ゆさゆさゆさと揺さぶられて、成実は目を覚ました。

「ん〜・・・勘弁してよう・・・昨日飲みすぎて・・・」
「〜!!〜!!」
「ん・・・?」
目を開けると、必死な顔をした小太郎が

「おかえり!!殿とちゃんは?京に行ったんだろ?忍に聞いたよ!!お土産・・・」
「〜〜〜〜〜〜!!」
「……緊急事態、なんだろうけど…う〜ん…判らないなあ…ごめん…喋ってくれないかなあ…」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「う〜ん…怪我したとか…?」
「成実様」
「あ、片倉殿」
必死になってる小太郎の姿を見た小十郎は、眉を顰めた。

「…政宗様と真田幸村が!?」
「うえ?」
「判った、早急に対応する…小太郎は武田の忍と連絡をとれ」
こくこく

「……」
「成実様、成実様も早く着替えて…」
「ごめん、その前に通訳してくれ」




長曾我部元親に案内され、船内の一室に座る。

「さあて、なにがどうなってんのか説明しろよ?独眼竜に真田幸村がお揃いなんてなあ…」

正直、現在自分たちがどういう状況にある場所にいるのか判らないので、どう誤魔化すのがいいのかわからない。

「…その前に、言っておく。判ってると思うが、俺たちは攻めてきたわけじゃねえ」
「おう、たった三人でここにくるたあ、よほどの事があったんだろう?悪いな、長期間四国から離れてたんでなあ…情勢については、おおまかにしかわからねえんだよ。北の方まで把握してねえ」
「!!」
長旅をしている最中に、ここへ来てしまったのか。

なら疑われてもしょうがない。

食料が知らずに減ってるなんてことも無く、今まで気配も無く、突然現れたのだから。

「カラクリの輸入か?相変わらずだな…」
「作るのは戻ってからよ!ちいと大事な部品を調達しにな…」
「お前自らいくなんて、よっぽどだな」
「まあな。…で?そんな話で誤魔化す気なのか?笑えるぜ?独眼竜」
元親がにやにや笑う。

「…俺と幸村は戦ってたんだ」
「ああ」
幸村は黙って政宗の言葉を聞いている。

「そうしたら、第三勢力に邪魔された」
「どこだってんだ?」
「…徳川だ。本多忠勝が現れて、俺と幸村と、たまたま近くにいたこいつが巻き添え食らって、攫われた。そんでここに落とされたんだ」
は小さくえ、と言ってしまった。
本多忠勝何者?

「んだと…!?本多忠勝がここに来たって言うのか!?」
「全く気付かなかったのか…。ここに落とせば逃げ場はねえし、自分が戦うことなく俺たちを殺してくれる。楽だろう?」
「元親殿と政宗殿が面識があると言うのは予想外だろう」
幸村さんが話を合わせる。

「……」
元親が考え込む。
政宗の言うとおり、今回の航海は"よっぽど"だ。
だから常に警戒は緩めなかった。
なのにこの三人は、実際にここに居る。

「信じるか信じないかは、お前の自由だ。…元親、この船はいつ頃四国に着くんだ?」
「あと5日ほど」
「…そうか。頼む、着いたら本土へ送ってくれ。その後は自分たちで何とかする。礼は必ずする。」
「…礼だ?俺の欲しいものをくれるってか?いらねえな…海賊は欲しいもんは奪ってこそだ」
「…」

なかなか交渉するのは大変そうだ。

「…元親殿、某からも頼む。」
幸村さんが頭を下げる。

は泣きたくなった。
自分のせいでこんな事になって、自分は二人を助けてあげられないなんて…

「…そこの小僧」
「!!」
元親がを指した。

「さっき、化け物とか言われてたな…化け物なのか?」
「お、俺、は…」
政宗は険しい顔をした。
が目をつけられるのは、避けたかった。

「銃弾食らっても、痛い、それだけだってな?」
「防具を、つけていました。そのおかげです。」
「防具?見せろ。出せ。」
「…」
は着物を上だけ脱いだ。

「…それが?」
サラシを巻いている男だって普通にいるだろう。
変に気にせず脱いで、元親に差し出した。

「見たことねえ。奥州のものか?」
元親が興味深そうに、防弾ベストを眺める。
「いいえ。政宗様が南蛮から取り寄せて下さいました。」
「…ローマで開発された試作品だ。一般には出回ってねえ。」
「ふうん。で、こんないいもんを小姓に着せてんのか?」
「試作品と言ったろう?んなもん武将に着せられっかよ。そいつは率先して、己の体で試すと言い出した。」
「独眼竜ほどの男がこの良し悪しを確かめなきゃ判らない、ってか?」
「念のため、だ。お前らのおかげで確かめられたな」
「ふうん…」

