くるくるくるくると

輪刀を腕で器用に回して

ぽーんと頭上に投げて

腕でキャッチしてまたくるくるくる回して

「日輪よ―!!」
うるせえ―!!

政宗は元就に枕を投げつけた。

いきなり政宗の部屋に入ってきて踊りだした。
政宗がまだ寝てるのも気にせず。

「あいにくの嵐の日に我の光で貴様を照らしてやっているのだぞ!」
「いらねえ!!何しに来たんだ!!」
「うむ…」

元就は神妙な面もちですとんと座った。

政宗は布団から出ず、上半身だけ起こした。

「独眼竜伊達政宗…お前、ザビー様に興味があるのだろう」
「…」

そういう設定だ。

「嵐が去ったら共にザビー様のお話を聞きにいかぬか?」
「やだ…」

そういってもぞもぞと布団の中に入ってしまった。

「なぜだ!?おまえは早々からザビー様の素晴らしさに気づいて…そこを我は評価しているのだ!!」
元就が政宗をゆさゆさ揺さぶった。
「嬉しくねぇ!!あああうっぜえぇぇぇ!!!」
「ぎゃあ!!」
「!?」

何もしていないのに元就の絶叫が。

驚いて布団からでると

手ででこを押さえる元就の後ろに

「…寄越すなって言ったのに」

小太郎が立っていた。

せわしなくきょろきょろしている。

どうやら天井から降りたった際に元就を蹴ったらしい。

「忍…?」

元就を気にせず、政宗を見ると近づいてきてじっと観察して

「あでででで!!」

くいくい髪を引っ張って

こっくり頷いて

ぽんと政宗の肩をたたいて

「〜!!」

多分、〜!!と叫んで出ていった。

「お前の忍か?」
になついてる忍だ」
「…あの娘、なかなか人望があるのか」
「…なかなかってLevelかどうかは考えようだ」


小太郎は一応俺の心配もしてくれたようだ。

引っ張られた髪の根元を撫でながら、政宗は起きあがった。








固有の気配を察知してその襖に手をかけて

勢いよく開けると

「…!!!」
の隣に

男が寝ていて

しかも男はに腕枕していて

小太郎は混乱した。

政宗がいたのになぜこんなことに…
は確かに人なつこいが…


小太郎は混乱して

男がの優しさを利用してこんなことになっているのだということにした。

そうとなれば話は早い。

小太郎はだけ揺すった。

「…ん?小太郎ちゃん…来てくれたの?え!びしょびしょだよ!?」
ががばっと起きあがった。

「待ってて!タオルもらってくる!!」


が慌てて出ていってしまって

小太郎は男に馬乗りになり

拳を

男の頬めがけて

「っと…」
「!!」
頬を殴りつける前に男の手が小太郎の腕をつかんだ。

「誰だ?の知り合いか…安心しな。抱いちゃいねぇ。」

小太郎はそんな事は判っていた。

そういう問題じゃないのだ。


パタパタと足音が聞こえたので、小太郎は元親から離れた。

「元親おはよ!小太郎ちゃん!!おいで!拭いてあげるから!」
の近くに寄ると、顔や腕の露出した部分を拭くが

「小太郎ちゃん!あの…慶次は!?慶次はあの後どうなったの!?あぁ…元親〜着物貸して〜びちょびちょ…あとお風呂…あれ?何で私元親の部屋に…人形!!人形私どこにしまったっけ!?」

聞きたいことがたくさんあるらしい。


小太郎と元親がの落ち着きのなさに笑った。


「風呂いいぜ!使え!着物も用意してきてやる。んで、は昨夜俺の着物をぎゅっとつかんで寝ちまったから、そのまま同じ布団で寝たわけだ。人形ならそっちの机に置いてあっから持ってけ!!俺が答えられんのは以上。」

