政宗の腕を掴んだままどすどす歩く。

がこんなに怒るのは珍しい。

地雷を踏んだか。

政宗は大人しく引かれるままついて行った。

ある程度廊下を進んで人気の無い場に着くと

「政宗さんの中で私はなんなんだ!?」

政宗を睨み付けてその一言。

「なにって……」
「ずっと慶次の事考えてただ!?そりゃ考えてた!!当然だ!!」
「…」
「でも政宗さんのことだって考えてた…!!」

の目が

少し潤んでいる

「幸村さんの事だって残してきた小太郎ちゃんと佐助と…小十郎さん、怒ってるかなって…」
…」

「自分の事も、悩んで…家族の事友達の事…いっぱい…いっぱい考えて…」
「…悪い」

政宗がの頭を少し撫でた後、ぎこちなく抱き締めた。

「謝って欲しいんじゃないっての…!!理解して欲しくて…!!わ、私だっていっぱい…それなりに…悩んで考えてるつもりだ…!!なんでムカつくなんて言われなきゃなんないんだ!!ちくしょう!!だ、抱き締められたって許さないからな!!」

そう言いながらは政宗の着物をぎゅううと握った。

…言ってる事とやってること違ェじゃねえかよ…

…可愛い奴。

「答えはまだか」
「急かすな!!」
「俺にも我慢の限界があるんだぜ」
「私には思考力の限界がある!!」

はキレるとどこまでもひねくれるらしい。

なんだか笑えた。


「なんだよっ…!?」
「俺やっぱりお前の事すっげぇ気に入ってるみたいだ」

知れば知るほど

どんどんと

「政宗さんの気に入ったはよく判らん!!」
「これだけ俺が色々言っても判らねぇならお前はアホだ」
「…うるさい!!」

そんな態度をとるにいじわるしたくなった。

肩に手を添えていきなり少し離れて、屈んで、と視線の高さを合わせて

「…っ!!」

の顔が

耳まで赤い。

「知ってんだろ」

が視線を泳がせた。

「誰にも渡したくない、の、気に入っただ」

返事が無くとも構わず続ける。

「ずっと手放したくないの気に入っただ」
「あ…う…」

指に力を込めると、はびくりと反応した。

「…俺ばっかりお前に気持ち伝えてんな」
「それは政宗さんが話すから…」
「お前は?」

いじめてるわけでなく
切実に知りたいのに
はどうも泣きそうな顔をする…

「…体に聞くぞ?」
「どぎゃしゃあいああああああ!!」
「何ソレ!?」

の訳判らん悲鳴に驚いて

うっかり力を抜いてしまい

「脱出!!」
「あぁ!!こらてめ…!!」

は素早く政宗手を振りほどき、すたこら逃げてった。

「あの野郎…」

少しくらい気持ち聞かせてくれたって…!!









は本気で逃げた。
顔が熱い。
くらくらする。

自分用の部屋に駆け込んで、襖を思い切り締めてぺたりと座り込んだ。


「なんなんだ…」

好きだとか
愛してるとか
付き合ってくれとか

判りやすい言葉じゃなくて

愛されたいとか
気に入ったとか


「何て表現なんだよ…!!」

困る。
そんなこと言われたって

私だって人を好きになったら、その人からも愛されたい。

政宗さんの表現は、受け身のようで

俺を好きになれ!!…って…言われてるみたいで

「……脅迫だ…脅迫にしか聞こえない…」


ずるいじゃないか

一方通行の恋愛は、辛いんだよ…?


「…ちょ、ちょっとまて?…け、けど、じゃあ、もし政宗さんが、好きだって言ってくれたら…?」

それならいいよって

その言葉が聞きたかったんだよって?

「…なんか違う!!」

自分は判って無いんだ

自分は政宗さんをどう思ってるのか

それで

「…うわ」

私は

「待て待て待て…」

好きだとか
愛してるとか
付き合ってくれとか

そうじゃなくて

愛されたいとか
気に入ったとか

そんな表現をする政宗さんが
そんな風に想ってくれる政宗さんが

「畜生…」

そんな政宗さんを


私は気に入ってるんだ…


「……わたしは本当に何なんだ……」










「政宗殿、いかがなさった?が怒っていたな」
「…ここに来なかったか」

皆は相変わらずうどんを食べていた。

「姉ちゃん怒らせたのかよ!?」
「信仰心のない奴だ…」
「…うるせぇな」

アウェーになってしまった。

「ははは!!いいじゃねぇの!!溜め込むよりはなぁ!!んで?ってどういうときキレるんだ?」

元親はそこが気になるらしい。

「風呂覗かれた時だろ」
「あれは事故だ―!!!」
「姉ちゃんの風呂覗いた!?最悪だな!!」
「そういえばそうだったな…!!元親ごときが…!!」

アウェー道連れだ。


にしてもここに居ないなら自分の部屋か小太郎のところか…

「政宗殿も食べたらどうだ?」

あのあとさらにおかわりしたらしく、女中が大量にうどんを運んできていた。

「…そうだな」

に無理に聞き出すのもあれだしな…

あの調子じゃまだ本当に考え中なのだろう。

政宗が座ると幸村が立ち上がった。

「幸村?」
「茶を飲み過ぎてしまった。厠をお借りする」

苦笑いを浮べて部屋を出ていった。

「独眼竜、ほれ」
「ああ」

元親から受け取ってまず汁を…

「あちぃ!!」
「猫舌!?」

元親が冷たい水をすぐ渡してくれた。

「…」
「おいおい大丈夫か?」
「…世話好き」
「礼を言え!!」












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ある意味両思い。
こんな両思いですいませっっ…!!