の部屋に集まって、円形になって座る。
元親はの前で正座していた。

本来なら嘘をついた政宗たちのが縮こまるべきだが、が腕を組んであぐらをかいて元親を威嚇しているので立場逆転だ。

「で、小姓というのも嘘か?ふん…どこぞの姫だったということか…」

文句が言えない元親に代わって元就が話を進めてくれた。

「…いや」

姫などとまた偽ってはに負担をかける。

「偽らねばならない状況なんだろう?」

元就がさっさと言えと、不機嫌オーラで促す。

は、なんつーか、南蛮人みたいなもんだ」

政宗は考えたが、うまい言葉はでてこなかった。

「…日本人にしか見えぬ」
「…南蛮人が、不時着したみたいな…」
「政宗殿、意味が判らぬ」
「じゃあ幸村が説明してみろよ」
「うむ…えぇと」

幸村が腕を組んで考えるが

「…南蛮人が、不時着したみたいな…」
「俺が言ったぞ」

話が進まず、元就がイライラしてます。

「忠勝の話も嘘か?」
「嘘だよ」
が政宗と幸村に相談することなく明かした。

…」
「もう嘘つかなくていいって言ったのは幸村さんだからね!」
「それはそうだが…」
「もう嘘つきたくないよ…」

があぐらと腕組みをやめて、リラックスして座った。

「元親、お風呂とっても気持ちよかった。ありがとう」
「いや…その…悪かった…」
「ううん、もう良いよ!それより、今から言うことは忠勝さんに連れてこられたって話より信じられないよ?」

元親が一度元就に視線を向けた。

「…我を驚かせられるか?暇つぶしにはちょうど良いではないか。その代わりありきたりな話であったら貴様をひっぱたくぞ」

元就も聞く気らしい。

「期待してよ、元就さん」
「ふん…」

が話し出すのを政宗と幸村が複雑な気持ちで眺めた。

どんどん、のことが知られていく。

もう秘密の話ではなくなっている。

複雑な気持ちだ…




が話終わる頃には、雨と風が一層強くなっていた。


「―以上です。判りました?」

元親と元就はそれぞれ違う顔をしていた。

元就はもちろん信じられない顔をしているが
元親は目を輝かせていた。

「我は信じられぬ」

「楽しんではくれた?」

「発想としては上出来だな」

「なら満足!ありがとぅ」

「…ふん、おかしな女だ」

元親はあぐらをかいて身を乗り出した。

「だからあの病の事知ってたんだな…俺は納得した!」
「元親…」
「すげえな…それで、政宗!幸村!未来はどうだった!?カラクリ、すごいか!?」

「「……」」

遠くに居ても普通の声で交信できるけーたいとか
人が写ってる箱とか
飲み物が買える箱とか
音楽が流れる箱とか
うん、すごかったよ。

「秘密だ」
「な!!なんでだ!?教えろよ!!」
「政宗さん…!!」

は政宗が自分のために黙ってくれたのだと思い、感動した。

政宗は未来のものの表現方法が幼稚な言葉でしか出来ないので口にしたくないだけだった。


「そっか、未来か…未来…」
元親が何度も何度も未来と口にした。

「元親殿、あまり、そのことは…」
言い広めないでくれ、と言おうとした幸村に、元親はにっと笑って見せた。

「安心しろ。判ってる」
「そ、そうか…元就殿、は…」
「ふん、我の頭がおかしくなったと思われる」

はにっこり笑った。



話終わった後、豪華な海鮮料理がの部屋に運ばれてきた。

みんなで雑談をしながら夕餉を頂いた。

「んじゃあ、四国来たら俺捜せよ!」
「ふらふらした海賊がなにを言うか。我にすがりついてきてもよいぞ。面白そうだ」
「面白そうだってねぇ…こっちは必死です!!」
「だから面白いのだ」
「えぇえ!?元就さんてそんな人!?」

の良い反応に元就が少しだけ笑う。

は、にこにこ笑うだけで

無防備に座っているだけで

ただ言いたいことを言うだけで

こんなに味方を増やすのか…

「…」
政宗はアワビばっかり食べながら、少しふてくされてた。








夜になって、布団に横になると、すぐに睡魔が襲ってきた。
雷が光ったが、あまり気にならなかった。


眠りに落ちて



夢を見た。




自分はひたすら走ってるが、周りの景色は変わらなくて

前に進めなくて


手を伸ばしても届かなくて



…なにに?



遠くに見える背に



誰の?



