もうすぐ四国に着くと元親が知らせに来てくれた。
その頃にはすでに壊血病も良くなっていて
ありがとうといっぱい言われて、嬉しかった。

久々に陸を歩くと、変な感覚だった。

船を下りると、小さな港。

空を見上げると

「・・・わあ、本当に、嵐が来るね・・・」

どんよりと曇っている。

「ああ、俺たちはさっさと荷を降ろす。お前らは先に城に行っていろ」
「手伝うよ」
「大事なもんだ。手伝うなら見るって事か?だったら見た後は首を刎ねられるか俺の小姓になるかしか選択肢はねぇよ?」
「アニキしつこい!!」

はそう一言言うと、すでに歩いて町の様子を見回ってる政宗の元に走っていってしまった。

「強引、軽い態度は効果なし、ねぇ」

どうしたもんかなあと、元親は頭を掻いた。

「考える事でもないでしょう?」
「・・・親信」
「応援しますよ」
「・・・応援してる暇があったら、あいつらを城に案内してやれ」
「はい」

すこし顔を赤らめて、達を指差し、すぐに元親はまた船に乗った。
野郎共!!と大声を上げて、いつもの調子を取り戻す。

「元親様、本気ですねぇ・・・」
くすくすと親信が笑った。








お城は岡豊城という名前だと教えてもらったが、には四国のどのあたりなのか当然判らなかった。
城の中にも異国の物が溢れていた。
政宗は廊下を歩きながら、あれは何だこれは何だと私に聞くのでひたすら判りませんと言った。
親信さんが居るからっっ・・・!!

客室に案内されたが、政宗さんが元親の部屋が見たいと言い出した。

さすがにそれは無理だろうと思ったら、親信さんはにっこり笑って案内してくれた。

「ち・・・やっぱ南ってのは貿易に関しちゃ便利だな・・・」
「政宗様もお詳しいじゃないですか」
「興味があるからってだけで詳しくはなれねえ。これでも努めてんだ」
「そう、ですね・・・申し訳ありません」
「いや、いい」
「ひょれがしほいほいほひりたい」
「幸村様、食べ物を口に入れながら喋らないで下さい」
幸村は頂いたカステラを思いっきり口に含んでいた。

元親の部屋に上がり込んでくつろいでいるが、城の皆さんは暖かく、元親様が来るまでお待ちくださいと言うだけだし、
茶やお菓子まで出してくれた。




「おーう!待たせたなあ!!」

襖が豪快に開いた。


「遅い。おい、元親、忍を貸せ。文を送りたい」
「奥州にか!!幸村もか?」
「うむ・・・」
「そうか!すぐに手配すんぜ!!待ってろ!今紙と筆やるから!!」
元親が一声かけると、家臣が現れた。

「「……」」

「政宗様?幸村様?」

協力的な元親を二人は睨みつけた。

「あの、なぜ睨んで…」

「…気持ち悪ィ…交換条件はないのか」
「う、うむ…元親殿、優しいな…」

船では、三人寝床以外では一緒に居ない事、志摩まで送るので降りる際に二人の武器を一本置いていく事、戻ったら各々の領地の特産物を送る事、それが送られてきたらそれと交換に武器を返す、と、色々と約束させるほどだったのに。

「ああ、ってかもうてめえら、領地まで送るぜ!!甲斐と奥州な!!なあに、冒険と思えば楽しいもんなァ!!武器も礼もどうでもいいや!!」

紙と筆を机の上に出しながら、わははと、元親はとってもご機嫌に笑った。
「き、気持ち悪!!」
政宗は手の甲を口に当てた。
「失礼ですよ!政宗様!!ありがとうございます!!あの、元親様・・・」

城に居ると、呼び捨てとか、アニキと呼んでいいのか判らなくなって様をつけたのだが、元親は眉根を寄せてしまった。

「あァ?なんだあ?元親様?」
「う…」
「元親、だ」
「…アニキじゃなくて?」
「元親」
「も、元親」
「よし」

そのやりとりに、政宗は異常な程怒りを感じた。

「…どうでもいいだろ。呼び方なんか…」
「そうもいかねえ」
「…」

はただの小姓…の設定。
それで元親がこんなに気にかけるとは


「それは、に恩を感じてか?」
「もちろんだね。を人質に出すんなら即行で奥州と同盟を結ぼう」
「そんな気はねえ」
「だろうな」
が、人質!?四国に!?遠い!許さぬー!!」
幸村がカステラをむしゃむしゃ食べながら言うので、は会話の内容より幸村の口からこぼれた食べかすが気になった。


「大事にしてるみてぇだもんなァ。大事に…どうしてんだ?身の回りの世話させてんのか?勿体ねえ事してるなァ」
「るせえな」
「某が蚊帳の外!!入れてくだされ!!」
「幸村様、こぼしてますよ。ほらほら…」
「あ、すまぬ…」
がポケットティッシュで幸村の口の周りを拭き、落ちた食べかすを取った。