待ってろと言って部屋を出てしまった。
は元親ごめん〜!と叫んだ。

小太郎は、の手を取ってにっこり笑った。

「慶次、無事?」
こくり
「元気…?」
こくり
「本当…?」
こくり

の目に涙が溢れてきた。

「よかった…」

小太郎がの顔をのぞき込むようにして

みんな待ってる、と

それだけ言った。


はこくんと頷いた。

「…」
「小太郎ちゃん…?」

小太郎は

いきなりの肩に頭を乗せて

体重をかけた。

「ど、どうしたの…!?あ…!!」

急いで額に手を当てる。

熱い。

「小太郎ちゃんが風邪ひいちゃった―!!政宗さんおかゆ―!元親はやく着物…幸村さん私のバック―!!」
「〜!」
は小太郎を寝かせようとしたが小太郎が抵抗した。

「バカだな小太郎…」

政宗が部屋に入ってきての隣に座ると
小太郎はゆっくり懐から二通の文を差し出した。

「小十郎と、猿からか…」
こくん

「全く濡れてねえな。立派だ小太郎。」
ぺこ

政宗が小太郎を褒めると、小太郎は大人しく横になった。


「忍のくせに風邪をひくとは情けない…」
いつの間にか元就も部屋にやってきていた。

「元就さーん。文句いうならどっか行っててください〜」
「言われなくても…」
!どうした!?ばっくを持ってきたでござる!あ!小太郎殿!」

元就を押し退けて幸村が入ってきた。

「ほら、着物持ってきたぜ!今から新しく布団敷くから!」

元親がぽいっと着物を投げてきた。

「小太郎、自分で着替えるか?」
…こくり
「小太郎ちゃん、身体ちゃんと拭いてね!!」

政宗から着物とタオルを受け取ると、一度小太郎がぼふんと煙を出して消えて

戻ってくると着物姿になっていた。

布団に入って丸く縮こまった。
「小太郎ちゃん、体温はかるよ〜!脇にこれ挟んで!!」
「…体温?」
元就がが持っている物に興味を持った。

しばらくするとぴぴ、と音がした。

「あ…小太郎ちゃん熱高い…!!」
「…それで熱が計れるのか?」

「小太郎ちゃん、さむい?湯たんぽとかないかな…?」
「…体温…」
「あれ、元就さん出ていくんじゃなかったの?」
「……」

元就は仲間外れだ…とつぶやいて部屋の隅にうずくまった。

「…(出ていかないんかい)」
「あんまり元就いじめんなよ、
「判った…これから元親いじめるね…元就さん!ほら、これで体温計れるんだよ…!」
「え!?なんか余計な一言有ったなァ!?」
元就は駆け寄ってきての手から体温計を受け取って喜んだ。


「小太郎ちゃん、お腹すいてる?」
ふるふる

「じゃあ、もう少ししたら何か持ってくるから、そのときは食べてね」
…こくり

は小太郎の頭をぽんぽんと優しく叩いた。

「幸村、猿からだぞ」
「文?おお…小太郎殿、かたじけない!!」
小太郎は無反応だったが、特に気にせず幸村は文を読み始めた。
政宗も目を通す。

「……」
「……」
「みんな、なんて?」

「…佐助から、は、…お館様が、心配していると…ちゃんと栄養のあるもの食べて、気候の変化に気をつけて風邪引かないように…夜はしっかり寝て…」

オカンだ。

「小十郎は…成実様が政務から逃げました。政宗様に目を通していただきたい書類がたまってます。戻ってきたら、大変ですが、頑張りましょう。この小十郎、政宗様のお側に居ます。」

そのお側は監視だ。

「…前田慶次のことは、情報が入り次第そちらに文を送りまー」
「まー?」

不自然な語尾に、はついに小十郎が過労でおかしくなったのかと不安になった。

「いや、筆が流れてんだよ…」
「ああ、なんだ…。え?何で?」

政宗は小太郎に視線を向けた。

「…大方、書き終わるまで待てねえで、小太郎が小十郎から書き途中奪ってこっち来たんだろうよ…。小太郎遣すなって言ったのに来たんだからよ…」
「…戻ったら、私、小太郎ちゃんと一緒に謝ります…」



と政宗は、小十郎のご機嫌はどうなってるのか不安でいっぱいだった。










■■■■■■■■
…あれ…元就さんアホすぎませんか…
私の元就さんのイメージって…?(とりあえず謝れ。

やっと小太郎再登場です…
お待たせしてすいません…!!