政宗は調理場で料理を教えていた。
は船内の掃除を頑張っていた。
幸村は漁の手伝いや甲板の掃除をしていた。

元親は三人に仕事をするように言った。
三人バラバラの仕事で忙しいため昼間はあまり会えない。
けれど、寝る部屋は一緒にしてくれた。

「おう、頑張ってんなあ!!どうだ?俺の船は」
「元親様」

は最初元親を怖がっていたが、船内をちょろちょろ動いて掃除するため顔を合わせることが多かった。

アニキと呼ばれ慕われ、爽やかな笑顔を見せてくれる元親にの苦手意識も薄れてきた。

ただ、元親の服にはどうも慣れない。

「(胸…なんでそう…出してるのさこの人…)広くて…掃除には大変です…」
「ははは!!そうだろう!?俺の部屋も頼むぜ!!」
元親がバンバンとの背を叩き、そのまま歩いて促した。

「元親様の部屋に?」
「おう!!…なーんか元親様ってェ、かゆくなんなあ…アニキでいいぜ?」
「え、アニキ?」
「おう、そうそう!!」
「あ、あにき…かあ」
船のテンションにもだんだんと慣れてきていた。

元親の部屋には南蛮のものが沢山置いてあった。
ふわふわの絨毯に、どこかの民族のお面、それに
「え、こ、これ、象牙!?」
大きな牙がごろんと。
うっかり声に出してしまった。

「お?お前よく知っているなあ…さすが政宗の小姓」
「見たのは、初めてです…」
一体どこへ行ってきたのだろう…
でも植民地とかで…ヨーロッパのほう行けばこういうのは手に入るのかな…?
でも、絨毯はタイとかインドっぽい…

興味はあるが詳しく聞けないのが悲しい。

「モトチカ!モトチカ!!」
「!!」
「おう!」
気がつくとドアからオウムが入ってきていた。

色鮮やかなオウム…

「わあ…綺麗」
「ピーちゃんだ」
「…ピーちゃん」
なんて可愛いネーミングだ…

ピーちゃんが元親の肩に止まった。

「アニキ、座って座って」
「はいはい」
「可愛い…」

ピーちゃんの頭を撫でる。
ピーちゃんは大人しく目をぱちぱちさせる。

元親は喜ぶを微笑みながらずっと見上げていた。
「…女みてえ」
「!…気にしてるんですけど」
「そうか、悪ィ悪ィ」

元親は座り込んで書類の整理を始めた。
は壁の掃除を始める。
ピーちゃんは大人しくして、首をきょろきょろ動かしていた。


キイ、と扉が開いた。
「…アニキ」
「ん?ああ…」
部下の一人がつらそうな顔をして入ってきた。
元親が立ち上がる。

「テキトーに掃除したら、次は隣も頼む」
「はい」
そう言って、出て行ってしまった。

ピーちゃんと視線を合わせる。

「何かあったのかな」
「ピイ…」
ピーちゃんまで、寂しそう。

「…」
こっそり、後をつけてみた。
ピーちゃんもの頭に乗り、ついてきた。




がまだ行ったことのない場を元親は進む。

いつも大股で歩く元親は、今は静かに歩いている。

廊下の突き当たりの部屋に入る。

わずかに扉を開け、中の様子を覗く。

三人ほど、布団に寝ている。
その横で、元親は優しく笑っていた。

「…すま、ね…アニキ…」
「何言ってんだ、もうすぐ四国に戻れる。それまでの辛抱だ」

…病気、だろうか?

