軽い足取りで廊下をすたすた歩く。

目的地にたどり着いて

!!」

にこにこしながらの部屋の襖を開けた。

座り込んでいたはビクッとして、幸村を見て数回瞬きをした。

「幸村さん…ど、どうしたの…?」
「元親殿が飴をくれたのだ!!おすそ分けにきた!!」

幸村が飴玉を1つ取り出して、に差し出した。

「ありがとう」
幸村はの正面にあぐらをかいて、座った。
が受け取った飴をさっそく口に入れた。

口の中が一気に甘くなる。

「というのは口実だ」
「ん?」
と話がしたかった」

幸村はにこにこしたままで

でも

「なあに?」

がそう聞くと、少し俯いて

「今夜には嵐が過ぎるそうだ。明日、船を出してくださると、元親殿が」
「そっか!!よかった…やっと戻れるね…!!」
「う、うむ…は、やはり奥州まで行くのか…?」
「え?」
「あ…あの、某は…」
「何?」
の住む世界に驚いた…」

それは

どういう意味だろう

「物がたくさん溢れ、戦も無く、がそこに立っていて…の世界はそこなのだなと…思った…」

何を言われるのだろう

ここは自分の居場所じゃないって…?

そんな不安を感じていると

「で、でも、某は…」
「……」

幸村の顔が徐々に赤くなって

は少し安心した。

「某は、ともっと、一緒に居たいと、思うのだ…」
「あ、あの、わたしだって…」
「未来だけではない…奥州だけではない…甲斐も…武田にもの居場所があるという事、忘れないで欲しい」
「幸村さん…」

どもりながらでも、はっきり伝わってくる幸村の気持ちが嬉しかった。

「嬉しい…ありがとう…」
「あ、いや、その…迷惑でないなら…の話で…」
「迷惑なわけないよ…」
「そ、そうか」

俯いた顔が、さらに俯いたので

「ゆ〜きむらさん…そんなに照れないでよ…」
「わああ!!」

が両手で幸村の頬を包み、前を向かせた。

「何してるでござるか…!!ち、近い…顔…」
「え、そうかな?」
「そうかな?ではなく…!!」

幸村がの手首を掴んで離そうとしたが、幸村の手がの手首を余裕で一周してしまい、思いのほか力が入った。

「いつっ…!!」
「す、すまぬ…!!」
すぐに幸村が手を離した。
「あ、大丈夫だよ!!」
「某…ダメでござるな…本当に女子の扱いが下手で…」
「あはは!上手かったらちょっと引くなぁ…幸村さんは幸村さんのままがいい!!」
「え…でも、某…にもっと…ちゃんとした言葉をかけられたら…」
「ちゃんと伝わったよ!!」
「そうではない!!そうでは…」
「?」

政宗殿とが揃っていると、なんだか楽しくなる。

二人を引き離すような事はしたくない。

だからといって、渡したくも無い。

自分の隣にも居て欲しくて

ならどうしたいのだと問われるとなんて言ったらいいのか判らなくて

早く同盟を結んで欲しいなんて

皆で笑い合いたいなんて

そんな思いが

「某は…武将であるのに…」
「幸村さん?」
「お館様のため…戦うことを、望むべきなのに…」
「…どうしたの…?」

それ以上は何も言わなかった。

の肩にそっとおでこを当てると、は幸村の頭を撫でた。

いつか感じた事が、自分の中にも起こっている。

どうしようもなく、心を乱されていた。






夕餉を頂いてる最中に幸村が言ってくれた事と同じ事を元親が言った。

「今度は仕事しなくていいんだろ?」
「ああ、客人扱いだ!!」

政宗は小さくガッツポーズをした。

「……」

幸村と話をして、少し落ち着いただったが、まだ政宗の顔を見ることは出来なかった。


…帰るのか…」
元就がの顔をじっと見て、しょんぼりしてくれた。

「まだ愛を教えてもらっておらぬ…」
「元就さん…」

理由はあれだけど別れを悲しんでくれて嬉しかった。

「あきらめな!!てめぇなんかじゃ理解できねえよ!!」
「…なんで武蔵までまだいるんだよ…」

ちゃっかり一緒に夕餉を食べていた。

「?」
元就が立ち上がっての近くに座り込んだ。

「今夜」
「はい?」
「今夜愛を教えてくれ」

元就以外が吹いた。




おかげさまでその夜のの部屋は厳戒体制だった。

「…あの」
「「「「どうした!?」」」」

が寝ている布団の周りに政宗と幸村と元親と武蔵があぐらをかいて座っていた。

「…うざ…あ、いやいや、気になって眠れなくて…」

は髪をいじられるのが好きだったな…よし、俺が添い寝してずっと頭撫でてやるから…」

政宗がに手を伸ばすが、思い切り幸村に叩かれた。

「いってぇ!!てめぇ…!!」
を守りにきたのにそれでは意味がない!!」
「…ありがたいですがみなさん寝ない気ですか…?皆布団持ってきてここで寝たら?」

皆それに頷いて

我一番にと部屋に布団を取りに行った。

「…姉ちゃん、俺布団ない…」
武蔵はあぐらをかいたまましゅんとした。
「元親に頼めばくれるよ」
「やだよ!鬼なんかに頭下げるの!!」
「んー…じゃあ、おいで」
は武蔵に向けて腕を広げた。

「え!?何してんだよ!?」
「今日は私は武蔵君のお姉ちゃん」
「う、うん!!」

武蔵は縛っていた髪をほどいて、の隣りに寝転んだ。

「姉ちゃんかぁ…へへ、照れくさいなぁ」
「照れることないよ」
「姉ちゃんあんな奴等と一緒にいて可哀相だ!!さいきょうのおれさまが守ってやる!!」
「あははは、そんな事ないよ!!皆いい人なの!!」
「そうなのかぁ?姉ちゃんお人好しだな…ふごぁ!!」
「わ!!」

誰かが武蔵の腹を踏み付けた。

「…ふん。気に食わぬ」
「元就さん…」
「てめ…!!」
「あら?」

睨み合う二人をあわあわしながらどうしようか考えてたをいつの間にやら部屋に入ってきた小太郎が引っ張った。

「体調は大丈夫?」
こくこく

…なんだか小太郎ちゃんがもじもじしている。

「小太郎ちゃんも一緒に寝よっか」
こくこくこくこく

はにっこり笑って

の隣は俺だぁ!!」
「なんの某が!!」
「おいおい!この城の主は俺だぜ!!」

三人が飛び込むと

「私、小太郎ちゃんと武蔵君と寝るー」

「「「え」」」

どうも本調子が出ないだった。


小太郎ちゃんと武蔵君に癒されて

明日は笑顔になろうと前向きになって、目を閉じた。

「……」

政宗はそんなをじっと見つめて、今日は仕方ねえか、と呟いた。


が寝た後でも、男たちの寝場所争奪戦があったのが、あまり意味がなかった。












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ぎこちない感じになってるなんだこれは青春か
けど明日からはけろっとしてるだろううちの主人公よ