サラシを取ると、解放感ですっきりする。

「うわ〜、貸切だし…嬉しい〜」

体をいっぱい洗って、熱いくらいのお湯に肩まで浸かった。

明日も貸切にしてくれると良いなあと、贅沢な期待を持った。

「……」

一人でゆっくり、これからやることをおさらいしてみた。

まずは慶次がどうなったか、これは奥州に着いたらすぐ小太郎ちゃんに慶次の居る場所に連れて行ってもらおう。
明智のとこでも構わない。

あと、いつき。
彼女には私が無事な事を伝えなきゃならない。
出来れば直接会いたい。


「どっちも出来るかな…残りの時間で…」
「残りの時間?」

ガララと、戸が開いた。

は驚いていきなり入ってきた人物を見た。
湯気で少ししか見えないが声で判った。

「元親ぁ!?か、貸切、じゃ…」
急いで出来る限り戸から離れたが、それほど遠ざかることは出来なかった。

「おいおい、そんなに逃げんなよ!!…俺、知ってるから」

何をですか

え、え、女だって、ばれてた!?

だったら、おかしいだろ…!?なんでここに入ってくる!?

「な、なにを、知ってるって!?元親!俺、政宗様以外とはって、さっき言ったよな…!?俺に、近づくな!!」
「そんなに、見られたくないのか。予想以上だな」

だから何!?

「政宗に、聞いた。火傷の事」

火傷!?

「背中に、大きいのがあって、見られたくないんだろ?」

ああ、そういう設定か。

ええ!?元親に背中を隠さないといけないのですか!?
前を隠したいんですがね!?

ちゃぷんと、元親が湯の中に入る音がした。

「も、元親…!!」

「火傷があることが、お前をどんな気持ちにさせているのかは知らねぇ。でもよ、そのせいで顔を曇らせたり、政宗に心配かけるのは、なんか違うんじゃねえのか?」

ソウダネ

「重いもん溜め込んでるなら、ちいと俺に分けろ。一緒に持ってやるから」

元親、良イ事言ウネ

「なあ、俺はお前の力になりたいんだ」

ざばざばと、元親が近づいてきた。

「待ってくれ…!!」

もう、私は女だと言ってしまいたい。

見られるよりは、個人的には良い。

でも、政宗さんと幸村さんが、嘘を言ってた事になってしまう…

「元親!!お願いだ!!来ないでくれえ!!」
…」

泣きそうな声を出してしまった。
元親、傷ついてしまった…?

「!!」
ざぶざぶという音が早くなり、湯が大きく波打った。
元親の影がすぐそばに。

手が伸びてくる。

!俺は」
「いや…!!」







政宗と幸村は、パチパチと将棋を打って暇潰しをしていた。

「文はいつ頃届くだろうか?」
「さあな。今日中には届くといいな」

「…あ、待つでござる」
「待ったなしだ。お前、ストレートすぎだ」

「…もう一回」
「その前に参ったって言え」

「……嫌だ」
「お前なあ…」

バタバタバタと廊下から羽音がした。
あのオウムだ。

二人の居る部屋に入ってきた。

!!!」
はいねぇよ」
「はは、賢いオウムだ。某は幸村と言う。ゆ、き、む、ら」
「ユ……!!」
「ha!!お前の名前は覚えたくないってよ!!」
幸村が頬を膨らませた。

「たくさん教えれば覚えてくれる!!」
「…なんだ?ってことは、はいっぱいそのオウムに名前を教えたって事か?」
「掃除担当だったな、は…」

!」
「元親が教えたのか?」
「元親殿、そんなにを気に入って」

「モトチカ!!!!ホシイ!!」
「…へ」
「も、元親殿!?」
が危ない!!」

二人が立ち上がり、の元に行こうとした時、悲鳴が聞こえてきた。

「ぎゃああああああああああああああ!!!!!」

元親の。

!!間に合ってくれえ!!」
「…なんで、元親の悲鳴だ?」







風呂場からばしゃばしゃと水音が聞こえる。
元親との声も聞こえる。
政宗は置いてあった大きいタオルを即座に取って、風呂場の戸を蹴り破った。

「元親てめぇ!!」
!!!!」

湯気の中、見えたのは

「か、かかかか肩!!外れる!!」
「元親!!目をつぶってええええ!!!」
「つぶってるから離してくれえええええ!!!」

「…」
政宗は目を細めた。
「わあ!殿!!」
幸村は赤面して、固まってしまった。

元親は風呂の縁に上体を出して、に腕を捻り上げられていた。

は左手でタオルを持って体を隠し、右手だけで元親の左腕を持って、右足で元親の背を踏みつけて押さえつけていた。

、大丈夫か?」
「あ!!政宗さん!!幸村さん!!」

政宗がタオルを正面に大きく広げた。
は元親を放っといて、政宗のところに駆け寄った。

政宗は抱きしめる様にして、をタオルで包んだ。

「うああああああ!!元親のばか!!元親!ばかああああ!!」
「元親…判ってんだろうな…」
「何も見てねええええええ!!!!!!なのに殺られる!?」

元親は肩を押さえてゆっくり動かして様子をみていた。
本当に痛かったようだ。

…もういいでござる!!こんな目に遭うなら、もう偽らなくて良い!!もう安全は保障されたのだ!女だと言ってしまって、もう良い!!無理なさるな!!」

幸村がの目から流れている一筋の涙を指で優しく拭った。

「ゆっ、幸村さん…でも、それじゃ…」

「もういい。もうばれて…」

「え、が女?」


「「「……」」」


が顔を真っ赤にして、さらに泣きそうになっていた。

「ど、どどどどど、どうせ!!胸小さいし!う、うええええ…」
さっきよりもショックなようだ。

「違う!!本当に何も見てなくて…!!おんな!?わ、悪い!!ごめんな!!」

元親が立ち上がって、三人の方にやってきたので、政宗は腕を上げての顔もタオルで隠した。

「元親、隠せ、馬鹿」
「?あ、悪い。」
「うわあああああああ!!もう嫌だああああ!!」
前にもこんなことありましたね…

「騒がしい、何事だ?」

いつの間にやら元就もやってきて、風呂場を覗いていた。
元親は、元就に今は説明は待てと一言言うと、少し距離を置いてに話しかけた。

「ごめんな、!!わからなかった…!!服着て、落ち着いたら説明してくれよ…」

、ゆっくり歩け」
政宗がに優しく話しかけた。

「う、うん…うう…」

とりあえず男は出て、が着替え終わるのを待った。



出てきたとき、はさらしを巻いてなかった。

「おお、、結構あるぶ!!

まじまじと胸を見た元親を、政宗と幸村は殴った。










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ばれました
早速ばれました
これからは女の子として扱ってくれるかと…!!
元親は過去のトラウマ話とかには食いついてきそうだなあと…!!
ほっとけないアニキ。