近くの島の海岸に船を泊めたが、無人島のようだった。

、人の姿はねえが、果実なら実ってる。仕方ないから集めるぞ。どういうのを集めればいい?」
「ライムジュースで予防、ってのは聞いたことがある…」
「らいむ?」
「ミカンやレモン、アセロラでもいいと思うな。えーと…皆さん!!こういう、柑橘系を、いっぱい取って!!」

島には、政宗と幸村のほかにも、何人か元親も家臣もついてきた。

荷物持ち、の他に監視の役もしてるだろう。
元親は船で待っている。
急な停泊だったので、周囲を警戒しながら待っていてくれている。

!!袋は借りてきたから、お前は袋に詰めろ。俺らが落とす」
「はい!!じゃあ、あの、元親の部下の皆さん…二手に分かれて手伝ってください…」
「うむ。頼む」
「おーし、了解だ!!」

にっこり笑ってすぐに取り掛かってくれた。
政宗も降りる際に一刀だけ許してもらったものを抜刀して、近くの果実の実る木に近づいた。

器用に登って、たくさん落とす。

「木登りなんて久々だぜ。なかなか楽しいな」
「楽しんでないで早くー!!政宗様ー!!」
「OK、OK!!」

は、政宗と幸村のそばで回収作業していた。

「これを、搾ってジュースにします。それで飲ませる。以上。」
「…へ?それだけでござるか?」
「壊血病は、長期間の体内のビタミンC不足で起こります。っていうかこの時代はビタミンの存在もまだ発見されてないんじゃないかな…?」
「この中に、ビタミンが含まれてんのか」
「はい。船員のみんなも、予防として飲んでいたほうがいいから、いっぱい取ろう」

元親にはまだ詳しくは話していない。
口論の後は凄くにこにこしていたから、船に戻ったら話そうと思っていた。




「…よし!!おい!!こんぐらいでいいだろ!!」
政宗と幸村が果実の詰まった袋を担いで、船に向かう。

「俺も持つ…」
「お前はいい」
「え」
「肩、痛ェだろ」
「…」

先ほど元親に思い切り掴まれたところは、痣になっていた。
肩が上がらない。

「…元親に、謝らないとな」
?なぜ?元親殿に非があるだろう?」

いつから冷静になっていたのかは判らないけど、最初は本気で怒っていた。

「元親、大切な部下がこの病気で亡くなるのを何度か見てきたんだろ…見たくなくて、治し方探して、でも見つからなくて…」

長期間の航海はあまりしないとか、普段は宝探しをしているとは聞いていたが、元親の彼らを見る目は、本当に悲しそうだった。
これからどうなるのか、判っている目だ。

「それを、助けてやる!!って簡単に言っちゃった…俺も、言い方、悪かった…怒ったって当然だ…」
「だからって、そこまでされる覚えはねえだろ。いいんだよ。あいつに謝らせろ。お前だって、あいつら助けたくて必死になってそう言ったんだろうが」
「うーん…」
「…申し訳ありません」
「「「!!!」」」
聞いたことない声に三人がびっくりした。

「あ、えと、私は、久武親信と申します。あの、元親様が迷惑かけまして…」
「あ、ど、どうも…」
やけに腰の低い人だ。

「…四国についたら、挨拶しようと思っていた」
政宗が、めんどくさそうに話す。
自己紹介したくないようだ。
「聞いております。最も、私だけですが。」
「…そうなのか?」
「はい、大丈夫です。元親様はあなた方に恩を売る気でしたから」

つまり、無事に送り届ける気でいたということか。

「ですが…この話が本当なら、逆に我々が礼をせねば…」
「ah?それほどのもんか?」
「ええ、もちろん。あの病の治療法が判って…」
「あ、あの!!」
が親信の言葉を遮る。

「広めるとしたら、噂、にしてくださいませんか?」
「え?」
「あの、予防法を発見した、じゃなく、果実が予防に効果的なのではないか、と、噂を…」
「…なぜ?ちゃんと証明できれば、あなたの手柄になるんですよ?」
「…だから、です…」
「…よく意味が判りませんが…っと!?」

政宗が親信の肩に肘を置いた。
「おいおい?こいつの要求が飲めねえか?命の恩人になるんだぜ?」
「はあ…しかし…」
「ああ!!雑談してる場合じゃないよ!!早く飲ませてあげなきゃ!!!」
「うむ、早く戻ろう」

