甲板に出てうろうろしていると

「元就さん、何してるんですか?」
「日輪の加護を…」
「…」

光合成みたいなもんかな…

元就は漁でみなさんが忙しそうにしている甲板に堂々とあぐらをかいて座っていた。

も座るがよい。お前にもきっと力をお与えくださる…」
「あははは…私はちょっと…」
「用があるのか?」
「小太郎ちゃんがいなくなっちゃって…」

元就が立ち上がった。
充電完了らしい。(ソーラー?)

「主に心配かけるとは…とんでもない忍だな…」
「あ、あの、私、主じゃなくて友達なんです」
「…はぁ?正気か?」
「はい」
「…まぁいいか。我は見なかったな…。よし、我も探してやろう」
「ありがとうございます!!小太郎ちゃん、高い所好きだから帆のところ行っちゃったのかなて思ったんですけど…」

二人で上を見上げるがそれらしき姿は無い。
「…」

はしゅんとして俯いた。
小太郎が消えたのは、慶次のことを詳しく聞こうと風邪がすっかり治った小太郎に話しかけた瞬間だった。

…いいたく、ないのかな…

…慶次…どうしてるんだろ…

無事みたいだけど…

…慶次…


「…落ち込みすぎだぞ!?ちょっといなくなったくらいで…」
「え、あ、あぁ…ごめんなさい…」

すたすたと歩いて行ってしまう元就をは急いで追った。

船内にずかずかと入ると

「あ、元親!」
「ん?」

船を操縦していた。

「なんだ?操縦したいとかいうなよ!?」
の忍を見なかったか」
「あいつならどっか行ったぜ」
「え!?」

気がつくと居なくなってるのは珍しくなかったが船から消えるとは…

「俺に書き置きしてったぜ。なるべく陸沿いを進んでくれって」
「陸沿い…?」

ということは本土に行ってしまった…?

「どうしたんだろ…」
またがしょんぼりした。

「元親。書き置きはそれだけか?」
「そうだ。、心配すんな!!そうだな…」

元親がに手招きした。

「こことここを掴んで」
「いいの?」
元親が舵を掴ませてくれた。

もちろん元親の補助付きだが。

「いいか?今は政宗や幸村やこの船に乗ってる全員の為に舵を取ってる」
「うん」
「忍が戻ってこれるような航路を選んで進んでる」
「うん」
「どうだ?」

みんなの為に行動してるってのは

「…嬉しい」
「楽しいか?」
「うん!責任重大だけど…!!」
「はは!そうか!!元気でたか?」

は緊張しながらも少し笑った。

「慌てずゆっくり、流れを選んで進まねぇとだめだ。不安定な船になんか誰も乗りたくねぇよ。も堂々としてな!!忍の帰る場所はお前なんだ。いちいち心配されてたら忍はどこにも行けなくなるし帰りたくなくなるぜ?」
「う…」

痛い所を突かれた…

「心配しないのは悪いことじゃねぇ。信じてるとも受け取れる」
「…うん!!」

小太郎ちゃんはそばに戻ってきてくれる。

私は元親の船みたいにしっかり構えて待ってなきゃ。

「ようし!!」
「あぁこらこら、力むな!!」
「え、あ、ごめんなさい!!」
「はは、まぁ俺が手を貸してる間はお前の力の心配はいらないがな!!」
「非力だって言ってる!?うっわぁ悔しいなぁ!!」
「本当だろう?」