あれは




慶次が





膝をついて



倒れて





私の足下に、液体が流れてくる



真っ赤な液体が、どんどんどんどん




夢だと判っているのに





苦しくて苦しくて



何度も慶次を助けてくれと





殺すなら私を殺してくれと叫んだ








「っ…!!」

目を覚ますと、汗だくになっていた。

目からは涙がでていた。

「なんであんな夢…」

幸村さんが、急所はやられてないって言ってたじゃないか。

大丈夫、慶次は大丈夫…

起き上がって、周囲を見渡す。
「…」

もし、命を落としてたら、慶次は霊魂でも私のところに来てくれる。

恨みの念だとしても来てくれる…

慶次がいなければ、生きているという事で

…でも、今の私には、何の力も無くって…

「なんでみえないの…」

膝を曲げて、両腕で抱え込んだ。

あんなに嫌だったものを、こんなに望む日が来るなんて


「顔洗いたいな…」

どこに何があるか判らないが、一人で部屋にいたくなかった。







廊下をうろうろしていると、一部屋明かりがついてる部屋があった。

まだ、起きてる人がいるのか…

そのくらいにしか思わず、その部屋に近づいた。

大きな背が見えた。

「元親…まだ起きてるの…?」
声が掠れた。
「!!」
元親がびくっと全身を震わせた。

こそ…」
元親はこっちを向かず、慌てて何かを隠している。

元親の周りには工具がたくさんあった。

「…ごめん、お仕事中だった…?」
が一歩後退した。
ぎしっと床が音を立てた。

!ちょっと…あ―、いや、その…」
「元親…?」

元親が肩越しに振り返って、どもりながら名を呼んだ。

「あの、私、カラクリには詳しくなくて…元親に判らないことは私には…」

は元親がただ単にカラクリの構造に判らないところがあってそれを自分に聞こうとしてるのかと思った。

「そうじゃなくて…」
「…?」
「あのな…」
何かを迷っている。
元親が迷うなんて、どうしたんだろう…?

「元親…近く行って良い…?」
「ああ…」

ゆっくりと近くに行くと、元親が勢いよく振り返った。

の足下に乱暴に置いたのは

「…え」

カラクリ人形…?

「船の時の、礼と思ったんだが…」

座り込んで手に取ってみる。
小さな木製の人形。

元親の大きな手から作られたとは思えないほど、繊細な顔の人形で

「風呂場のお詫びになっちまったな…」

仕掛けはカタカタ歩くのみのようだ。

「でも、私、元親に嘘ついてた…」
「それは、嘘つく方も辛いだろ。俺には、お前が平気で嘘をつけるような奴には見えない」
「元親…」
「…こんなんじゃ、まだまだ借りは返せてねぇな…悪ィ」
「そんなこと、ない。嬉しい」
…」

にっこり笑ってみせたが、元親はまだ納得できない顔で

「で、でも未来には、もっとすげぇのたくさんあんだろ!?あぁ、やっぱいいや!」
そう言って、の手からカラクリを取ろうとした。

「あ〜!ちょっと!やめてよ元親!」

は受け取ったカラクリを背後に隠した。

「あ!おい!」
元親があきらめずに手を伸ばしてきたので、元親がにのしかかるような形になった。

「あ…」
「う、お!悪い…!」

悪いといいながらも、元親はそのままでいた。

「…よく俺、お前が男だって信じたなァ…」
「元親、素直だもん」
「素直ってなァ…」
元親が耳元に顔を近づけてきた。
は少し驚いて顎を引いた。

「良い香りするもんな…」
「お風呂の匂いだよ…」
「俺も入った。俺はどんな匂いがする?」
「え…」

もおずおずと元親の首元に顔を近づけた。

逞しい体が間近にあってどきどきしてしまった。

「元親、は、なんだろ…爽やかな香り…」
「そうか。はすごい甘い香りがする。違うなら風呂の香りじゃないな」

「そ、そっか…」

元親との距離が近すぎる。

元親が少し動いただけなのに、はびくりと反応してしまった。

「おい、、気をつけろよ。夜中にうろうろするな…」
元親が離れて苦笑いした。

「ごめん…寝れなくて」
夢を見るのが怖いとは子供のようで言えなかった。

「怒ってるんじゃねぇよ。ここは男が多いからなあ…危ないから、心配だ…」
「元親…ありがとう」
「はは、礼を言われるほどでもねえよ!!でも本当、気をつけろ」
「ん」

元親がの頭をくしゃりと撫でた。

はその手に安心してしまって

カラクリ人形を片手でぎゅうっと握って

「…元親…、本当にありがとう」
「いいのかよ、そんなので」
「手作り、嬉しい…。ありがとう…」
?」

の首がゆっくりと揺らいで

ぼすんと元親の胸に倒れこんだ。

「おいおい…」
「……」
規則正しく寝息が聞こえる。
のもう一方の手が元親の着物を握った。
「雷、嫌いで眠れなかったとか?」
「……」

「…しゃあねえな」

をお姫様抱っこして、自分の寝室に連れていった。












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主人公隠し事なくなったよかったね…!!(ん?
次の問題に心を悩ませましょう…!!(えー

元親贔屓激しくってすいません…!!
管理人の趣味…!!