皆で走り、急いで船に戻る。


戻ったら、ひたすら果実を搾る。

ここは政宗に任せ、と幸村は病で伏せている三人の出血の手当てをした。

は持ってきた包帯やガーゼを使って、開いた傷口の衛生状態を少しでも良くしようとした。

、水を」
「はい。あ、幸村様、足の方の傷が少し…そっちの止血を先にお願いします」
「あ、すまぬ、気付かなかった…」
室内が暗いので、幸村はランプを見つけ、火をつけようとした。
「…火は…」
「幸村様、ライター持ってるでしょう」
「む?これ?」
幸村がにライターを差し出した。

「こうして…」

ボッと着火し、ランプに火をつけた。

「なるほど…すごいものを俺は頂いてしまったな…」
「そんなこと、ないですよ」

ランプの火が揺らめき、室内は静かになった。

「…元親殿は、どこに行ってしまったんだ」
「……」
船に戻って出航してから、元親の姿は見えなくなった。

「…大した人ですよ」
?」
「まだ軽いけど、この人たち、脱力感で鬱になってもおかしくないのに…アニキアニキって…」
「…」
「こんなにも、この人たちの支えになってる…元親さんは、立派な方だよ…」

「……」
元親は、その部屋の扉に気配を消して寄りかかっていた。

「…ちっ」
静かに扉を開けた。

「元親殿」
「…何か手伝わせろよ」
「じゃあ、お水持ってきてください」
「判ったよ」
元親はすぐに部屋を出ていった。

暗くてよく見えなかったが

元親が、頬を赤らめているように思えた。

「……」
幸村が口を真一文字に結んで、不快感を露にした。
「幸村様?」
「男装が意味を成さぬっ…!!」
「??」




すぐに政宗がジュースを持ってきてくれたので、上半身を起き上がらせて飲ませる。
さすがにどのくらい飲ませればいいのかまでは判らなかったため、ある程度飲ませてまた寝かせる。
樽いっぱいになるまで搾らせているというので、様子を見ながら量を考えることにした。

元親が水を持ってくると、あとは俺たちがやるからお前らは休めと言ってくれた。

寝室に行き、自分たちもジュースを飲んでみる。

「…すっぱい!!」
幸村が梅干を食べたような顔をした。
「そうですか?おいしいですよ?」
「すっぱいでござる〜!!砂糖はないでござるか〜!?」
「贅沢言うな、幸村。死ぬぞ」
「…うう」
「いや、うちらは大丈夫ですよ…たった5日間の船旅だし…」

ランプの光で部屋の中は明るい。

波に揺られる船の中、戦国時代ではないどこかに迷い込んでるような感覚になった。

「みんな、心配してるかな…」
「…こういうときは成実がしっかりしてるから、小十郎は大丈夫だ」
「ああ、お館様…某のことを考えてくださっているだろうか…」

顔を赤くする幸村のそれは、恋するヲトメのそれだった。

「…(かすがみたいだな)」
「小太郎の情報網は半端ねえ」
「え!」
政宗の言葉が一瞬理解しがたかった。
失礼ながら、あの寡黙の小太郎ちゃんが?

「それでも見つからない…それが国外にいるって事に結びつくかどうかだな…」
「小太郎ちゃんて、すごいんだ…」
「伝説とまで呼ばれた男だ。惚れる奴ァいくらでもいる。…ま、ちょいと調べただけだけどな。なかなか謎な部分が多すぎんぜ、あいつ」
「…小太郎ちゃんが政宗様に仕えたら、笑いが止まりませんな…」
「小太郎のご主人様が何をおっしゃる」
「友達!!」
「言ってろ」

政宗がごろんと横になった。

「ふぁーあ。さっさと陸に上がんねえかな…揺れるbedはもう結構だ」
「漁はなかなか面白いぞ!!明日は政宗殿もやらぬか!?」
「おいおい、昼間は離れてねえと海に落とされんぞ?」

部屋の扉は夜間ずっと監視されている。
昼間も、おかしなことができないように、仕事が別々だ。

「政宗様はお仕事に快感を覚えてらっしゃるのですよ、幸村様。ねえ、料理長」
「誰が料理長だ」
「お袋の味と大評判ですよね、母上」
「誰が母上だ、クソ小姓」

とても小姓とは思えない態度だ。

「もう大丈夫でござろう?のおかげで!!」

幸村がにこっと笑った。

「まあな…」
「明日の元親殿、きっと面白い!!」
「ええ?」

はよく意味が判らなかった。

幸村も寝転んだので、も寝転んだ。

ランプの火を消して、眠りについた。









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久武さんは気まぐれで出してしまいました…
すいません…また出るかは不明…

それにしても随分サバイバルな生活…