あははははとくっついて会話する二人を元就が不機嫌絶好調で睨み付けていた。

「…待つことにしたならさっさと行くぞ」
「も、元就さん!?」
の襟をつかんで元就はすたすたと船室から出て行ってしまった。

「あっ…〜…って…クソ、もう少し話したかったな…」

操縦交代したら即行でを奪って部屋に連れ込んで未来の話や世界の話をしようと考え、元親はにやにや笑った。
楽しみで仕方がないようだ。



元就はまた甲板に出て、太陽を仰ぎ見て大きく深呼吸した。

「ああ…日輪よ…」
「元就さんは日輪が大好きなんですね」
「我は日輪信仰だ…は?」
「私?」

元就はをじっと見た。

「貴様はザビー様のように語ろうとしないな…だから我は貴様を信仰するに踏み切れぬ…」
「わ、私はそういうことは…」
「語るなんざ誰でもできる」

すたすたと、政宗がやってきた。

「立ち聞きか…趣味の悪い…」
「ha!!人聞きの悪い…たまたま聞こえて来ただけだ」

政宗がの腕をつかんで自分の元に引き寄せた。

「こいつは口じゃねぇ。全身で示す。」
「判ったような口を…」
「判ってるんだよ」
自信に満ちた笑いを元就に向けた。

「気に食わぬ…」
の事が知りたいならウチに下るか?」
「小太郎ちゃんと中国に遊びに…もが」
政宗がの口を覆った。

「ふざけたことを…」
「ふん…気が向いたらいつでもどうぞってな」
「ふがががが」
の口を覆ったまま政宗はを連れていってしまった。




幸村が甲板の隅に座り込んだままこちらに手を振っていた。

政宗がの背に手を添えて幸村の元に促した。


「ん?」

歩きながら政宗がに小さい声で話しかけた。

「俺は傲慢か?」
「傲慢…?」
「判ってるなんて」
「…」

さっき元就さんに言った言葉…

「ううん。嬉しい」
「…なら、いい」

幸村が立ち上がってゆっくりと政宗に近付いた。
「どうした?」
「何もねぇ」
「そうか?」
「ってゆーか何でこんな隅にいるの?」

幸村が眉根を寄せた。

「武蔵殿が戦え戦えと俺達に迫るのだ…」
「なるほど。逃げてるのね…」
「ああ!!見つけた腰抜けやろー!!」

どたどたどたと大きな音共に武蔵が接近してきた。
政宗と幸村がげんなりした。

「…、任せた」
「え!?」

二人はの肩をぽんと叩いた。

「あ、姉ちゃんも一緒か…」
「武蔵君、大人しく出来ないの?ここは船の上だよ」
「退屈なんだもん!!」
「だからって暴れちゃだめ!!」
「う…ちぇっ…」

が睨み付けると武蔵がどっかり座り込んで武器の手入れを始めた。

政宗と幸村は心の中で拍手した。

も座り込んで今度は武蔵に笑いかけた。

「これ、手作り?」
「自分で削った!!丈夫だぜ!!お前らなんかに負けないぞ!!」

びしっと武蔵は二人を指差した。

「言うじゃねぇか…」
「しかし手作りにしては立派だ」
「だろ!!」
「そうかぁ?」
「政宗さん…こらこら…」

は政宗をぽんぽん叩いた。

「おれさま今まで戦って来て負けなしなんだぞ!!…あ、でもな、さっきな、姉ちゃんの忍が居たから挑んだんだけど…」
「え、小太郎ちゃん?さっき?」
「あいつおれを一発殴ってどこか行っちった!!なあ、それおれ負けじゃないよな!?もう一回戦っていい?陸に着いたら!!お願い姉ちゃん…!!」

武蔵が必死な顔でを見つめた。

「小太郎ちゃんに聞かなきゃ判んないから私にお願いされても…ね、小太郎ちゃん、いつくらいに見たの?」
「さっきだよ」
「さっき…」
幸村が座り込んだ。
に何も言わず行ったのか?」
「行った…?」
「先程俺のところに来て、紙を指差すから文を届けてくれるのかと思ってお館様と佐助宛てに文を書いて渡してしまった…」
「俺もだ。小十郎に文書いて渡した」
「…あれー…」

…まあ、私と小太郎ちゃんは主従じゃなくて友達だし…

…な、なんかさびしい…!!

「こ、小太郎ちゃん、気が利くなぁ…!!うん!嬉しい限りね!!」
…うろたえなくても…」
「だだだ大丈夫だよ!!やだなぁ幸村さん!!」

政宗はふと思った。

…あいつ、もしかして…

少しだけ笑った。

「明日には戻る」
今度は政宗がをぽんと叩いた。

「ま、待ってるよ!!大丈夫だし!!」

そう、この船のようにどっかりと

しっかり、信じて待って…

…………

「元親―!!私にもう一回喝入れて!!しっかりしろって喝―!!」

「お、おい!?!?」

は船室に駆け込んで行った。

しばらく、

鬼の名を言ってみろ!!
モ・ト・チ・カ!! 

と、に喝を与えてるのかどうか判らないと元親の叫びが響いていた。









■■■■■■■■
小太郎がちょっとお出かけ。
そんなに身体能力高いんですかすごいですねという感想というかむしろつっこみは
バサラだからということで…(ヒイ