「どうだ、俺とお前と、、それと竜の右目…つるんだら、楽しくなりそうじゃねえか?」
「つるむにはを出さなきゃならねえなら賛同できねえ」
も食べよう。うまいぞ!」
「ありがとうございます!!では遠慮なく…」


「譲れねぇのか…は竜の宝か?今回の待遇はのおかげだって事忘れんな…次はその宝、頂きに行く」
「だったら十分な準備をするんだな…そう簡単にウチは落ちねえ」
むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ

「……」
「……」
「本当だ!!おいしいです、元親!!」
「今度甲斐に送ってくだされ!!」


政宗と元親は脱力感に襲われた。


「幸村!!食ってねえでさっさと文書け!!」
「む!?う、うむ、そうだな!!」
政宗が幸村のすぐそばの畳の上に紙を叩き付けた。

二人はすぐにさらさらと書き出した。

は横から政宗が何を書くのか覗いていた。

「……」
「……ん?」

状況の説明を簡単に書いた後、慶次の情報が欲しいと書いてくれた。

そして政宗の筆が止まった。
覗くを政宗が見下ろしていた。

すぐに文に一文書き足された。

『―…は俺の小姓ってことにしてる。小太郎は遣すな。』

大事な一文ですね。



元親が家臣を呼んで文を早急に送るよう指示した。

家臣が部屋から出て行ってしばらくすると、しとしとと、雨音が聞こえてきた。

「モトチカ!モトチカ!!」
ピーちゃんが部屋に入ってきた。

「おう、降ってきたなあ…」

それどころか雷までゴロゴロ音を立てている。

「すぐ過ぎればいいけどな…」
ピーちゃんは元親の肩に止まって、きょろきょろ首を動かした。


「…ねえ、元親、嵐が来るなら、毛利さんとザビーさんの戦も終わり?」
「ああ、南蛮人も粘ったようだぜ。決着つかず、引き上げてったそうだ」
「…なんだ、つまらねえな」
「まあまあ、政宗様…」


元親が政宗に目線を向けた。

「そういや…」

何かを思い出したようだ。


「独眼竜、お前あの胡散臭い南蛮人に興味あんのか?」
「……」


また、"そういう設定"の話。

南蛮人より、南の情勢に興味があっただけなのだが、豊臣の事もありそういう設定だ。

「ま、まあな。おいおい、胡散臭いのか?ンな事まで知らねえよ」
「関わんねぇ方がいいぜ?ザビーって奴は、愛を信じなさいと言いながら、バズーカぶっ放すんだぜ?
それに、俺はあいつらには借りがある…俺が絶対潰す…!!」
「ばずうか…?」
「Bazooka…?」
「バズーカ…?」

バズーカって第二次世界大戦とかそのあたりのものじゃ…?

「ばずうかとは、何でござるか?」
「教えてやれ、
「バズーカとは対戦車ロケット発射器ぶはー!!!!
今何て言ったァ!?」
「何も言ってねえ!!!!!!」
「嘘つけ!今戦車とか…ウワァ!!」
元親が身を乗り出しての肩をがっしり掴んだが、は元親の脇をくすぐって回避した。

は政宗の後ろに隠れた。

「……」
筆頭はその状況に少しのときめきを覚えたそうだ。

「こいつは本をよく読むんだ」
「だからって…」
「奥州じゃ、この程度、珍しくない」
「な!!」
「……(政宗さん、大きく出たなあ)」

元親があぐらをかいて、腕を組んだ。

「ちっ…こりゃ、奥州に行くのが楽しみだ…」


「…政宗さん、ありがと…」
はいつもの声色で、政宗だけに聞こえる大きさで、そう言った。

「…いや」
政宗もに聞こえる程度でそう言った。


「…それで、ばずうかとは、何」
「それは!愛!!!!!!!」


……………


幸村が疑問を口にして

その返事は

外から

「…!?」
とっとっとっとっとっとっと、軽い足音が近づいてくる。

「な、何!?」
「…あァ〜…」
元親が俯いて、手で顔を覆った。

バアン!!と襖が開く。

「…誰だ」
「??」
「緑…」


現れたのは

「長曾我部ェェ!!!!!!!愛とは、愛とはなんだ!?お前にとって、愛とは!!!???」

「毛利様!!風邪をひきます!!」

元親の家臣に心配されても気にもせず、ずぶ濡れのまま、愛を問う中国の智将。








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そんなこんなでうちの元就はちょっぴりサンデーから始まります。(元就ファンに謝れ。
主人公が何でかバズーカに詳しいのは

…防弾ベスト買ったときにいろいろ調べてたんじゃないかな…(てきとう…