どさっと音を立てて三人が倒れ込んだ。

すぐさま起き上がって周囲を見渡し、警戒する。

「…」
「ここは…?」

たどり着いたのは、小さな部屋で

ゴウンゴウンと機械音。

「どこだ、ここは…」

少し、床が揺れている。

「…船の上だ…」

の言葉に二人が驚いた。

「船…!?」
「あ、いや、外でなきゃ判んないけど…多分」
「…海の上か…!?逃げ場がねえ…ただの漁師なら良いんだが…」
「それどころか…」

木で出来た壁の隙間から、が外を見る。

「…人、いっぱい居る…救いなのは日本人だって事かな…」

海外に飛ばされたとあっては大変な事になる。

政宗がの頭に顎を乗せ、同じく外を窺う。

「…重い」
「…普通に漁してるようだが」
「たたた体重かけるな!!」
が頭を引っ込めた。

「どうするかね…」
政宗は構わず外の様子を見る。
は政宗を睨んだ。

「信玄公のことは、考えてたろ?」
「もちろんでござる!!」
「うん!!」
「マグロが食いたいとか考えてなかったろ?」
「…考えてるとしたら、政宗殿しか…」
「政宗さん、まさか…」
「冗談だ。こっちの意見は関係ないって事か…」
「そっか…。まあ今は、これからどうするか考えないと…」
こくりと二人がうなづく。

「出航日が判らぬというのが問題だ…。先ほど出たばかり、というなら理由をつけて間違えて乗ってしまった、と言えるかも知れぬが…」
幸村が周りの機材を見ながら考え込む。

「貿易船だったら他の国へ密入国しようとしてるとか思われない!?本当に漁船!?甲板広いし…大きな船なんだと思うんだけど…」
「もっと厄介かもなぁ?」
政宗が幸村とに視線を向けて、にやりと笑った。

「…毛利ではなかろう?外は平穏だ。」
「厄介かもしれねえし、Luckyかもしれねえ」
「政宗さん?何か判ったなら教えて…!!」
「…ここは、長曾我部の船だ」

幸村もも目を丸くした。

「暖かいと思ったら、四国…」
「て、敵国!?政宗さん、幸村さん、長曾我部のお偉いさんと対立してたりしてる!?」
、その質問は無意味だ。対立してようがしていまいが、ここに勝手に居る時点で敵と判断されるだろ。」
「それはそうだけど…!!」
「…俺は長曾我部と面識はある」
「「!!」」

幸村は驚いただけだったが、は期待を露にした。

「…安心してんじゃねえ、。竜のお宝貰いに来たぜとか何とか言って、暴れまわって…」
「なにか取られたのか?」
「いや、小十郎と戦ってたら…気が変わったとか言い出して、ウチで酒飲んで帰った」
「「……」」

破天荒だ…

「俺となかなか気が合う野郎だが…かといって歓迎してくれるかどうかはわからねえな…っ!!」

がちゃ、とドアが開いた。

「ほら!!人が居る!!」
「…嘘だろ!?まさか侵入者がいるとは…!!」

刀を構えた人が二人、入ってきた。

「わっ…!!」
「下がれ、!!」
政宗が少々強引にを引き寄せ、背後に隠した。
互いに刀を構える。
「どうする!?」
幸村が躊躇いながら槍を構え、政宗に向かって叫んだ。
「どうするってなあ…」

政宗が一気に間合いを詰め

「ひ…」
「わりぃな!!」

刀の柄で、男の腹を殴る。

倒れる男を避け、もう一人には一度蹴りを

「いっ…!!」
よろける男の胸倉を掴み上げ、壁に押し付けた。
刃を男の首元に

「元親のとこに案内しな。抵抗したら喉を裂く。」
「ひぃ…!!」
低い声で、男に命令する。

「政宗殿!!そこは危険だ!」
「判ってる!!」
扉は開け放たれている。
外は異常事態をすでに察知し、慌てる男たちの声がする。
政宗は男を引っ張り、背後に回り、男を盾にした。

