がしたい」
「我もには用がある」

瀬戸内コンビは睨み合い。

「…も、元就さん、あの、愛なら慶次のほうが…」
「え?俺?語っていいの?」
「そやつでは意味がない!!!!」
「は、はい」

元就に睨まれて、は背を正した。

「…なんで、そんなにこだわる?」

政宗が口にしたが、全員が抱く疑問だった。

「…我は…」
「何を考えてんだ?元就」

元就はゆっくり口を開いた。

「我らの戦を聞いた島津から、援軍の要請が来ている」
「…島津さん?」
「鬼島津からか?」

元就は政宗をちらりと見た。

「…なんだ?」
「…島津は、ザビー教に、兵を取られ、領地を侵されてると…つまり、潰したいようでな」
「おい?あ、もしかして俺に気遣ってんのか?もういいよ俺あんまり興味ねぇよ。ザビーは」
「独眼竜…!!やはり貴様もの愛が一番だと…!?」
「言ってねーよ!!!」

政宗は調子が狂うと呟き、頭をがしがしかいた。

「あ―…つまり、悩んでたのか、お前」

元親はだんだん理解してきたようだ。

「最初は島津を敵に回してもザビーを援護しようと思ったが…だんだん正気に戻ったわ」
「姉ちゃんのおかげか?」
「黙れ小僧…」
「うわ、もやしのくせに怖ぇ!!」

元就に睨まれた武蔵はの後ろに隠れてしまった。

「島津を敵にするのは厄介…我はザビー教を弾圧することとする」
「元就殿…」
「元就さん…いいの…?一度守ろうとしたものをそんな簡単に…」
「簡単だと?」

元就がをまた睨んだ。

「…えぇと」
「我の思いを揺らがしたくせに何を言うか」
「え、わ、私が!?」
「お前以外誰がいる」
「そ、そんな…それは元就さんの勘違い…」
!!我の考えを否定するか!?」
「ぎゃああごめんなさい!!」

元就に怒鳴られ、びっくりして後ずさっているを佐助は静かに見つめた。

「…旦那」
「む?」
「ちょっと、話があるんだけどさ…」

その佐助の異様な雰囲気から、幸村がその意を悟った。

「…判った。」

こっそりと部屋を出た。







「…そうか、上杉が…」
「悪いけど、休んでる暇が無いんだ。旦那、大丈夫?ちゃんと睡眠取ってた?」
「問題ない」

甲板の人気のない所に二人で座り込んで話した。

「お館様にも佐助にも、迷惑をかけた…申し訳ない…」
「…旦那、何か、あった?」
「…佐助?」

佐助の表情が、心配しているようで

「某、具合が悪いように見えるか?なにも問題はござらぬ!!」

幸村はニコッと笑って見せた。

「…とだよ」
「…む?」
意外な言葉に、幸村は目を丸くした。

「…某…何か、変わったか?」
「なんとなくね…」
「そうか…」

幸村は何も言わず、空を仰いだ。

「……」

何が起こったか、事細かに知ることは出来ないけれど

「旦那」
「ん?」
「戦が始まる」

俺は忍で、旦那は武将で

それは変えられない、変えてはいけないことで

「そうだな」

そこが、生きる場所で

「いつも通り、こき使っていいからさ」
「佐助?」

そこで生きるために、今生きていて

に、会いたくなったら言って」

そのために出来る事は何でもするから

「佐助…」

忘れてはいけない事を、忘れないで


が、邪魔になったときも、言って」


旦那は、元就とは違うけど
大将のことしか頭にないけど

あの影響力が、時々怖い


旦那の心を乱すなら、俺が


「…さすけ…?」

そんな事、言うわけござらぬ、と幸村が言うのは予想していたから

佐助は幸村ににっこり笑ってみせた。












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こんなところでまさかの佐助ですいません。
佐助は忍っぽいからなあ
主のためと想ったらなんでも出来そう
続きます