室内の異常な緊張感と軽い船酔いで、は気持ち悪くなってきた。

「…防具つけてるからって弾道に飛び込むたあ、大した奴だな。よっぽど可愛がられてんだなあ?」

元親が、クク、と笑う。

「元親ァ…」
政宗にはその意味が判る。
こいつは俺たちの望みを叶える代わりにを渡せと言い出す。

「お前、名前は?」
「……っ…」
「おい?」

幸村が前屈みになったを支えた。

「元親殿、しばし風に当たらせても構わないか?」
「酔ったか?いいだろう。逃げ場はねえしな…」

幸村が一度政宗に視線を向け、を抱え上げ、外に出た。

「細ェ奴。ちゃんと食わせてんのか?」
「少食なんだ」
が男に見えていることには少し安心した。
「…(男だらけの船内ってえのはあぶねえっての…)」





「う、うえ…ごめんなさ…う……」
「大丈夫だ。全て出してしまったほうがいい。」
幸村は桶に顔を突っ込んでいるの背をずっと撫で続けた。

「…あの空気は、きつかろう…。政宗殿にここは任せ、俺たちはここに居よう…」
「う、うんっ…」
「…泣かなくても、大丈夫。そんなに悪い奴ではない…」
の目からぽろぽろと涙が流れていた。

「四国…これから、どうするのですか…?船で本土に行けても、帰るには、どれほどの期間を要するかっ…!!」
「大丈夫。連絡手段はあるのだ。、そなただって、小太郎殿が今頃必死になって探している…大丈夫、なんとかなる。」
「小太郎ちゃん…うん、探してくれる…前なんて、ね、寝る間を惜しんで、ろくに食べずに…探してくれて…う、うう…ごめんなさい…う、えっ…」

の口からはもう胃液しか出なかった。

「小太郎殿ももう判っているだろう?のこの心配性を…大丈夫でござる。無茶などせぬ。は小太郎殿に笑顔を見せてあげればよい…」
「でも…でも…それに…慶次だって…私…」

幸村がを背後から優しく抱きしめた。

「船に、慣れるのが先でござる。はは、某も、少し気持ち悪い」
「…幸村様、も…?…えへへ…頑張ろう、ね」
がやっと笑った。

ちなみに背後にギャラリーが沢山いたが、本人たちは気付かなかった。

「…(男同士…)」
「(男同士だ…)」
「……(いいなあ、俺もアニキとあんなふうに…)」

甲板は異様な雰囲気に包まれていた。





そして室内は
「だからよお!!大人しく俺たちを本土に送りゃぁいいんだよ!!」
「んだとお!?そうですか、はいはいってェ、俺が聞くと思ってんのかぁ!?アア!?」
政宗は短気発動し、元親の胸倉を掴んでいた。
元親は元親で政宗を睨んでいる。

「大体、瀬戸内では元就と南蛮野郎がやりあってんだろうが!!」
「志摩のほうに出しゃぁいいだろうが!!」
「それがものを頼む態度か!?あん!?」

元親が政宗の手を払う。

「判ってんだろう?お前は」
「てめ…」
「俺に渡して満足させられるような宝は持ってねえんだろ?さっきの防具もいいが…あれだけじゃ割りにあわねえ。…あの小姓を置いていくってえなら、考えてやってもいい」

政宗が歯を食いしばる。
この男を知り尽くしているとは言えないが、長曾我部元親という男は人を物のように扱う人間ではないというのは知っている。
試されているというのは理解していた。
だが返す言葉も策も、悔しいほど浮かばなかった。

「おいおい、悩むのか?お前ほどの奴なら代わりなんていくらでもいるだろうが…どんだけイイんだよ、あれは?」
「…悩んでねえよ」
「お?」

「俺はあいつを絶対手放さない。もう決めてる。」

今まで見たことないような、鋭い眼光。
元親は笑った。
「ぎゃはははは!!おもしれえ!!面白いもん拾ったぜ!!」

政宗の顔を覗き込むようにしで、政宗の目をまっすぐ見つめた。

「奥州のガキ…覚えとけ。否定する事で守れる命もあるんだぜ?」
「…」
「お前は今、あの小姓が自分の弱点だと言っちまってる。素直なのも考え物だ。嫌いじゃねえがな。この船の上でお前がおかしな行動取ったら、俺は真っ先にあの小姓の首をはねてやるよ…」
「shut up!!…俺は、そんな守り方しねえ…」
「クク…そうだな、俺もだ」

また、睨みあう。

「…お前の言う事はどこまでが本当なのか正直悩む、が、小姓を見下した発言をしたことは詫びるぜ」
「ふん…なら言ってんじゃねえ」

船が揺れた。

部屋の窓から、爽やかな潮風が入ってきた。

二人の髪を揺らす。

「…こっちが出す条件、全部飲むってえなら、送ってやってもいい」

政宗が頷いた。








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元親はそんなに長旅はしないと思いますが
四国のカラクリはハンパ無いので
材料調達に国空けてました。…ってことで…
宝探しに世界ってのはまだ…ってことで…(都合いいな…
木騎改作成前…?

早速仲良く、は無理でした。すいません。
しかも吐かせてすいません

元親の言葉は政宗を試してます。
らしくない言葉言わせてますすいません