首元に刃を当てたままで。

「仲間の命は大切にしな!!」

そう言いながら一歩一歩、慎重に政宗が歩く。

幸村もゆっくり扉へ向けて歩き出す。
は幸村についていくが、足が少々震えていた。

「…、大丈夫、必ず守る」
「幸村さん…」
「だから、すまぬ、男になりきってくれ。あと俺たちのことは、幸村様、政宗様、だ」
「はい、かしこまりました。幸村様」
少し声を低くして、そう答えた。
は深呼吸した。
自分は男で
政宗さんの小姓。
そういう設定だ。

外は日差しが強く、とても明るい。
状況に余裕は無いのに、海が綺麗だと感じてしまった。

「…騒いだほうが元親殿は現れるかも知れぬ」

政宗さんも同じ事を考えていたようで
「聞け!!俺たちは敵じゃねえ!!長曾我部元親に会いに来た!!」

通る声で叫ぶが

「その状態で敵じゃねえってか!?ふざけんな!!」
「それに、会いに来ただ!?周囲にゃ小船一隻見あたらねえ!!何時から居たって言うんだ!?」
「アニキには会わせねえ!!」

政宗が眉根を寄せた。
「ち…まあいい…騒げ騒げ」

幸村とは扉付近にいて、甲板に立つ政宗との距離をまだ縮められていない。

だから、政宗の周囲がよく見えた。

刀を持った人、銃を持った人が扉を囲むよう大きく半円状に距離をとっている。

「っ…俺のことはいい!!こいつをアニキに近づけさせるな!!撃て!!」
「!!」

政宗に捕らえられていた男が叫んだ。

かすかに、ジジ…と音がした。

「政宗様!!」
いち早くがすでに着火している銃を見つけ、政宗に駆け寄った。

っ…」
「うぐ…!!」

ドンと言う音とともに、腹部に激痛が走る。

政宗を庇って弾丸を受ける。

周囲がすこしざわついた

「おい!!何もあんなガキ…」
「仕方ねえだろ!!あいつが飛び込んで…」

は一度前のめりになったあと

「いいいいいいってええええ〜!!!!何すんだよ!!」
勢いよく顔をあげ、涙目になりながら叫んだ。

「へ…」
男たちが驚愕する。

「あ、あいつ何か腹に仕込んで…!!」
「こんな距離からの弾丸を!?何を仕込んでるってんだ!?」
少し騒ぎが起こった後、

ドン
「ぎゃ!!」
今度は背中を

「いたたたた!!何!?誰!!」
くるりと振り向くと、目を丸くして銃を構える男を発見。

「…化け物」

そう呟いて

「化け物おおおおお!!!!アニキ!!アニキ!!化け物!!アニキー!!」

今度は叫んで逃げ出した。
一人がそうなると、周りも騒ぎ出した。
男たちが叫びながら散っていく。

「誰が化け物!?あのなあ!!弾丸の勢いが違うんだよ!!そのくらいの銃ならこのベストで防げんだー!!」
、…good job」
政宗がクク、と笑いながら、を褒めた。

「大丈夫か!?!!」
幸村が騒ぎに乗じて駆け寄ってきた。

「ええ、俺は平気ですが…」
「こんだけ騒げば、さすがに起きる・・・
「…おき…?」

まさか、長曾我部さんは


「なんだなんだあ?化け物?そりゃあ鬼より強いのか?ったく、うるせえなあ…」


大股で歩いて
大きく欠伸をして
背伸びをして
銀色の髪をかきあげて

全体的にピンクというか紫っぽい、可愛らしい色彩をして

「客か?」

腰に手を当てて、顔に笑みを浮かべて

「…やっとおでましか。元親」

「アアン?これはこれは、独眼竜じゃねえか。遠路はるばるご苦労さん。歓迎するぜ」

政宗が、捕まえていた男を放した。

は全身の力が抜けた。

こんなに簡単に、"歓迎するぜ"

「この男が、長曾我部元親…」

今まで寝ていた、お気楽男というのがの第一印象。









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やっと元親出せた…!!
ちょこっとだけだけど…!!
個人的に元親は海賊より貿易ってイメージなのは何故だろう…