「今はゆっくり休んでろ。四国着いたら何が食いたい?肉がいいか?」
「アニキ…俺、戦場で死にたかったなあ…アニキ守って、死にたかったなあ…」
「…大丈夫だって、言ってんだろう!!何情けない事言ってやがる!!それでも海賊か!?」

元親の声が震えていた。

げほげほと、寝ている男がむせる。

「…」

は、もしかして…、と呟いた。
大航海時代の、有名な話だ。

コンコン

「誰だ?」

扉を開けると、ピーちゃんが先に入った。

「掃除しに参りました!!」
「おまえ…!!」

堂々と中に入る。
寝ている人に近づく。

「何してんだ!!ここの掃除は頼んでねえ!!」
「埃を見つけりゃ俺はどこでも現れる!!」
「訳がわからねえ!!」
元親が立ち上がって、を部屋から追い出そうとするが、は負けずに中にズカズカ入った。

「はは、いいじゃねえっすか…アニキ…死ぬ前にそんな可愛い子見れて…幸せ…」
はあはあと息を荒げながら、男は喋る。
は放っておけなかった。

「馬鹿じゃねえの!?俺は男だ!!ああ、やっぱりな!!待ってろ!!助けてやるよ!!」
「な…」
「元親!!離せ!!」
の今にも噛み付きそうな剣幕に、元親は驚いて力を緩めた。
は弱ってる男の口の中を見る。
歯肉からの出血
歯も何本か脱落して
体の方には、過去の戦で出来たであろう古傷が少し開いている。

「…壊血病だろ」
「おい!!」
元親が乱暴にの肩を引っ張った。
そのまま部屋の外に連れ出す。

ドアがばたんと乱暴に閉まる。
元親はの肩を掴んだまま、壁に叩きつけた。

「ふざけた事言ってんじゃねえ!!てめえになにが判る!?一体今まで何人、あの病気で死んだと思ってる!?」
「元親…」
「どんだけ、どんだけ、俺が、治療法を探し回ってると思う!?なんで、なんでてめえごときが知ってるっていうんだ!?」
容赦なく元親の指がの肩に食い込む。
は顔を歪めた。

声が聞こえたのか、政宗が走ってきた。

「おい!何してんだ!!そいつを放せ!!」
「うるせェ…黙ってろ…独眼竜…!!」
元親の声はひどく低く、鳥肌が立った。

しかし、は黙らなかった。

「黙るのはてめえだ元親!!たくさん探し回ってもみつからねえなら、わずかなものでも試したらどうだよ!?」
!!元親!!」
政宗が元親の腕を払いのけ、を引き寄せた。

「独眼竜!!教育が足りねえぜ、そいつ…」
「元親!!地図を見せろ!!今どの辺に居るんだ!?どこでもいいから、島に停泊しろ!!」
!!」
暴れるを、政宗が羽交い絞めにする。
は必死に抵抗する。

元親が背を向けた。
「てめ…なにがアニキだ!?濁流に飲まれても、小枝にはしがみつけねえか!?お前のために死にたかったって、あいつらそう言ってた!!そのお前が、変なプライドかざしてひねくれてどうすんだ!?」
「黙れ!!」
「元親ぁ!!」
、やめろ!!」
「政宗!…様…」
政宗は何が起こったのか判らないだろう。
でも、自分を止めようとしている。
は少し寂しかった。

「落ち着け!立場を考えろ!!」
「政宗様!!嫌だ!!絶対嫌だ!!助ける!!あの人たち、助けるんだ!!元親!!馬鹿野郎っ…!!判るんだ俺は…!!信用しろ!!」
!!」
政宗がを怒鳴りつけながら

笑った。

「…That's right」
「…へ?」

元親を見ると
肩を震わせて、笑ってる。
「…え?」

「だぁはははは!!よく吠える小僧だな!!」
「な…何?」
元親が振り向く。

「いいだろう。お前のために、航路を変えてやる。その代わり…判ってるな?」
「…はい!!」

試されたのか…
は少し怒りを感じたが、すぐに収まった。

ビタミンCをいっぱい集めないと!!









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オウムはピーちゃんでいきます…!!
公式で名前発表されたら変更します。

壊血病は長期の高度のビタミンC欠乏じゃないと生じませんが…
元親がそんなに四国を離れるとは思いませんが…
まあ、たまたまってことで…(こら